第2記


 ミリア達はブルーレイクでの駐留の許可をもらって、他の細かな話し合いもお茶やお菓子を頂きながら終えた後、村からの厚意で止めてもらえる空き家に向かうことになった。

その際に村中を観察しながら歩いてると、ルッソさんがまた案内してくれて色々な話をしてくれる。

村では家畜を飼っているとか畑があるとか、定期的にドームからの支援物資などが届くので助かっていることや、村で育てた野菜や家畜などは少量ながらもドームの方に送っている事、成果報告のためや研究用など用途は様々で。

初めてこういう場所に来た、とさっき零したのを覚えていたんだろう、色々親切に教えてくれた。

先ほどまでテーブルを囲んで話していた家が村長のお宅である事もその時に教えてもらった。


基本的に、ドームに認可されている各村はドームが管轄する補外区域に存在し、その過酷な環境で人が住むための研究開発を行っている。

住む環境は違えど、各村の人たちはドーム市民と同等の権利を持っていて、ドーム政府が保護すべき人たちである。

だから、村の人たちのそんな話を聞いてると、ますます虚偽申請をした理由がわからなくなってくるミリアだ。

まだ会って間もないけれど、別に悪だくみをするような人達じゃないように見えるし、ドームの方とも良い関係が築けているようだし。


そんな事を考えつつ気が付くミリアが眺めるのは、牧歌的でいて何とも言えない風情のある村の景色だ。

丁度、夕暮れと夜の狭間で、寂れたような村の景色の影が色濃くなり始めていっている。

砂埃に汚れた子供たちが走って楽しそうにしてて、こちらを気が付くと遠目からくりくりした目を珍しそうに向けてくる。

家屋の並びに沿って、家の明かりが灯り始める頃でもあった。

道中で見かける人はあまりいないけど、農作物の根野菜を手に家に帰るような村の人を見てると、これからそれらで晩御飯を作るのかなって思った。

ドームからの支援があっても、彼らの生活は自給自足に近いのかもしれない。

「ここですね」

と、村長宅から出てけっこうすぐだった、ルッソさんが隣へ指差す先にある家は、夕闇の暗い中でも色彩がちぐはぐな木造の小屋に見えた。

強い西日が変に反射しているのかとも思ったが、色彩というより、黒かったりでツギハギ補修を繰り返しているとしてもボロそうだった。

まあそれでも、駐留中に軽装甲車の中で夜を過ごすにもバッテリー等の消費も激しいし、4人が同じ空間に詰める事になるしで、ちょっとボロくてもそれなりに快適に過ごせるのなら助かる。

