[第一回]短編小説書き下ろしコンテスト_第一回 淡風様
【お題】
・主人公(または、メインキャラクター)が、「転落」や「落下」する。そのシーンは、作品の[冒頭や末尾以外]に入れること。
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タイトル 落ちました
一人の男そう、俺は波の高い海沿いの崖っぷちに立っている。ここにいる意味?そりゃ喋るためと自殺のためだ。
「自殺なんてやめて罪を償え、それが正しい贖罪だぞ」
中年で普通の男に俺は追い詰められている。もうこの手で仇は討ったがそんなことで警察に捕まるつもりは無かった。
完全犯罪なのになぜこいつに暴かれ、俺の自殺を止めようとしているらしい。もうこの世に未練は・・・こいつが俺の計画的な完全犯罪を見破れた理由だけだ。
「なんで警察官でもない、一般人のお前に俺の犯行がバレたんだ?」
「最初は甲冑武者伝説の仕業で、祟りかと思ったさ。でも甲冑から湿布の匂いがした。そこからおかしいと思ったんだ」
「あの時は合気道の練習で、痛めたから湿布貼ってが・・・クソッタレ!お前犬かよ!?」
「それで調べた。最初は
「そんな事は知ってる!!お前の嗅覚について答えろよ!おかしいと思うわないのか?」
「当たり前だろ?湿布の匂いは独特だ。そんなことよりも
「警察に俺も取り調べされたからな。知っている。だがアリバイがあるだろ?
「確かに検死の結果はそうだ。あの日の21時から24時俺達はバーにいた」
「なんで一般人がマスコミよりも警察内部情報に詳しいんだ?お前なんなんだよ?取り調べ受けてないだろ?」
「ただの温泉マニアだ」
「警察って捜査情報を漏洩したら違法だろ?」
「大丈夫だ。勝手に捜査資料をたまたま、そうたまたま読んだ、だけだからな」
「それはお前犯罪じゃないのか?」
「たまたま、だ。だから問題ない。それは良いとしてな。お前のアリバイは成立しない!!」
「良かねーよ!!お前こそ罪を償え!!」
「それは司法が決めることだ。それよりもお前のアリバイだが、当主の殺害時は
「とことん警察にお前ケンカ売ってんな。そんなに日本の警察は甘くないだろ?」
「少し刑事に意見を求められただけだ。動機がある者同士助け合ったのだろう?」
「そんなことあってたまるか!!」
「それよりも
「知らないな。だいたいドライアイスを使った証拠なんてないだろ」
「いいやあるんだ。まず俺が見付けたときしゃがむと少し息苦しかった。あれはドライアイが溶けて二酸化炭素が溜まってからだ。ドライアイスを用意出来るのは歌謡ショーの演出担当兼大道具係のお前だ」
「そんなアホな事があってたまるか!!人間二酸化炭素濃度計かよ!?」
「山奥の秘湯は危険なガスが出てることがある。安全か見抜くのは必須スキルだ」
「お前人間辞めてるだろ?」
「温泉マニアなら皆出来る」
「嘘をつくな!!」
「嘘じゃない。それに予定されてた歌謡ショーで使う演出用のドライアイスが少し多く発注されてたし、演出から考えても在庫が減りすぎだ」
「あれは念の為多く発注しただけだし、残しても、もったいないから多めに使っただけだ」
「警察はそれで騙せても、歌謡ショーを見た俺は騙せない24%も多く使ったとは思えない」
「それは、企業の内部資料だろ?なぜお前が知っている?」
「取引先のドライアイスメーカーに聞き込みに行ったからだ」
「企業が個別の取り引き情報を開示するとは思えないな」
「おかしいと思ったんだ、と素直に話してくれたぞ」
「そんな企業潰れちまえ!!」
「そう言うな。ちょっと重い饅頭を営業部長に渡しただけなんだ」
「賄賂かよ?袖の下とか犯罪だろ?」
「何を言ってる?一箱に500個入りの饅頭だ」
「貰うほうが迷惑だよ!やめてやれ!新手のイジメか?腐るよ」
