日帰り宇宙戦争

「来ないなぁ?いつもなら5分前には来るはずなんだけどどうした?」

 

 地方の寂れた駅前でスマホゲームしながら待ってて遅いなと時計を確認してみると約束の時間を30分も過ぎてる。

 

「あいつから呼んだくせに、とりあえずレイン入れるか」

 

『どうした?約束に遅れてるぞ!!早く来い(-_-メ)』

 

 すると急に日影になる。今日は雲は少なかったはずだが?

 

「すまんな、約束してたつもりはないのだが迎えに来たぞ」

 

「は?えっ?」

 

 俺は宇宙そらから降りてきた宇宙人(女性)にUFOつまり未確認飛行物体へお姫様抱っこされ回収された。

 

『すまん!親父が救急車で搬送された!命に別条はない!でも今日はキャンセルさせてくれ』

 

 レインの返事が入ってドタキャンされた俺の予定は1日空いた。

 

『そうか、なら気にするな』

 

 返信したら圏外になった。どういうことだ?

 

「何がどうなってんの?」

 

「お前が合流の約束を我らとしてたのだろう?」

 

 下ろしてもらうとそこは映画やアニメで見たような軍艦の司令室だ。

 

「地球の友達と約束してただけで宇宙人とはしてないけど?」

 

「どういうことだ!!調べろ」

 

「はっ!艦長、今すぐに調査します!!暫しお待ち下さい!……分かりました!無関係なスマホの電波を間違って受信しております」

 

 どうやら俺をお姫様抱っこした女性は艦長らしい。

 

「なにそれ?」

 

「やらかしたなぁ、次に地球に寄れるのはいつだ?」

 

「作戦遂行を考えますとこれ以上遅れられません。戦闘終了後地球到着予想は26時間29分11秒後になります」

 

「何それ!?俺は今晩までに帰らないとたぶん親が無駄に過保護だから、警察に通報するぞ」

 

「そうか、しかし任務の放棄は出来ない。しかしながら我々は地球とのトラブルは望んでいない。ここは一つ君も作戦に協力してくれ!早く撃破すれば早く送ることが出来る」

 

「撃破って?作戦?任務?とにかくなんなの?」

 

「我らは天の川銀河国軍なのだ、天の川公国に宣戦布告され逆侵攻している。この船は高速戦艦だ。任務は天の川公国の別動機動艦隊の撃破だ」

 

「手伝うって何すればいいんだよ?戦争なんてしたことないぞ」

 

「大丈夫だ。まだ戦闘開始まで時間はある。戦闘開始までにシュミレーターで練習してくれ。なに簡単だすぐできるさ。来てくれ」

 

 案内されたのは画面と見慣れたコントローラーが置いてある場所だ。まるでネットカフェの個室みたいだ。椅子は長時間座れそうな良いやつで、キーボードこそないがサイドテーブルも完備だ。

 

「遠隔操作で戦闘機を操作して戦って貰う。これは操作端末だが今はシュミレーションモードだ。良い成績を出してくれ期待してるぞ」

 

「操作方法は?」

 

「チュートリアルも完備だ。安心してくれ」

 

 コントローラーを握ると唐突に始まるスペースコンバットシューティングゲームに、思わずプロゲーマーの血が騒ぐ。

 

 ボタンは加速と減速、そしてレーザー攻撃とレールガン、後は移動方向とターゲットをそれぞれの左右のスティックで行う。

 

「操作は単純だが少しターゲットスティック操作と攻撃の同時が難しいくらいか。ボタン割り当てを変えてL1、2を加減速、R1、2はレーザーとレールガンの設定にすれば操作しやすいな」

 

 チュートリアルの操作設定を終わらせると、ゲームが始まる。

 

「我らが巻き込んだし、これはサービスかな」

 

 メロンソーダ、オレンジジュース、アイスクリームを二つを持った艦長がやってくると、ウインクしてくれる。

 

「えっ!?艦長さん!?」

 