「ドームから来られる運輸の方々もよく泊まられるんですよ」

と、ルッソは歩きながら話してくれるけど。

やっぱり、最初から彼らは私たちをこの村に泊める気でいたような気がしてならないミリアは、とりあえず、こくこく頷いておいた。

「ボロいな。」

ケイジがはっきり言うけど。

「はは、見た目はすいません。」

ルッソさんも苦笑いだ。

ミリアも、余計な事を言うケイジのわき腹にパンチしようかとちょっと思ったけど。

「でもベッドもありますし、中の設備もちゃんとしているので、ちゃんと休めると思いますよ。」

地面は所々に草の生えた砂地と土の中間のような固さで、その小屋へルッソを含めた5人はのんびり歩いていく。

散歩気分でよくよく見てると、村長の家や他の家屋もツギハギがあって木でできた部分と金属や布地などでふさがれた部分が見える。

見栄えは少し悪いが、この布地で隙間から入る砂埃を防いでいるのだろうか。

村長宅とか他の家屋でもそんな感じだし、まぁ、少しくらい小屋の方がボロボロなのも仕方ないか。

そんな事も考えてたミリアは、その小屋の前までたどり着いて、みんなとその建物を見上げる。

近くで見たらよりツギハギだらけだった。



ルッソが一歩進んで、一段高くなったステップを踏み小屋のドアを開ける。

「さぁ、どうぞ」

と、ルッソが言い終わらないうちに中を覗いたケイジが、すぐ中へ入っていった。

続いてミリア、リース、ガイも追って入っていって、目に入ったのが、窓から入る夕焼け色に染まった4つのベッド。

寝転がった時に顔が付き合わせられるような配置で枕が置かれている。

室内に棚なども配置されているが、一通りの家具があっても目を引く物といったらそれぐらいではあった。

一泊、二泊用の場所と割り切っているようだ。

今も、ぐいぐいとケイジがベッドを押したりして感触を確かめているけれど。

「悪くなさそうだ、」

ガイやリースたちも小屋の中を見回しながら、ちょっと嬉しそうだ。

小屋の壁も確かにツギハギだが、隙間から風は入って来てないようだ。

壁は見たまんまで薄そうだし、ベッドも簡単な造りのようだが、寝る分には申し分ないようだ。

小屋の見た目より快適そうな室内には2か所のガラス窓があって、外の村の夕日に陰る光景が見えるけどカーテンを閉めれば問題なさそうだ。

つまり、全体的に簡素な造りだが、車中泊やテントで野営するよりは全然良さそうだ。

奥の仕切りまで覗いて一通り見回したミリアが、ちょっと笑顔で傍のベッドに腰掛けてた。

「うん、今日はぐっすり寝れそう」

程よく押し返してくるベッドの弾力で、寝心地もきっと気持ちいいだろう。

「あっ!?待て!まだ何処で寝るか決めてねぇだろ!?」

って、ケイジが怒ってるけど。

「じゃぁ、あたしここ~♪」

笑顔になるミリアはベッドをぽんぽん叩いてた。

「公平にじゃんけんだろ?まずは!おいリース!ガイ!」

「そんなの、どこでもいいじゃん・・・」

めんどくさそうなミリアと、妙に興奮しているケイジだ。

「おまぇ、そういうこと言うならお前抜きで決めるぞ。残ったのがお前のだからな、」

「えぇ!?なんでよ!?」

「どこでもいいんだろ?」

「良くない!残ったのとかは!」

「じゃあ仕方ねぇからじゃんけんだな、」

「・・仕方ないな・・」

勝ち誇ったようにニヤリと笑うケイジに、ミリアは渋々だが立ち上がる。

「ほれ、リース、ガイも、やるぞ」

「ということらしい、悪いな、案内してもらって」

って、ガイが入口で苦笑いのルッソに伝えてた。

すっかり忘れられてるようなルッソに、ミリアも気が付いてちょっと照れ隠しに笑ったようだった。

「いや、楽しそうで。休んでてください。あとで、食事とかお風呂は村長のお宅で、ぜひしてください。後でまた呼びに来ますから」

これが、至れり尽くせり、ってヤツのようだ。

「そういやもう一つ、この辺を自由に歩いていいっすか?色々と調べた方がいいだろうから。」

「はい、勿論。いいですよ。けど何にも無い所ですが?」

「地形とかを知っときたいんですよ」

「あぁ、なるほど。ご自由にどうぞ。みんなにも伝えておきます。そうだ、案内はいりますか?」

「いや、大丈夫だ。な?」

って、話を進めるガイがミリアに振るから、ミリアもそのまま頷いておいた。

「はい、大丈夫です。」

「そうですか。それでは、皆さんゆっくり休んでてください」

「どーも、」