「大丈夫だ。中身は個別に真空パックされてるから賞味期限は3ヶ月だ」
「微妙に賞味期限が短いよ!それでも一日ノルマ5.556個だぞ。飽きるから!!お前頭悪くね?」
「とにかくお前アリバイ工作は見破った」
「でも俺には動機がない」
「いいやある。
「・・・そんな証拠ないだろ?」
「お前の出身の孤児院も母親は知らなかったし、お前の血族も見つからなかった」
「ならどうやって?」
「105歳になる引退した先先先代の頃から働いてる家政婦が覚えたよ。お前は子供の頃から頭が良くて印象的だったそうだ。引き取られた孤児院も合ってた」
「105歳とか誰だよ?16年前だぞ!89歳で現役とかおかしいと思わないのか?」
「化粧でマイナス70歳は出来るそうだ。去年大型トレーラーに轢かれた事故で脱臼して、泣く泣く引退したそうだ」
「化け物かよ!!89歳見た目は19とかありえないからな!あとトレーラーに轢かれたなら死ねよ!!!なんだよ脱臼っておかしいだろ?」
「リハビリをして復帰を目指してたよ、来年には仕事出来そうだと喜んでた」
「そんな化け物がいたのか?人類どうなってる?」
「そうお前は、母親の仇討ちをしたのだろう?でもな間違ってる」
「そうだとして、なぜ間違ってる?」
「お前の母親について調べたよ。そして自殺の原因を知った・・・」
「もったいぶるな!!うぜぇだけだぞ!誰を意識してんだよ!!」
「ホストに入れ込んでてな。他の客にイジメられていたのが原因だ。そのイジメた客は当主によってソープに沈められてる。分かるか?どちらも望んでた不倫関係なんだよ。お前の復讐は相手を間違ってる」
「なんだよそれ。俺の苦労はいったいなんだったんだ」
「沈められたイジメの加害者はソープ嬢として、成り上がり今や巨万の富を築いてるぞ。殺るなら彼女だったな」
「そんなバカな事があってたまるか!!こうなればもう復讐は出来ない未練などない!死んでやる!!」
そこに刑事がやって来る。タイミングバッチリすぎるが、俺は飛び下りて死ぬ!
俺を止めるため温泉マニアが走ってくる。思わず俺は孤児院で習った合気道で後ろへ温泉マニアを投げた。
「あぁ~~〜〜〜〜」
温泉マニアは100メートルはあろうかという崖から落ちて尖った岩にぶつかり、海に消えた。
「待て早まるな!!」
そこに刑事、年配の先輩と明らかに新人の二人が走って来る。若いだけあり先行している新人も俺の意思に関係なく身体が反応して投げる。
「俺はまだ童貞なんだ〜〜〜〜〜」
合気道15段の俺の敵ではない。またしても尖った岩にぶつかり海に消えた。なんで俺は投げてるのだろう?
「殺人の現行犯で逮捕す〜〜〜る?エッ」
先輩は念入りに頭から岩にぶつかるように投げ落とした。頭を強打して、海に消えた。だって警察には捕まりたくない。
「俺はどうしたらいいんだ?」
俺は生き残ったが人生の目標を見失いじっと海を眺める20歳の冬だった。
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ここまで楽しでいただきありがとうございました。
こだわりや気にかけたことなどの末尾にということで少しあとがき的なものを書かせていただきます。
ドラマのワンシーンパロディですが、コント仕立てにすることがこだわりですね。
ミステリー要素よりもボケとツッコミを意識しました。ちょっと頭おかしい感じですがエイルの芸風です。
気にかけた事はオチです。なるべく読者の皆様の予想を裏切る方向へ考えた結果です。
他の作家様と被らないオリジナリティがありエイルが笑える作品にしたつもりです。
改めてありがとうございました。
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