第18話紀伊侵攻2




陣中で竹中半兵衛が、重い口調で話し出した。


「殿、雑賀衆は主に5つの集団に別けられます。その中の中郷・南郷・宮郷は農業を生業とし新義真言宗を信仰する者達で、すでに我が本郷家に下っております。残りの雑賀荘・十ヶ郷はかたくなに拒んでおります」


「それなら、どうするのだ」


「雑賀荘・十ヶ郷は、漁業や海運・商業を生業とし一向宗や浄土宗を信仰する者たちで、鉄砲使いが大勢揃っているゆえの強気ならば、こちら側は狙撃にて殲滅せんめつしかないと思われます。1人でも残せば鉄砲で殿の命を狙い続けるでしょう」


「狙われ続けるのか、それは困るぞ」


困ると言っているが、本当は1キロ内ならば危険人物が来れば赤表示で知らせてくれる。

だから心配はしていない。

しかし、戦闘中は赤表示の点滅でうっとうしいのだ。

それが絶え間なく続くと思うと、更にうっとうしくなって来た。



中郷・南郷・宮郷は、長島の農業見学でとりこにしたらしい。

そして、根来寺での1件で、同じ新義真言宗であったので恐怖して味方に付いたかも知れない。



行軍して進む先は、紀の川の河口付近の北岸。

そこが最終目的で向かっている最中だった。

なのに赤表示の点滅で危険人物の5人組を特定。

そして、その集団が34まで増えて、こっちに向かって来ている。

武藤一郎に話し掛けて、そのことを知らせる。


どうやら雑賀衆は、ゲリラ戦を仕掛ける積もりだ。

雑賀衆にとって知り尽くされた土地だ。

狙えるポイントは熟知している。


狙って撃って、被害を与えて急いで逃げる戦法だと思われる。

普通ならば、それだけで行軍の足は遅くなるだろう。

怪我した者をそのまま放置にも出来ない。

そして、被害だけが増えてゆく。


この時代にゲリラ戦を仕掛けるとは、通常の戦いで無くなっている。




しかし、今回は相手が悪かった。




「一郎、もうすぐ本郷家に俺の鉛の玉を撃ち込めるのか?」


「ああもうすぐ、見えてくるだなー」


鉄砲を持った雑賀衆が、話しながらけもの道を歩いていた。


「ダダダダダダダ」と音が鳴り響き。


5人の雑賀衆は、一瞬で倒れていた。


「火縄銃か、古臭いものをまだ使っているのか?」


「その火縄銃も高く売れるんだぞ。大事に取って来い」


「へいへい、分かっているよ。取ってくればいいんだろ」



忍者部隊が出動して、機関銃で撃ち殺していた。

四方に待構える忍者から、一斉に撃たれたらことで全滅だった。



行軍中の本郷軍は、遠くの方から「ダダダダダダダ」と音がこだましていたのを聴いていた。

今度は西から聞こえてきた。

その前は東から聞こえていた。



「殿、全部討ち取りました。火縄銃はどうしますか?」


「今川の殿様に売るといいだろう」


「ハハーー」


忍者の中忍で萩源五郎はぎげんごろうの報告だった。




紀の川が見えてきた。3郷が揃って待っている。


「出迎えご苦労であった。して雑賀荘と十ヶ郷はどうであった」


「はは、同じ返事で御座います」


「殿、交渉は諦めましょう」


「最後通告もダメか?・・・」




雑賀荘と十ヶ郷へ行く途中でも、狙っている5人の鉄砲隊に、狙撃2班が5発の弾丸で撃ち倒した。

それを見ている3郷は、更に恐怖した。


射程距離が遠いのに、外すこともなく仕留めたからだ。

3郷にとっても火縄銃の強さは、熟知していたがその上を越えているのだ。

「やはりこっちに付いて良かった」と聞こえていた。


俺の耳は、尋常な耳でなくささやく声も聞こえるのだ。




いよいよ決戦の場がやって来た。


海からは、【なばな(駆逐艦)】・【ながしま(駆逐艦)】・【伊勢(駆逐艦)】の3隻が海岸を取囲む予定だ。

すでに雑賀水軍はことごとく沈められていた。


雑賀水軍の焙烙ほうろく攻撃も、出来ないまま沈められた。

焙烙ほうろくは手投げ爆弾のようなもので、近づいて投げ込む戦法だ。

しかし、近づく前に魚雷によって沈められて、小型船はライフルの格好の的でしかない。




武藤一郎の号令が響いた。


「撃てーー、撃って撃ちまくれーー!!」


雑賀荘と十ヶ郷はどうすることもなく、狙撃され続けた。

折角の鉄砲の名手も、射程距離が違い過ぎた。

覗き穴から覗いた瞬間に撃ち抜けれてしまう。


それに増して小型大砲から、砲弾が撃たれて着地点で破裂して被害を更に広げている。


そして、雑賀荘と十ヶ郷は敗れたのだ。

鈴木孫一すずきまごいちの死骸も確認された。



【クエスト完了 報酬に火魔法を差し上げます】


今度は火魔法だ。

雑賀衆だけに、火魔法だったのか?・・・


あとで知ったのだが、鈴木孫一は通称で『雑賀孫市』と呼ばれていたらしい。

本当にどれだけ名があるんだ・・・



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