第2話勝ち鬨




雨宿りの為に民家近くに、陣営が敷かれている。

グイグイと腕を引張られながら、あの武士が聞いてきた。


「どれ程の人数で襲うか!聞いていないのか?」


「多分ですが、3000人の人数のような話をしていたような・・・」


たしか、時代劇ではそれぐらいの人数だと思う・・・


「ならば、慌てずに戦えば凌げるか・・・」



しばらくして、足軽がかたまってコソコソと話していた。


「お前ら、織田が攻めてくるぞ!しっかりしろ。それと、山田伊助の名で陣営にその事を知らせろ」


「分かりました。おい!ゆくぞ」



又しばらく歩いて武士の集団へ行き、年配の武士にお辞儀して話し出した。


「武藤様、この者が織田の間者4人を素手で殺しました。どうやら織田がここに襲って来ると申してます」


「なにー!それはまことか?急いで殿に知らせねば、そちとその者も連れて参れ。皆、聞いたかすぐさま戦の用意じゃ」


「は、はーー」


みすぼらしい民家で、「殿!火急かきゅうの用件で、失礼します」


囲炉裏いろり近くで椅子に座るのが、今川義元いまがわよしもとだろうと分かった。

お供が甲冑を拭いている場面で、「何ごとじゃ、なんだ武藤か?」


「殿!織田が奇襲して来ますぞ」


「何を言うのだ・・・ここへ来るとな」


「この者が、間者から聞いたそうです」


「なんじゃ、見た事もない傾奇者かぶきものじゃな」


「殿、この者は素手で間者4人を殺す所を見ました。嘘で無いと思われます」


急に外が騒ぎだした、「殿、織田が近くまで攻めて来ました」


「殿、急ぎ逃げましょう」


「織田の奴が、わしの首を取りに来たか?」


この場の20人で外に出ると、すぐ近くまで戦いが迫っていた。

隠れて居た織田の武士が、今川義元を槍で刺す瞬間に、俺は素早く動いてその槍をしっかりと掴んだ。

そして、両手でそのまま持ち上げて地面に叩き付けた。


「グハッ」と口から吐血して動かない。


「この傾奇者は、凄いの」


そんな最中に、今川義元の前に立っていた武士の顔面に、「ビシュッ」と矢が突き刺さり崩れ落ちた。

呆気なく今川義元の側近が死んでしまい、今川義元はガタガタと震えだした。


今川義元も、人の死は知っていたが、知っている人間が目の前で死ぬのは初めてらしい。


「殿、しっかりしなされ!・・・」


武藤は、今川義元の腕を無理やり引張り、動かし始めた。

その後ろでは、2人の武士が矢を何本も刺さっていた。


「今川義元がここに居るぞーー」


俺が、その男のアゴを下からアッパーで打ち上げた。

嘘のように空中に舞い、落下した時には頭が変な方向に曲がっていた。

しかし、既に30人程に囲まれた。


今川武士が切り込んだが、2本の槍に突き刺されて倒れる。

俺も雨降る中を、俊敏に動きフックで甲冑ごと突き破った。

男は何故だと、怪訝けげんな顔のまま倒れた。

そんな俺の後ろに、刀が振り下ろされる。


間一髪でかわして、振向いて右ストレートが顔面に炸裂。

6メートル後方まで飛んで行った。

そして、軽いフットワークで右に動き、振り被る刀の下に入り込み腕を取って投げ飛ばした。

投げ飛ばされた先には、2人の敵が居たが「ボキッボキ」と変な音がして倒れた。


何故か嘘のように360度の光景が、脳内に鮮明に見えていた。

だから誰が何処から襲ってくるのかが、分かっていた。


そして、俺は顔面前で矢を掴んでいた。

危ない所だった。

その矢を思いっ切り、弓を構えている男に投げ返した。

右眼球に命中して、その男は倒れた。



そして、近くの死体の両足を掴んで、何度も振り回して何度も織田武士にぶつけた。

ぶつけられた者は、遠くまで飛ばされている。

使え無くなった死体は捨てて、新しい死体で再度振り回した。

何度も何度も振り回した。

最後の武士を仕留めた瞬間に、放り投げた。


何処まで飛ぶんだ。10メートル先まで飛んで行った。

俺の赤のジャージが、血の返り血で変な色に染まっている。


今川義元と武藤と山田が、顔を引きらせて見ていた。




「殿!無事でしたか?織田は退却しました」


50人程の武士と足軽が集まっていた。


「退却したのだな」



【クエスト完了 報酬に錬金術と風魔法を差し上げます】

俺は戦闘でレベルアップを2度した。そしてステータスを確認していた。



本郷勇ほんごういさむ


Lv5


HP100

MP50


亜空間収納・錬金術・風魔法



中々良さそうな錬金術であった。知識も以前から知っているように身に付いていた。

それに待望の風魔法だ。

俺は一体どうなるのだろう。


その時に、武藤が大声で叫んだ。


「皆の者!勝ちどきをあげよ!」


「えい、えい、おー!えい、えい、おー!えい、えい、おー!!」


今川義元の顔には、何かすっきりした晴れやかな笑顔が広がっていた。

そして、俺は1000人殺しの赤鬼と呼ばれるようになった。

実際は200人ぐらいしか殺していない。



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