第44話今川邸の異変




今川邸へ、四国進攻の結末を報告する為にやってきた。


松平元康の話を、うなずきながら聞いている。

時たま質問して、かえってきた返答も嬉しそうに聞いている。


「松平元康よ、美濃の一部を領地として与える」


「はは、ありがたきことにお礼の言葉もありませぬ」


紙に書かれた約定が手渡されて、うやうやしく受取っている。


なんだ、俺もあんなことをするのか・・・


そんな1人1人を対面して、話を聞いているのですっかり時間が経っていた。

話終えた者は、そそくさと帰っていた。


松平元康も、俺の横を通りながらお辞儀をして出て行った。


最後には、俺だけが残された。



「して、松永久秀は、大人しくなったのだな」


「今回の戦で、悟ったと申してます」


「仕度が出来ているか?」


脇に居る小姓が急ぎ近づく。


「出来ています」


「もう遅くなった。京料理でも食べてゆっくり話し合おう」


すっかり暗くなり、まだ開放されないのか・・・


俺は酒は好きでないのに、すすめられて飲んでしまい。

すっかり酔ってしまった。

この清酒も、紀伊特産の酒で紀伊でしか作られていない。


「イサムよ、酔ったか?そちは酒には弱いな・・・」


御膳おぜんに有った白湯を、ゴクゴクと飲み干した。

程よい温度の白湯で、少しの酔いが覚めた気がした。


あれ・・・なんだ・・・俺の表示に無数の赤い点が見えた。


【クエスト発生 生き残れ】


この数を相手にするのか・・・まだ酔っている状態で・・・どうする。


「殿、敵が侵入しました。すぐにお逃げ下さい」


小姓が立ち上がり。


「誰かいないか、誰かーー」


異変だと悟った今川義元は、刀を取り抜き放った。


「誰も来ぬのか・・・どうしてだ」


俺は自分自身に、回復魔法を掛けていた。

じわりじわりとアルコールが抜けてゆく。


しかし、敵はそれを待っててくれない。

ふすまが蹴り倒されて、顔を隠した侍が切りつけて来た。

それも3人も居る。

紙一重でかわして、脇差をキラリと引き抜きながら首筋を切っていた。

そのまま畳に倒れこみ、切り口から血が吹き出して畳一面を赤く染めている。


俺はそのままクルリと回転して、再度振りかぶった相手の腹を2人とも切っていた。

2人は、唖然としたままおのれの腹を見た。

1人は、そのまま倒れ、もう1人は畳の上で苦しんでいる。

顔は、はちゃめちゃで泣いている。


「ああ、ダメだ。脇差だと短い」


思うように斬れない。




今日に限って、武器になりそうな物は、亜空間収納の中には無い。

亜空間収納の収納内容を整理する為に、主な物は置いてきた。

入っているのは、食料だけだ。


ここしばらく自分自身で戦ってないおごりだと反省。



「殿、その刀を貸して下さい」


「ああ、分かった」


刀を受取ると、初期に作った刀だった。

これなら大丈夫だ。


目立つ魔法は、余り使いたくない。


「ギャーァ」


小姓の2人が切られていた。


「殿!後ろへ」


1人は袈裟斬りにして、2つに別れた。

それでも斬りつける者2人を、電光石火に突き刺し1人は崩れ落ちた。

最後の1人は、のどに突き刺した状態だ。

刺されているのに、必死に声を出そうと赤い泡が吹き出した。

引き抜くとそのまま倒れた。


あ!どうやら火縄銃で狙っている。

とっさに右手の中に小さな弾丸を作り、一気に放った。

2人並んでいた者の眉間には、1センチ程の穴が開き、屋根から転げ落ちた。


やっと襲撃した者の正体が分かった。

名前の横に風魔と表示されていた。


「殿、この者は風魔の者と雇われた者でしょう」


「なに、風魔だと。北条め裏切ったな・・・」


後で分かったのは、俺らの御膳の毒味が終わり出した後に、邸内の者に酒が振舞われた。

その中に毒が入っていた。


そして酒を飲まなかった者は、密かに風魔の手で始末していた。


そして、進入した者は104人。

手引きした者は、23人も居た。


ことごとく俺が討ち取った。

【クエスト完了 報酬に幻影魔法を差し上げます】

なんと幻影魔法を取得した。


実際に存在しないものを相手に見せることができて、痛覚や嗅覚や味覚まで感じさせられる。

これなら、相手を傷付けずに拷問が出来そうだ。



最初の1人目は、気合が入りすぎた。白目をむいて気絶してしまった。

余りにも残酷な拷問を見せた。

普通な尋問をしてみた。


「さあ、誰に雇われた。白状しないとあんな事になるぞ」


「おらは、銭に目が眩んだだけです。名前も知りませんだ」


「名も知らぬのか・・・」


「へい」


今川の殿様の前で、自白した者は詳しい情報を持っていなかった。

雇った者に、そこまで知らせないのも当り前だ。

そして縛ったまま放置。

その数5人。5人とも雇われた者だ。


それ以外の雇われた者は、風魔によって口封じされていた。

そんな、甘い話に乗るからだ。


風魔の者は、捕まる前に自決してしまった。



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