第4回「2000文字以内でお題に挑戦企画!」 クロノヒョウ 様

 明日また会えたら

 

 

「また明日会えたら続きを教えてやろうか」

 

 老齢なのを伺わせる皺の入った顔でありながら、背筋は伸び、生気を漲らせた瞳をした大賢者は俺に告げる。

 

「魔法の使い方以前になんだよ。隠しステータスって」

 

「また明日会えたらだ。ヒントはマグマの上だ。ではな」

 

 大賢者をテレポート魔法で消え失せる。

 

「どうやって探せばいいだー!!マグマの上とか意味分からんぞ」

 

 しかしだ。大賢者に魔法を教わるチャンスを逃がすわけにはいかない。

 

「考えろ、俺!マグマの上はどこだ?そうだあそこか?」

 

 魔熊山まぐまやまという山がある。そこの山頂に違いない。俺は数百kmは離れた山に向かって走り出す。

 

 途中の魔物を瞬殺し山の魔熊もものともせずに深夜、日付が変わる頃には辿り着く。

 

 シーン、大賢者はいない。どうやら外れだ。だがまだ23時間45分ある。

 

「マグマの上なんて他にな・・・あるじゃん」

 

 火竜山には火竜の口顎と呼ばれる火口がある。あそこにはマグマがある。

 

「クソッタレ!隣の大陸じゃないか!!」

 

 魔法の真髄を求めて俺は走る。面倒くなり魔物は轢き飛ばして全く速度を緩めない。海は、足が沈む前に、出せば走れる。

 

「ゼェゼェ、続きを教えてくれ」

 

 残り3分で大賢者に会うことに成功する。

 

「お主、魔法いらなくないかのぉ。全部肉体で解決するやつが何故魔法なのじゃ?」

 

「大賢者になればモテるだろ?」

 

「ふむ、隠しステータスには魔法適性がある。適性、なければ魔法は覚えられん。また明日会えたら続きを教えてやろうか」

 

「待ってくれ、適性を知る方法は?」

 

「また明日会えたらだ。ヒントは仄暗い水の底の真っ暗な底じゃ。ではさらば」

 

「何だよそれ?仄暗い水の底??やっぱりあそこしかねぇ」

 

 冒頭の村の落ちると濡れるだけの底が暗い井戸に違いない。

 

 幸いここからは山を下ればすぐだ。俺は山を駆け下りて、村の井戸に、飛び込む。

 

 俺は濡れた。底は暗い。・・・「大賢者が居ないじゃないか!!いやこの下にもう一つ底があるのでは?うぉぉぉ!!」

 

 俺は井戸の底を掘り始める。そして日が昇るまで掘り続けた。軽く2000メートル掘り地底湖を見つけたが、大賢者は居なかった。

 

「お兄ちゃん、井戸を直してくれてありがとう」

 

 村の男の子にお礼を言われる。

 

「気にするな。俺の都合だ」

 

 占いによるとこいつが未来の勇者で俺は拳闘の師匠になり、勇者がモテるのを見てる運命らしい。そんな運命破壊してやるんだ。

 

 勇者よりモテるやつは大賢者の爺だ。爺がモテる理由なんて魔法しかないだろ!!俺は魔法を覚えるんだ!!


「仄暗い水の底の真っ暗な水の底?あーーー!!あっちかクソッタレ!!海の底のウミホタル生息地の下の水魔洞窟の最深部か!!」


 俺は、海の上を走り、大洋のど真ん中に息を吸い込み飛び込む。息が続く間に俺は水魔洞窟を攻略した。


「ゴボゴボ!!」


「お前違う意味で天才じゃな。普通は魔法かアイテムでどうにかするのだがな。ここでは話にならん。また明日会えたら教えてやろうか。ヒントは樹海じゃ」


樹海に行く前に俺に空気を!!早く海面に上がらなくては!!


海面に上がり島国の樹海を目指して海面を疾走する。そして辿り着くと大賢者がいた。


「モテるにはどうすればいい?」


あっ間違えた。魔法について聞くはずが不眠不休でボケてたようだ。


「モテる方法か?金じゃ全ては金!!現金これだけじゃな。試して魅せようか。ほれこれで一晩ワシとどうじゃ?ワシは、両刀じゃからな」


 目の前に一億積まれる。


「俺は男は無理だ」さらに一億追加される。「だから無理」さらに三億追加され五億積まれる。「一晩だけで五億じゃ即決せねば他をあたるぞ」「クッお願いします」


「ほぉほぉほぉ、持つべきは金融資産よな。世界中に分散投資とドルコスト平均法の威力じゃよ」


「五億、五億・・・これでもてるぞーさぁ、大賢者様好きにしてくれ」


 その後五億で遊びまくり、すっかり賢者モードになり勇者がモテて鼻を伸ばしてるのを子供だなと眺めることになるのだった。


 そして大賢者はまだまだ現役で勇者も勇者のハーレムも勇者パーティーをも金で誘惑することになるのだった。


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