「ありがとうございました~」

ガイや、暢気なミリアの声がルッソの背中に届いて、少々、苦笑い気味かもしれないルッソが会釈をしてドアから外へ出て行った。

ぎぃっと軋むドアが閉まった後、小屋のどこかがまた軋んだみたいだけど。

風の音か、何かの軋みか、顔を上げたミリアがいる3人の方へ、ガイもベッドの横へと近寄っていった。



 ミリアは、ケイジの牽制に身構えている。

「ふふふ、パー出すからね、パー」

そんな零れる不敵な笑みを浮かべて。

「じゃぁ、俺は・・チョキだ・・」

「言ったからには絶対に出してよ?」

「当たり前だろ、お前こそナ?」

「当たり前じゃなイ?」

じりじりとお互いの挙動を警戒して顔を突き合わせている2人だが。

その近くで立っていても相手にされてないリースが、その2人の様子を見ていて。

「いつ決めるんだよ、」

そんな事を言ったガイへ不意に、リースが無気力そうな顔を向けてた。

「なんだ?」

「・・眠い、」

「お前はどこがいい?」

「・・どこでもいい。」

「ま、そうだよな。」

って、言葉を交わしたガイもリースも同意見のようだ。

「あれって、何か意味あるの?」

「あぁ・・、気分は乗るな、気分は・・、それ以外の意味は無いだろ」

ガイの冷静で落ち着いた返答を聞いて、リースはまた対峙する2人に視線を戻した。



「何処を狙ってるのケイジハ?」

「俺の聞いてどうするんだヨ?」

「いいじゃない別に、減る物じゃないでしょ?」

ジリジリしてるミリアとケイジをよそに、リースがあくびをしてた。

「あいつらの邪魔をしちゃ悪いしな」

って、ガイも欠伸をして適当にベッドに座って待っている。

「言い方!」

びしっとガイを鋭く指差すミリアだ。

その急な勢いに横のリースの方がびくっと身体を震わしてた。

ガイは可笑しそうに笑ってたが。

「そんな事より早く決めるぞ」

ケイジが至極真っ当な意見を言って寄越すから。

「お前らを待ってたんだろ。」

「そうだよ」

「なんで俺なんだよ、」

「はい、いくぞ、じゃんけん・・・―――――強制的にガイの声で熾烈なじゃんけんが始まるのだった。




 結局、ガイがグーで一発で勝ち抜けたので。

「よーし。」

熾烈でもなかった勝負から抜けたガイは両手を上げて喜びのポーズのまま、座ってたベッドに転がってた。

次に決まったのはビリのケイジで、やる気を無くして不満そうだが。

最後の勝負はリース対ミリアにまた、一回あいこを挟んで、リースが勝った。

出したチョキを見つめて少し反省しているようなミリアだが。

結局、動かないガイとリースがベッドの上に転がっているので、ミリアが最初から選んでいたベッドを使うのだから、残ったベッドがケイジの寝床になった。

「俺は最初からここが良かったんだ」

とケイジが愚痴るのを、ははん、とミリアは鼻で笑ってたけど。

「結局動いてねぇじゃねぇか、」

って、ガイは笑ってた。

そんな2人の様子をリースは興味なさげな、眠そうな視線で暫く見つめていた。



 ―――――・・のんびりしているガイは、ベッドの上で足を投げ出して仰向けに休んでいる。

天井の汚れた金属の骨組みを見ていたようだが、ふと口を開いた。

「必需品は後で持ってくるとして、そういやミリア、本部への報告はいいのか?」

と、そのガイの一言にぴくっと反応して、仰向けになって低めの天井を見ていたミリアも一言返した。

「そろそろ行こうと思ってた。」

「そうか。」

・・ミリアは、すっと上半身を起こしていた。

「忘れてたんじゃねぇのかー?」

ケイジがすかさず言ってくるのをミリアは、無視してベッドから立ち上がった。

「日、落ちちゃってるね・・・、行ってきます」

そう言い置いてミリアが出て行くのを、ガイも立ち上がろうとしたが、ケイジが先に立ち上がったのに気が付いて。

ガイは、ベッドの上の体勢を変えるのに留めといた。

扉を開けて出て行ったミリアを、追いかけてケイジが出て行くので。

ガイは、既に日が落ちて暗くなりかけている窓の外を一瞥いちべつしてから。

・・ごろりとベッドに寝転んだ。

静かな室内になった。

目を閉じて、少しの間、意識を彼の考え事の方へ傾ける。



 西からの紅い妖光が村の家屋、建物から、敷地からすっと引いていく。

消えていく逢魔が時が終わり、静夜がその時には横たわっている。

