4.コクりの結果報告
憧れの西浜先輩を相手に意を決し、赤貝旬子史上初めての「コクり」をやり終えたわたしは教室の席で、うつ伏せになって待つ。2時間も早起きしたから、すこぶる眠いし、ちょいと寒い。
わたしたちのクラスは3学期の初めに3度目の席替えをしている。タイシュンくんは今、右横の席になっている。
その彼がやってきたので、コクりの結果報告をしなきゃならない。西浜先輩の情報をもらっていたから、それは義務なのだ。
「わたし、決死の覚悟でコクりマッスル旬子アタックしちゃった」
「おい赤貝、決死ってのは大袈裟すぎ」
「もう心臓バクバクだったし」
「ああそう。で、レシーブどうだった?」
「うん、チョコは笑顔で受け取ってくれたよ。でも、いきなり交際とか困るし、友だちからってところに着地したの」
「へえ~、意外だな。秒で断ると思ったけど」
「弟くんとしては、わたしに取られなくて、安心できたかな?」
「おれはそんなんじゃないって!」
格好よくて美しい先輩と知り合いになれただけでも成果は上々だ。友だちから始める恋愛も、可能性はあるはずだと思う。
だがしかし、西浜先輩は土日も練習やら勉強やらが忙しいみたいだから「2人きりでお出かけ」とかは叶いそうにない。まあメールのやり取りができるようになっただけでも嬉しいのだ。これは小さな2歩だけど、大きな
今日わたしは、もう一つチョコレートを用意している。練習用に作ったやつで、ラッピングもしていない透明な袋を、タイシュンくんに手渡す。
念のため周囲にも聞こえるように、ちょいと大声で話す。
「もちろん200%、義理なんだからね」
「見れば判るよ」
「礼にはおよばぬぞ小僧」
「おう、サンキューな。へへ」
友だちの関係と云えば、タイシュンくんもわたしにとって、たしかに友の1人に違いない。今年度1年間、座席がすぐ近くになったのも、なにかの縁だと思う。
そしてこの先まだまだ西浜先輩の情報をもらわないといけないから、これくらいの義理はしておかなきゃならない。
だがしかし、タイシュンくんがわたしの「義理の弟」になる日は、願っても訪れないだろう。それにも増して「彼氏」やら「夫」やらになる可能性は、さらに低いと相場は決まっている。
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