田原総一郎が転生したらカイ・シデンだった件 刻を超えたジャーナリスト アルテイシアへの手紙

@lotus_bustard_jobless

第1話 戦場のカルマ 戦友の行方

 戦友であるミス・セイラ・マス、歴史に翻弄されたプリンセス・アルテイシア・ソム・ダイクンへ


 セイラさん、お久しぶりです。つい柄にもなく、勿体ぶった書き出しになってしまいましたね。私もジャーナリスト生活が長くなりましたので、17歳の時のように、勢いだけで人にものを言わなくなってきたのかも知れません。

 私が今、こうして貴女に筆をとっている理由はお分かりでしょう。あの時、地球のニューヨークにいらした貴女にも、地球を包むアクシズの光はご覧になられたでしょう。

 月にいた私からも、あの時の光は見る事ができました。実は事前に従軍記者としてのオファーを連邦からもネオジオンからも受けていたのですが、私はどちらも断りました。戦争企業として私が散々批判してきたアナハイムのお膝元でジャーナリストとして活動するなんて、貴女は私の事を「軟弱者」とお叱りになるかも知れません。しかし結果的にはあれでよかったのかも知れません。

 後で、民間人や官僚が搭乗する船団が、ジオンのニュータイプ兵器の攻撃により一瞬にして全滅したと聞きました。あの時従軍記者としてあの艦に搭乗してれば、間違いなく私も今頃は、宇宙を漂う微粒子となっていたでしょう。アデナウアー・パラヤという連邦の官僚とはパイプがあったのですが、あの時の攻撃で命を落としたそうです。この一件にも私や貴女が散々目にしてきた戦場のカルマともいうべき悲劇がありそうですが、これは記事にはできないでしょう。いずれ貴女に直接あってお話をさせて頂きたいと考えております。

 貴女はあの光に包まれた地球で何をお感じになられてでしょうか。あの時人類は初めて、希望の光を、技術と人の心の中に見出したのかも知れません。

 しかし私には一つだけ気がかりな事があります。それは、貴女の兄上であるシャア・アズナブル、キャスバル・レム・ダイクン ネオジオン総裁と私達にとってかけがえの無い友である、アムロ・レイの行方です。

 ジャーナリストとしての伝手を最大限に使い、ありとあらゆる機関に連絡をとり調べたのですが、この二人に行方だけは未だに掴むことが出来ません。そしてこれは、宇宙物理学と精神物理学が発達した今日であっても説明がつかない事であるという事は、セイラさんもよくご存知でいらっしゃると思います。

 そうであるとすれば、この謎をとく手がかりは一体どのような知見であると言えるでしょうか。

 私はそこに、精神物理学において漸く、僅かながらに輪郭を掴みつつある、「時間の流動性」という概念に思いが至った、いえ、ある必然によりそこに辿り着かざるを得なかったのです。そしてその必然を貴女に理解して頂く事、そして私の持つ情報網と貴女の持つ資金力、地球でのコネクションを用いれば、貴女の兄上、そして私たちの親友であるアムロの行方を掴む一つの鍵が手に入るのではないか。そう思って筆をとった次第です。

 前置きが長くなりましたが、ここではっきりと重要な事を申し上げます。私は、サイド7出身のプエルトリコ系の子孫であるカイ・シデンであると同時に、旧世紀、第二次世界大戦の当事国、日本からタイムスリップをし、意識だけがカイ・シデンと同化した、いわば二重の記憶と経験を持った人物なのです。

 私が旧世紀から転生のようにカイ・シデンの人格と合わさる前の人格、その旧世紀の人格を持った人間の名前を「田原総一郎」と言います。ネットワーク検索をすればすぐに私の名前は、プライバシーコードに検閲をされる事なく見つかるでしょう。私は、20世紀中盤から21世紀初頭にかけて、日本における最も重要な力を持つジャーナリストでした。

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