その変わり様をその瞳で見つめていたミリアは歩きながら、ふと後ろを見る・・・すぐ後ろを付いてきて、一緒に村を歩くケイジを確かめてから、また前へ向く。

めんどくさそうにケイジは歩いているが、ついてきたようだ。

それは、知らない場所で1人きりになるのは危険だからだ。

小屋で休んでいるガイとリースも今は2人、ツ―マンセル2人1組でいれば大抵の場面は1人よりも対処ができる。

ケイジにはそれらを何回か言った事はあるが、覚えているのかはわからない。

ただ、いちいち言葉にしなくても、この形になるのは正しい。

まあ、拳銃の『ノピゥ』は懐に備えているから、危険が及んでもそれなりに対処はできるだろう。

そんな危険性をこの村では感じてはないが、何も用心しないよりはいいだろう。

・・・いや、少しの違和感は感じてはいるけれど。

今すぐどうという危険性は感じていない。

複雑な事情がこの村にあって、という可能性もなくはないだろうし。

ただ、今すぐ降りかかるような対人関係の問題なら、拳銃1丁でそれなりに対処はできるだろう。

ケイジは相変わらず気の抜けた様子でのんびり歩いているけれど。

ミリアは周囲の景色に目を向けるが、それよりも、うろついているような村の人たちを見かけない。

夕飯時だからか、家屋から光は漏れている。

灯りが見える家屋を気なしに数えても、村にはけっこうな数の人がいるようだ。

ケイジとは特に会話も無く、そんな感じで歩いていたけれど。

ふと、向こうの家屋の窓の傍に立つ人影、子供の様な影を見つけたけれど。

目が合ったのかもわからないが、すぐその小さな影は消えた。

子供か・・余所者の私たちが珍しいんだろうけれど、そういえばこの村に入る前に会ったのも子供たちだったなって思い出した。


ふと気が付けば、村の入り口近くに停めた自分たちの軽装甲車、『PE-105:モビディックIII』の、その周辺に村の人らしい3人ほどが屯していた。

適当に停めていただけだったのだが、その軽装甲車が珍しいようで彼らは窓から中を覗き込もうとしたりしてた。

まあ、外から覗けないようになってるから、窓は真っ暗にしか見えないんだけれど。

確かにこの車両は特別製であるし、彼らがよく目にするのはたぶん、政府機関直轄の物資運搬車や警護車という類のものだから、全く違う外観だろう。

だから珍しいのはわかるが、どういう風に人避けをするか、をちょっと考えたミリアだ。

そもそも、村人には悪い感情を持たれることは避けたいので、波風立てないようにしたい、でも威厳もあるし堂々としてた方が良さそうだ。

ミリアはケイジをちらっと見たけれど、ケイジは堂々と欠伸をしてた。

・・・まあいいか。

かなり近くまで来ても、こちらへ気づかない彼らに、ミリアは声を掛ける。

「どうも、お世話になります」

ミリアが声をかけてみれば。

「あ、ああ、どうも。」

ちょっと驚いたように、すぐ車から離れてくれた。

普通の反応だろう。

こちらを必要以上に警戒している様子は無いし、戸惑っただけみたいだ。

暗くなってきたので見にくいが、男性が2人に女性が1人か、車の近くでなにか話をしていただけのようだ。

別に悪意もない様子だし、素朴というか純朴な様子というか、そんな感じだ。

一応、彼らへ視線を留めていたままのミリアは、彼らの視線を感じながらドアの部分に触れて車両内部でロックを外し、ドアを開けて中へ乗り込んだ。

ケイジも後から乗り込んできてドアを閉めたのを確認してから、助手席のミリアは前方の操作パネルを操作し、車両システムのロック待機モードを解除した。

「まだこっち見てるな・・」

って、ケイジが窓から外を見ていた。

確かに、軒先でこっちを見ながら何か話しているようだ。

外からは中が見えないようになっているので、こちらの様子は見えてないだろう。

「・・まあ、かっこいいからな・・・!・・」

って、ケイジがなんだかちょっとニヤリとしたみたいだった。

「え?なにが?」

モニタを見ながらパネルを操作してたミリアが聞き返すけど。

「この車、」

って、ケイジに。

「うん。」

ちゃんとすぐ当然と頷いたミリアは、その辺は同意で、またパネルを操作し始めた。




 「―――はい、確かに虚偽きょぎ申請でした。」

『・・確認完了っと。あとは『ブルーレイク』側に確認を取ってこの件は終わりだな。待機申請も出しておく。本部からの指示待ちだが、返事はたぶん明日だろうな。ご苦労さん。しかし、また変な要請がきたもんだな。』

