旅行2日目 僕の彼女は乗せ上手

 今回の旅行ではコロナ対策として極力人混みを避けるようにしている。ただ、そうは言っても折角の旅行なのだから少しぐらい観光したいと思うのも当然の事だろう。それならば、どうするか?

 できる所からリスクを減らしていく他ない。そうなった際に真っ先に白羽の矢が立てられるのが『移動手段』である。


 旅行日数が1日2日程度であれば、多少移動が多くなってもいちいち気にしたりはしないだろう。或いはその逆でそこそこの日数であっても一定の場所に滞在し続けるのなら、それはそれでリスク回避になる。

 しかし、今回の旅行では九州各地を巡る予定なのだ。公共交通機関を利用するとなるとそれだけで感染リスクは高まってしまう。



「レンタカーって良いよね。 人の目を気にしないでのんびりくつろげる。」

「だからって手を私の太ももに乗せないっ!」


 そこで、今回の旅行の移動手段は主にレンタカーなのである。

 これまでのデートの多くは電車・バスでの移動だったのだけれど、レンタカーであれば乗り継ぎ時間を気にする必要がないし、荷物の持ち運びも容易。なにより、他人の目を気にする必要がないのは実に良い事だと思う。


 ちなみに、車を運転しているのは僕……ではなく、みーこだ。

 いや、僕も運転免許自体は持っているんだけどね。如何せんペーパードライバーであるので、運転にはあまり自信がないのだ。


 その点、普段から吹雪の中を運転しているみーこは流石と言っていいだろう。安定した運転のおかげで車酔いしやすい僕が旅行中一度も酔うことは無かった。そうして、元気な僕の手は彼女に伸びた訳である。


 ただ、さすがに運転中でもあるので軽めのスキンシップ以上の行為は行わない。これでも社会人なのでTPOは弁えているのだ。



「だから、なんでまた触ってくるの???」

「今は停車中だから問題ないでしょ?」

「問題あるよっ!?」


 あれっ?TPOってタッチプリーズオッパイの略じゃなかったっけ?


◇◇◇


 15時から移動を開始した僕と彼女はその後、有料高速道路を使うことなくのんびりと熊本へ向かっていく。

 3時間近く掛かる事になるが、急ぐ旅でもないのでドライビングを楽しんでいる形だ。


 3時間ともなるとドライビングと言えど流石に飽きてしまうのではないか?と思うかもしれないが、見知らぬ土地でのドライビングは新たな発見で溢れている。

 例えば山道を通った際には『野生動物出没注意』の標識が掲げられており、それがまた都会育ちな僕にとっては新鮮で、ついつい「どこかに野生動物いないかな?」と探してしまった程である。

 ちなみに、前回の北海道旅行では車道脇に平然と佇む狐を見かけた。車に慣れ過ぎだと思う。



 昨日は旅行初日と言うことで移動(と性行為)ばかりに時間が取られてしまい、落ち着いて話せていなかったので車内ではとても会話が弾んでいた。

 中でも記憶に残っているのが、昨日の性行為関連のお話である。


「それにしても、昨日のみーこちゃんのイキっぷりは凄かったね。 一度で55回だよ? そんなにイッていたとは思わなかったね!」

「数えなくていいからっ! みーこちゃん、ゆうさんと付き合うようになってからイキ易くなった気がする……。」

「僕と付き合う前はこんなにイッてなかったの?」


 要するに、元カレではこんなにイッていなかったのか?と言う質問である。


 恋人の過去の恋愛話と言うのは『聞きたい人』と『聞きたくない人』でハッキリ別れると思うが、僕はどちらかと言うと『聞きたい人』に該当する。

 若い頃なら元カレへの嫉妬で聞きたいと思わなかったかもしれないが、30歳を過ぎてしまうと『元カレなんて居て当たり前』と思えるようになるので『今一番好かれているのが自分であればいい』ぐらいにはおおらかな気の持ちようになるのだ。

 それよりも彼女の事を知りたい。これが歳を重ねる事で生まれた落ち着きと余裕だろう。




 ……と、このように書けば美談に聞こえるかもしれないが実際のところは単純に僕の性癖である。

 別に寝取られが好きなわけではないが、『彼女がどんな性経験をしてきたのか』を聞くと言うことは『一般女性のリアルな性経験談』と言うことであり、よくある週刊誌に掲載されている性関連の記事よりも余程現実的で艶かしく感じるのだ。


 そして、聞いた内容を次回の性行為に反映させるのである。所謂、『先人の知恵を借りる』わけであるが、これ程下世話な知恵の借り方も早々ないだろう。



「前からイキ易くはあったけど、ここまでではなかったから……ゆうさんとは相性が良いんだと思う。」

「え、もしかして誘ってる?」

「違いますけどっ!?」


 車に乗せながら僕の気持ちまで乗せてくれるなんて、みーこは男の運転も上手だなぁ。



 その後、彼女は「みーこちゃんが大量販売されたらいいのにね。 そしたら、経験人数少ない男性の自信と経験値が増えると思う。」なんて言っていたが、僕はむしろ逆だと思った。

 仮に彼女が大量販売されてしまった日には、自分のことを『セックス上手なイケ男』と勘違いした地雷男までセット販売されてしまう事になるだろう。

 その経験が通用するのはみーこだけだ。世の女性からはクレーム待ったなしである。


 ただ、それはそれとして彼女が大量販売されたなら僕も購入してみたいとは思う。1日で50回イかせることは出来たのだ、今度は50人同時にイかせてみたい。全みーこにイヤホンを付ければいけるんじゃないかな?



 不安があるとするならば彼女のチョロさが遺伝するのならば、何時か産まれるであろう僕の娘ももれなくチョロくなってしまわないかが心配な点だろう。

 箱に入れて大事に育てたい所ではあるのだが、みーこ自身は『これもまた良い社会経験』などと考えていて程々の遊びなら肯定的である為、いつの間にか入れた箱がコンドームの箱にすり替わっていそうなのである。そんな考え、パパは許しませんよ!

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