第28話鳥越城への進入




空には三日月が出ていた。


鳥越城では、かがり火がたかれ辺りを照らし出していた。

しかし、見張り役は立っていない。

すでに地面に倒れ込み、爆睡している。


忍者の集団が、所定の位置につくと、石垣に登り音もなく進入。

眠りこけている見張りを、縄で縛り上げた。



事前に、フクロウを使って、麻酔ガスが噴出す物を運ばせた。

地面に着くと、無臭の透明なガスが噴出する仕掛けになっている。


フクロウは、5ヶ所に運び終えたので、俺の腕に止まり餌を喰っていた。


「ホーオ、ホーオ」と鳴き、美味しかったと言っている。


30分程で4ヶ所では、見張り役は役目を果たせなくなっていた。

それに合わせて、見張りやぐらの見張り役は、しのびよった忍者によって沈黙させられた。


見張りやぐらから「ホーオ」と合図があった。



夜間に忍者部隊が、活発に暗躍している。

顔には防毒マスクが被られていた。



城内にも、同じ仕掛けの物が静かに置かれた。

その途端にガスが噴出して城内へ、徐々に広がて人を眠らせた。


時間を見計らって、静かに忍者部隊が城内に侵入。


寝ている者を縛り上げてゆく。

そこへふらつく男が現れて、「あうあああ」と上手くしゃべれない状態で倒れた。


そして、忍者の2人によって取り押さえられて、猿ぐつわを噛まされて、両手両足を縛られた。


奥の部屋でも、ふらつく者を同じく縛り上げられた。




夜が明けた時には、すでに終わっていた。

今回は、クエストが完了しているので、殺さないように制圧した。


麻酔ガスの効果も知りたかった。


こんなに効果的ならば、毒ガスを使いたがる者の考えも分かるような気がする。

しかし、無差別の殺傷は容認出来ない。



ここには、女が30人近くが居た。


目を覚ますとガタガタと震えて、こっちは何もしないと言っても信じて貰えなかった。

やはり、赤いジャージ姿が悪かった。

すでにここまでも悪い噂が広がっていた。

誰だ、ひどい噂を流したのは・・・


そして、お百姓の城として有名な城は落ちた。


たしか昔の記憶では、柴田勝家によって加賀一向一揆の拠点鳥越城は落城させられた。

城内の門徒衆300名余りははりつけになり、周辺の7ケ所の村は根絶やしにされたとか。

そして鳥越城は「一揆終焉の地」と言われるようになった。


落城の悲惨な様子を物語る「自害谷」や「首切り谷」とよばれる堀切などが残っていたはず。

それゆえに鳥越城跡が危険なパワースポットと言われる所でもあった。



しかし、今回は違った結果になった。


鳥越城の近くの二曲城も、すでに落ちている。

ここは、俺の恫喝どうかつで戦意がなくなり降伏を受入れた。


鳥越城の周りの村々は、すでに武装放棄させた。

当初は殺されると思っていたが、信じていた宗派をこちらが指定する宗派に変えるだけで許した。

本郷家と対立しない宗派だ。


中には真っ当な宗教を信じる坊さんは居るのだ。

そんな坊さん達を集めて、新たな宗派を作らせた。

その坊さんの生活安定の意味で、一定の基準で大名から銭が支給される。

それによって、坊さんも逆らうことも無いだろう。


この世界に来てから、何かと宗教対立をしてきた結果だ。

どこかで折り合いをつける時だ。



残ったのは鳥越城だけだったので、これで終了だろう。

朝倉は、楽に村々を制圧しただろう。


加賀国は、当初の取り決め通りに、朝倉に丸投げした。

相当数のお百姓が亡くなったので、復興には時間が掛かるだろう。



加賀国を渡す条件として、若狭国の侵攻時に駆けつける約束をしている。

そして、その侵攻作戦は止まらない。

丹波と丹後へと侵攻は続き、それにも駆けつける約束をしている。

それだけの利益を、朝倉は受取ったのだ。

邪魔だった加賀一向一揆が無くなった。



そして侵攻に加わることで、同盟国としての信頼の証になる。

もし、裏切れば侵攻して奪うことも織り込みであった。


この計画は、全てが太原雪斎が考えたものだった。

太原雪斎は、相当の策士だった。



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