「そうですね。村で争った様子もないですし。情報元も適当な事言わなかったですし。それを理由に断られても承知の上、という感じでした。」

『くさいよなぁ・・?』

「それでですね、『ブルーレイク』の責任者と接触したとき、向こう側の提案もありまして、こちらで宿泊させてもらうことになりました。」

『お、強引に有休を取ったのか』

有休って、ちょっとした彼の揶揄やゆみたいだ。

「いいえ、仕事です。すでに夜遅いし、戻るのは危険と判断しました。許可は必要でしたっけ?」

『おーけー、おーけー、認められる。ついでに待機申請か?良かったな。のんびりできるぞ。』

「休暇なら他の所に行きてぇ」

ケイジが後部でぼやいてた。

スピーカーとフォンを通じて車内での会話だから、オペレーターの彼、カルゴにも聞こえてる。

『ケイジか?有休が増えたって思えばいいだろ。なかなか村観光なんて行けないぞ?羨ましいね』

「うるせ、なら代われよ」

『おっと悪いな。今日はレストランの予約を入れててな。』

「で、ですね。ここからは個人的な見解ですが。」

『休暇で行きたい場所の話か?盛り上がるよなぁ』

「違います。『ブルーレイク』の件です。」

『へっへ。俺はこの後、ディナーに行かなきゃいけないんだ。デート。』

「テンション高ぇと思った」

『いいだろう?』

「べっつに、」

「話戻しますよ。たぶん、村長から今日中にもか、明日中にもか、また別件で調査を頼まれるんじゃないかと」

『ははん?そう言われたのか?』

「いいえ。でも、口ぶりからしてどうも、それが目的みたいですから。それで、聞きたいのが、こちら側の判断で受けても問題ありませんか?この場合のマニュアルがわからなかったので。」

『規定に則ってるか、って意味だな?ん-・・この場合は・・・どうだろうな。緊急時の規定で現場判断に任せる、事後報告で良いともなりそうだが、』

「後で怒られません?」

『お前ら特務協戦だしなぁ。怒られるならそっちの上司だろ。俺がやれることは事が起こったらスムーズに進めることくらいだろうなぁ』

「とりあえずそのつもりでお願いします。助かります。」

『何人かと話すんだぜ?俺が。許可貰ったりめんどくさいったら・・』

「あ、帰ったらお土産渡しますよ」

『みやげ?なんだ、高いものは受け取れねぇぞ?』

「牛肉とか譲ってくれるかなぁ、ってちょっと思ったんですよ。」

『新鮮な肉か?』

「ここで畜産してるみたいなんですよ。まぁ期待しててください」

『・・仕方ねぇな。それで、話は終わりか?』

「はい。では、デートごゆっくり」

『へへ、ありがとう。料理ができる男ってのもモテ・・』

ざざっ・・っと無線が切れた、というかミリアが切ったのをケイジも見ていたが。

「牛肉って冷やしとかないといけないんじゃねぇの。腐っちまうぞ」

「あ、」

さすがに冷蔵庫は軽装甲車に備え付けられていない。

まあ、事が起こると決まったわけでもないし。

そうなったらそうなったで、村の人に相談してみて、お肉をわけてもらえなかったら、リリードーム内のスーパーで、パックされたミートバーグでも買ってお礼を言えばいいだろう。

