1話完結お題企画に参加!!

捨て勇者拾いました

「すっ…捨て勇者、だと!?」

 

 薄暗い森の中で魔王はおののいた。

 

 金髪の子どもが籠に入れられて捨てられている。そのステータスには、『勇者』と明記されていた。

 

「勇者なら親は殺せないだろう。親殺しとか読者に総スカン間違いない。よし子育てするしかないな」

 

 そして魔王は魔王城にワープし勇者を連れ去った。そして四天王を呼び出す。

 

「勇者を見つけた。勇者に親殺しをさせるのは読者が許さないからここで育てるぞ」

 

 四天王の1体ドラゴンが口を開く。

 

「そりゃ親殺しする勇者とか最低で読まないですけども、それより人間って何食べるので?」

 

「知らんぞ」

 

 魔王に子育てなど期待してはいけない。

 

「最近はテンプレ外した作品も多いので危険では?確か人間は草育てて食べてません?」

 

 蛙の幹部が危険性を指摘する。

 

「勇者なら王道で優しく、正義感が強いだろ?大丈夫だ。草か確かに土をイジって育ててるな。オマエどう思う?」

 

 指名された牛の四天王が答える。

 

「勇者って神に洗脳されてる気がするべ、噛ませ犬の可能性もあるべ。あと牛だけど我肉食だべ」

 

「使えんな。あてにならんが、何か知らんか?」

 

 魔王は最後の四天王リビングアーマーに質問する。

 

「勇者ってあれだろ?不死身で理不尽の体現した奴なんだ卑怯だよな。早く死なねーかな?あぁと、人間は雑食だ。毒さえ無ければ肉も魚も草も食う。とりあえず加熱して柔らかくすればいいんだよ」

 

「ん?人間に詳しいな?本当にリビングアーマーか?」

 

 魔王がリビングアーマーに疑いをかける。

 

「フハハハ、バレては仕方ない!!我は人間に滅ぼされた国の王子だ!!復讐のために魔王に協力している!!勇者など殺すべきだ。なーに安楽死できる無味無臭の毒は任せろ即殺してやる!!」

 

「おまえに勇者は任せれん。ちょっと人間村を壊さずに制圧してこいや」

 

 魔王は案外優しいらしい。

 

「素晴らしき命令だな!!いいだろう村にはノーダメージで人間だけ消し去ってくれるわ、ハーハハハ!!」

 

 リビングアーマー改め亡国王子は任務のために去って行った。

 

「これで勇者の生活物資は手に入るな、さてと他に何すればいいんだ?」

 

「愛情もって育てたら良い子になるべ」

 

 牛の四天王は四児の親だ。

 

「魔王様の素晴らしさを教育しましょう」

 

 蛙の四天王は洗脳する気だ。

 

「亡国王子に殺されないよう訓練と毒の見分け方を教えておきましょう」

 

 ドラゴンの魔王は戦闘好きだ。

 

 こうして勇者はすくすくと育ち魔王と四天王を家族と見なすようになった。

 

 そして勇者が成人する頃に人間と戦争になった。

 

「父上や四天王、何より罪のない魔物に仇なす人間など、この勇者にお任せ下さい!!必ずや王を討って戦争に勝利をもたらしてみせます!!」

 

 勇者はなにか、ヤバい方向に成長していた。そう味方は魔王、敵は人間と価値観だけが逆転していたのだ。

 

「頼もしいが親としては心配なのだ独りで旅など行かせられん。我とて魔王だ。簡単に負けはせん」

 

 魔王はすっかり親バカとなっていた。

 

「そんな無理しなくても人間らしく生きなさい」

 

 蛙の四天王は教育失敗して、過激になりすぎた後悔している。この勇者違う方向で読者に嫌われると。

 

「強いのは認めるが勇者スキルは対人に向いていない。無駄死するぞ」

 

 ドラゴンの四天王は冷静に戦力分析する。

 

「人間は悪辣にして極悪非道、滅ぼすべきだ。勇者と我で絶滅させてご覧に入れよう」

 

 亡国王子が一番過激なのは何時もの事だ。

 

「お前は黙って先鋒を務めてこい」

 

「フハハハ、命令しかと受けた。敵兵の首を並べ人間どもを恐怖に陥れてくれようぞ!!」

 

 亡国王子は戦場で暴れまわるため最前線に向かった。なぜあんな王子がいて国が滅んだのか謎である。

 

「父上、分かりました。旅も最前線も諦めます」

 

 勇者は大人しくしてくれるらしい。

 

「良かった。さすがは我が息子だ。この魔王城で戦勝報告を共に待とう。そうだ背中を流してくれんか?」

 

「いくらでもお背中を流します!ですがその前に一つだけ殺らせて下さい」

 

「何をしたいのだ?」

 

「言うより見たほうが早いです。それではベランダに向かいましょう」

 

 魔王と残りの四天王は勇者と共に魔王城のベランダに向かう。

 

「それではいきます!!」

 

 勇者はそう言うと集中し始める。

 

「「「「ゴクリ」」」」

 

 魔王と3体の四天王は固唾を飲んで見守る。

 

「来い!!ゴッドハイパワーウルトラスパーエクスカリバー3X!!」

 

「「「「なにそれ!!」」」」

 

 魔王と3体の四天王はハモる。初めて見たのだから当然である。

 

 虹色の神々しい光を放つ剣が勇者により召喚される。

 

「人間どもこれでもくらぇ!!!無限臨界光衝撃砲剣」

 

「「「「あっ、人間オワタ」」」」

 

 勇者の一撃により人間の国は光に飲み込まれ焦土とかした。

 

「召還!!ふぅこれで安心して父上のお背中を流せますよ」

 

 意味不明な剣は消えて、勇者は笑顔だ。

 

「あぁ。そ、それは嬉しいが今のはなんだ?」

 

 魔王マジのビビリである。

 

「あれですか?普通に勇者スキルの聖剣召喚と遠距離攻撃スキルの光剣ですよ?」

 

「これアカンやつだ。なんで勇者が人間虐殺するかな?読者なんだと思ってる?」

 

「父上、普通に勇者って魔物をジェノサイドしますよね?ターゲットが変わっただけですって(*^_^*)だから大丈夫です」

 

「そうか、一番怖いのは人間なのだな」

 

 このあと魔王と勇者は仲良く親子で風呂に入り、その間に亡国王子は独りで敵兵をジェノサイドして魔王城の平和は約束されましたとさ。

 

 風呂上がりに受けた最前線からの報告に魔王と3体の四天王がドン引きしたのは言うまでもない。そして勇者はニコニコしていた。

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