「だってさ、キリッとしてるのしんどいさ、から抜け出して来ちゃった♪テヘペロ」

 

 うぉー!!マイナーゲーとはいえFPS世界ランク2位の俺!!良いとこ魅せろよ!!1位はドタキャンした友達だけどな。

 

 

 画面で俺の操作する機体が出撃する。急加速し、先に出撃していた機体を追い抜くと、敵性エネミーを見つける。

 

 相手も小型の戦闘機らしい。

 

 こちらの軌道を読まれないようにランダムに回避行動し弾幕をすり抜けながら、レーザーとレールガンを併用して撃破する。

 

 先行した俺の機体は8割ほど撃破してすれ違いそのまま奥の空母を狙う。

 

 これだけやれば後続の味方は楽ができるだろう。

 

「キャー♡カッコいい♡あーん」

 

 ウォォ!!このアイス味分からんがモテてる!!

 

「ありがとう」

 

 俺の機体はトップスピードのまま敵の駆逐艦隊へ突き進むと艦橋、武器庫、エンジンに向かって全力攻撃を仕掛ける。

 

「えぇー♡駆逐艦隊6隻が壊滅ってすぎょい♡」

 

「まだだ!!」

 

 俺は全ての駆逐艦を行動不能もしくは撃沈すると反転し味方の援護に向う。

 

 数の差で残りの戦闘機は半数以下になっている。俺は次々に敵戦闘機を撃墜していく。

 

「ぽーー♡ス・テ・キ♡ダーリン♡あーん」

 

 アイスうま!艦長の口の中のアイスが白くて、顔が赤くてなんかエロい!!次に行くぞ!!

 

「ふぅ~、これくらいは簡単だな。次はどれやればいい?」

 

 メニューは宇宙語だから読めない。

 

「ダーリンこれやって!私はクリア出来ないやちゅなの。出来る?」

 

 漢の見せ所キターーー!!その上目遣いに答えなくてなにが漢か!!

 

「これか?よし試してみようか」

 

 メロンソーダに二本のストローが刺さっている。片方は俺、もう一本は艦長が飲む。炭酸さえ感じないが人生で一番美味いメロンソーダだ。

 

「ダーリン♡ファイト♡」

 

 再び発艦するとバレルロールで味方機を抜かしてトップスピードでまた突き進む。さっきは味方の方が多く艦艇も大きかったが今回は圧倒的不利だ。

 

「こりゃ補給も無理だし、弾も足りないか。だがやりようはある!」

 

「諦めない闘志凄いかっけー♡!!♡どうぞ♡」

 

 オレンジジュースに二本のストローでハートが作られたカップルストローが刺さっている。もちろん艦長と飲む。

 

 オレンジとメロンソーダの違いを感知できないけど、人生最高を超えてきたぞ!!

 

「今の俺は無敵だ!全て撃墜してくれる!」

 

「キャ~!!ダーリンやっちゃて♡あーん」

 

 ストロベリーソースがかかったアイスが口の中でとろける。これはプロの意地見せてくれる!!

 

 敵の戦闘機の大軍から放たれる攻撃を紙一重で避けつつ、あえて大軍の中に突っ込む。

 

「これは最高だぞ!!どっちを向いても敵ばかり!!狙う必要もないぞ!!撃てば敵に当たる!」

 

「ダーリン♡早く♡早く♡」

 

 そうは言うがレーザーは速いが貫通力はない。レールガンは貫通力は高いが弾数がレーザーよりも、少ない。

 

 そこであえて大軍の中で避けまくることで同士討ちをさせる。ロックオンだけすることで回避運動をさせ隊列を崩し大軍の特に密度の高い部分を飛び回る。

 

 もちろん最低限の無視させないために攻撃をする。

 

 戦闘機の大軍を引っ掻き回していると敵の母艦を見つける。

 

「ついて来い!さかりのついた猫のように暴れる戦闘機、そんなものは放っておいて敵の母艦を直撃すればか勝ちだ!!」

 

 敵の戦艦に向かって単騎で突撃する。敵なら引き連れてるけどな。

 

「当たらなければ問題ない!!」

 

 敵戦艦の砲撃をスレスレで躱すと後方の大軍に甚大な被害が出る。

 

「ダーリン♡しゅごすぎ」

 

 艦長の食べてたストロベリーソースの赤と、アイスの白が絶妙に混じり口元に垂れてる。まるで初めての事後みたいだ。

 

 うおぉぉ!!今の俺は世界大会よりも調子がいい!!ゾーン入ってる!!今ならやれる!!