あと今度、リプクマの方で冷蔵庫を車に取り付けられないか聞いてみよう。

そんな事を考えつつ、ミリアは車両システムを操作して必要な情報も確認し始める。

「俺も肉食いてぇ」

って、ケイジが後ろで言ってた。

「つうか、ここで牛肉なんて買えるのか?」

「まあ、手に入るかわからないけど」

「へっへ、ひっでぇな。」

ケイジは笑ってた。

まあ、騙すとかそんなつもりはないんだけれど。

とりあえず、オペレーターの言質も取ったし、何か問題があるって言われたら彼の責任もぽろっと言えばいいか。

この車両での通信も記録されているし。

「ふむ」

これからのことをちょっと考えたミリアは、鼻を小さく慣らしてた。


ケイジがたまに話す、適当な話にミリアは相槌を打ったりしながら。

車両のシステムでさっきの会話の録音データもちょっと複数、複製を作ってわかりやすいように保存しといたりした。

それから、やるべきこともやって、防寒用のジャケットを着て車を降り、夜の村を歩いて今夜の寝床になるあの小屋へ戻っている。

データの保存はあくまでお守りで、何がどうなるかわからないし、どうなったとしても自分たちが正しいという証拠が手元にあって損はない。

まあ、彼、カルゴさんも言ってたようにグレーなだけであって明確な違反じゃないから、酷いことにはならないと思う。

ちなみにさっきの会話、ケイジなんか彼とそんなに親しくないんだろうけど、あんな失礼な口を利けるのはある意味ケイジの才能だと思う。

ケイジは誰にだって慣れ慣れしいというか。

まあ、いろいろな準備や処理は終わったし、今夜はもう考えなきゃいけない事は無さそうだ。

急に、背中がふるっと冷え込んできたかもしれない。

既に日も沈んだし、道に沿って軒先から零れる窓の明かりを頼りにミリアとケイジは歩いている。

ジャケットはみんなの分も車から持ってきたので、ガイやリース達も凍えて眠れないなんて無さそうだ。

それから、いくつかの保存食や飲料水を入れた鞄はケイジに持たせている。

「ってことは・・・」

って、ジャケットを羽織っているケイジがなにか気が付いたようだ。

「数日いるかもしれないってことかよ?ここに?」

って。

さっきの会話の続きが、今気になったみたいだ。

まあ、ケイジの言うとおりになる可能性はあるんだけど。

「それは嫌?」

「めんどくせぇ」

って、事も無げなケイジだ。

まあ、そりゃそうだろうけど。

ケイジは嫌そうだ。

誰だって足止めを食うのは嫌か。

「まあ、給料出るならいいや」

でも、ケイジがそう言ってた。

「・・そっか。」

一応、同意、でいいんだろう。

想定外の事態による緊急の対応行動とか、現場判断による滞留など、これらも仕事の内なので給料は出るだろうし、ちゃんと判断されれば手当てのお金ももらえると思う。

そういえば、有給休暇ってカルゴさんが言ってたけど、皮肉とか揶揄みたいなものだろう。

ふむ。

良い得て妙、とは言えないかな、ってちょっと思ったミリアだけど。

「お疲れ様です」

と、歩いてたら見知らぬ若い女性らしき人が暗い中で声をかけてきた。

「どうも。」

「お食事の用意ができたので呼びに来ました。」

村からの夕食のお誘いみたいだ。

「ありがとうございます。残りの2人も呼んできます」

「あ、他のお2人は先に案内しました」

「あ、はい」

微笑むような柔らかい物腰のお姉さんに、ミリアはちょっと瞬くように頷いて。

ちょっと、ケイジと目配せし合ったけど。

特に物を置いてきたい、という感じでもなかったので、ミリアはお姉さんに伝える。

「じゃあお願いします。」

彼女が歩き出すその後ろをミリアとケイジがついていく、夜の村の風景を少し歩いていれば、案内された先は村長マダックさんのお家だった。



 村長さんのお家の扉を開けて、先ほども来た家の中に入るなり、温かく香る料理の匂いに迎え入れられた。

ミリア達はテーブルを囲んだ人たちよりも、先ずは並べられた香しい料理に目が引かれた。

肉のスープに大盛りのパン、クリーミーなソースをかけた野菜の茹で物や、熱々のバターが香る何かのパイ、それに缶のジュースにお酒類とか、料理がたくさん並んでいた。

伝統的な料理もあるみたいで、見た事の無い料理やお肉の煮つけとかもあって、まるで何かのパーティーが始まるようだった。

ミリアは歩きながら、そのテーブルの様子や辺りを見回したりしたけど。

「よお、先にもらってるぞ」

そのテーブルの席にいた村の人に混じってガイとリースがいて、ガイはコップを片手にもうご機嫌のようだ。

