第29話明智光秀が来た




ライフル部隊の新たな入部テストが行なわれていた。

的に10発を撃ち、後半の5発をいかに的へ当てるかを見ているはずだ。

新式ライフルを一般人が触れることは無いに等しいから、いかに修正して的に当てるかに重きをおいている。


「あれが、朝倉から本郷家へ鞍替えした武士か?珍しいな・・・」


俺らが帰る時に、先頭の隊列に直訴じきそしたので覚えている。

俺は穏便にするように言いつけた。

その結果は、その者を取り敢えず連れて行くことだった。

残して行けば、その者はただではすまないだろう。

朝倉からは何も言ってこなかった。



「え~と、朝倉で50人の鉄砲隊を預かっていたそうです。たしか明智光秀あけちみつひでと名乗っています」


「なにーー!!」


あの明智光秀なのか・・・斉藤道三さいとうどうさんに仕えて、道三と義龍の親子の争いの結果、敗れて浪人となった光秀か・・・。

テレビドラマで何度も見て知っているし、織田信長を討ったことで有名だ。

織田信長にむごい仕打ちをされて、それも1つの原因だったと言われている。

惨いことをしなければ裏切らないだろう。


それ以前に、鑑定で察知出来るから大丈夫か。

有能な武将だったよな・・・ならば本郷家で頑張ってもらおう。


「殿、中々な者です。最初の1発を中心からわずかに外した以外。9発を真ん中に命中してますぞ。こんな光景は初めてですぞ」


何を興奮こうふんしているんだ、俺なんか最初から当てていただろう。

原理が分かっていれば、あの距離なら当てるのも容易だ。


これで満足するな、長距離の狙撃を命中させるのが基本だ。

的をとらえて、風を読んで引き金を引く瞬間も無駄な力を入れない。


動く的には、距離と弾の速度を考慮こうりょして予測ポイントで引き金を引くのが基本だ。


本当なら距離を計ったり、風を読む相棒が居れば完璧だ。




その後、明智光秀から騎馬隊にもライフルを持たせて、機動力の高い部隊の編成案が報告された。

着眼点はいい。

山田のおっさんに言って、明智光秀を隊長にして新人を使って編成するよう指示。


今回合格した隊員100人が、その任に就くことになった。


そして後で分かったことだが、明智光秀は道三親子の争いで敗れて岐阜を逃れて、越前国の朝倉義景を頼り仕官していた。



それで思い出した。

紀伊侵攻で雑賀衆のゲリラ戦。


あれも有効な戦い方だ。

ゲリラ攻撃に晒されると、軍勢の行軍速度は落ちるし、ストレスがたまり過ぎて、戦場での活躍も期待出来ない。



前回使った忍者部隊を召集。


「いいか、ゲリラ戦は少ない人数で、敵に対して消耗戦や神経戦を強いて弱らせるのが目的だ。決して勝つことを考えるな、逃げる事は恥じゃない」


そこで、ハンドサインを教えることにした。


忍者隊は、なんと目で合図をおこなっていた。

阿吽あうんの呼吸みたいな感じ・・・なんだよその特殊能力は・・・


忍者の数人は「そんなのいらない」とぶつくさ言っている。

そんな忍者に中忍の怖い目が光った。

するとシーンと静まり返った。

こいつらは、俺より中忍が怖いようで、仕方なく聴いている。



まずは片手での、数の表し方を教えた。


「人さし指を1本を立てる。これが1だ」


2-人さし指・中指を立てる

3-親指・人さし指・中指を立てる

4-人さし指・中指・薬指・小指を立てる

5-全部の指を立てる

6-人さし指・中指・薬指を立てる

7-人さし指・中指・小指を立てる

8-人さし指・薬指・小指を立てる

9-中指・薬指・小指を立てる

10-指で筒状にして0を作る


あなた-相手を指さす

わたし-自分に指さして

来い-手を手前に動かす

聞いてる-手を耳に当てる

見てる-手を目の上に当てる

急げ-拳を頭の横で上下する

集合-人さし指で頭部近くでぐるぐるする

了解-人さし指と親指で丸を作る

止まれ-手の平で止める

動くな-拳をみせる

方向-指を揃えて、手そのもので指す

撃て-指をピストルの形にして敵に向ける

敵あり-敵発見時・・・方向指示のあと親指を立てて下に向ける

敵なし-方向指示のあと親指を立てて上に向ける

距離-手で山を表現、1山で10メートル先を示す



なんとなく納得したようだ。


「案外おもしろいな、ならこれなら何の合図に見える」


「なんだよその形は・・・」


早速、独自のサインを作ろうとしている。

忍者は、発想が自由だった。



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