 

「消えて、なくなれ!!」

 

 戦艦の主砲の砲口にレールガンを撃ち込む。一拍おいて戦艦は大爆発する。

 

「次!俺は底なしに強いぞ!!」

 

「ダーリン♡もっと♡やって♡どうぞ」

 

 いちごオレに透明なカップルストローが刺さっている。二人で飲むとピンクのハートが現れた。脳にエネルギーが満ち溢れる!!!美味いぞー!!!

 

 そして敵艦を壊滅させた頃、艦橋から通信が入る。

 

『艦長、もうすぐ作戦宙域です。お戻り下さい』

 

「了解だ。彼の腕は問題ない渡しが保証する。もし何かあれば私が責任を取るから一機彼に手配しろ」

 

『了解しました。即手配します』

 

「ダーリン♡仕事してくね♡敵を殺すところ今度はブリッジから見てるよ」

 

 変わり身の早さに驚くも女の子に期待されて応えないなどありえない。

 

「分かった出来るだけのことをしよう」

 

「うん♡ありがとう」

 

 

 そして俺は一人画面に向き合う。さぁ本番ださっきよりもキツイかもしれないが少しでも勝てるように努力しよう。

 

 暫くして発艦待機となり、発艦すると最後尾らしい。俺は前方の味方の隙間をトップスピードで抜けて出て敵艦を目指す。

 

 敵艦は戦艦1隻、空母1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦10隻の15隻からなる艦隊だ。

 

「先ずは空母を撃沈するのか」

 

 敵艦隊は戦闘機を発進させていない。今がチャンスだ。俺の機体はトップスピードを、維持したまま対空砲を寄せ付けないで航空母艦に接近すると艦橋、動力炉、発艦口にレールガンを撃ち込む。これで少なくとも戦闘能力は半分は失ったはずだ。

 

「次は戦艦!!行けるところまでやってやる。見ててくれよ艦長」

 

 戦艦からは攻撃すると空母に当たる位置取りをしながら戦艦の主砲砲口にレールガンをぶち込む。

 

 戦艦は主砲用のエネルギーパックが爆発して撃沈こそ出来ないが大破に成功する。

 

「これ以上は戦闘機が邪魔だ少し減らすか」

 

 その頃、艦長は満足そうに戦況を眺めつつ命令を下す。

 

「このままでは手柄が残らんぞ?全速前進!!残りの艦艇を主砲圏内に捉え次第攻撃しろ!!敵はあれだけ混乱しているのだぞ。外せば素人部外者の彼に笑われるぞ」

 

「イエッサー!」

 

 その後突撃してきた残りの戦闘機と戦艦の砲撃により瞬く間に敵は撃沈された。

 

 そして夕方には地球に降り立った。それは艦長との別れも意味する。

 

「ありがとう。またいつか会おう」

 

「いや、俺の方こそ楽しかったですよ。お元気でいて下さい」

 

「こう見えて私は優秀なんだぞ。そう簡単には死なん」

 

 こうして艦長は宇宙に帰って行った。艦長は二人っきりの時だけデレるのだ。

 

 数ヶ月して今度は友人と二人で艦長に誘拐されて、俺は撃墜王として、艦長は出世して提督となり宇宙に最強夫婦として名を轟かせる事になるがそれはまた別のお話し。


 誘拐された世界ランク1位の友人は、昼も夜も撃墜神として、畏怖の対象となったのはもっと別のお話しだ。

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