たぶん、ジュースだと思う、お酒だったら後で一発お説教しとこう、と思ったミリアだが。

「さあさどうぞ。席についてくだされ」

人のいい笑顔で、にこやかにマダック氏が席を促してくれる。

他の人たちもにこやかで、なんだか家族って感じがした。


勧められるがまま丸いテーブルに隣並んで座ったミリアたち4人は、目の前の料理を珍しげに見るしかなかった。

料理の材料はリリーの政府機関から支給されているものも多いんだろうけど、美味しそうな物しか並んでいない。

テーブル席に着いているのは先ほど会った村の『賢き役』という人たちも2人いて、他にも給仕してくれる人も先ほど案内してくれたお姉さんを含めて4人ほどいるみたいだ。

「すっげぇな。食っていいのか?」

ケイジがよだれでも垂らしそうだ。

「ケイジ、」

ミリアは注意を込めて名前を呼んだけれど。

お皿に盛られた温かな湯気が浮かぶ料理の数々、ドームでは滅多に見られる物ではない。

お金があれば、高級レストランで新鮮な素材や香辛料をたっぷり使った美味しい料理にありつけるのだけれど。

一般的な食事でこんな贅沢にいろんな素材を使った料理というのは、あまり縁が無い状況だから。

「お酒の方がいいですかな?ジュースもありますぞ?採れたての牛乳もありますよ」

「これ食っていいのか?」

ケイジが目を爛々とさせていて、食器を掴もうと。

「おおぉっと待った!」

マダックさんが慌てて止めに来てた。

「食べるのはお祈りの後で、ですぞ」

そんな大きなリアクションに、ケイジはちょっと驚いたように、食器を置いてた。

「それでは、神の思し召しに祈りを」

彼らは目を閉じて、首を垂れて口元で祈りの言葉を呟き始める。

ミリアやケイジたち、4人はというとその間沈黙をしており、お祈りが終わるのを待っていた。

ケイジはきょろきょろしていて、ちょっとつられるミリアもきょろっと見回したけれど。

特に祈るべき存在を持っていない4人において、その辺は数少ない気の合う部分の1つだ。

程なくして、彼らのお祈りが終わったのは幸いだった。

お腹を空かせた皆が一斉にスプーンやフォークを手に取ったのを見て、我慢していたケイジに、にんまりと笑みが生まれる。

みんなが大皿から料理を取ったり、取り分け始めているのを待っていた4人は渡された皿のスープやお肉のステーキを目の前にして、芳醇な香りを吸い込んだ。


「さあどうぞ、うちで作ったパンですよ」

「あ、どうも、自家製なんですか?」

「お酒は飲まないんですか?」

「飲みたいのはやまやまなんですがね、」

ガイがミリアをちらっと見てるけど、ミリアはパンに何かのペーストを塗っていて、そのまま一口齧った。

そして、ちょっと驚いた顔をしてたのは美味しかったからみたいだ。

「どうだい?」

「美味しいです」

「うちの特製レバーペーストなんだよ、」

「お兄さん、牛肉のチーズ焼きいかが?」

「・・・、」

リースが呼びかけられて、あくび交じりに小さく会釈していて。

そんな中、ケイジがいろんな味のペーストを塗りたくったパンを片手に、スプーンでスープを掬って面白い物を見つけたという顔をしてた。

「このでっかい肉ってあれだろ、あの柵の中にいるやつの肉だろ?」

「そうですとも、牛です。さあさ食べてください」

嬉々としてケイジがスープの肉を見ていて、口に入れる。

「うめぇ。」

「それは良かった。今日の夕食のために一匹絞めたのですよ、さぁどんどん食べてください。」

ガイもそれを見て、スープの具である肉片をスプーンに取ってまじまじと見ていたが。

「そう想像すると結構抵抗あるな・・って、喰ってるし」

ガイが戸惑ってる間に、呼ばれたと思ったのか隣のミリアが口にスプーンを含んだまま顔を上げてた。

リースもフォークでその牛肉を食べていて、不思議そうにガイを見ていた。

「お味はどうですか?」

「おいしい」

率直なリースに見られてるガイだから。

「それはわかってるって」

苦笑いのガイみたいだった。

「生きてる肉なんてそうそう見る機会無いからな。いや、さっきまで『生きてた』、か。なぁケイジ」

「意外とビビりだな、」

「うっせ」

素朴なケイジの憎まれ口に、口を尖らすガイだ。

それでも、そんなに間を置かずにガイは肉を大きく開けた口に入れた。

「うめぇっ」

「どれどれ・・」

と、ケイジも同じものを口に入れる。

「これもうまい。」

「ん、うまい。なんか違うな、この肉。旨味っつうのか?ぷりぷりしてるし」

「そうでしょう、そうでしょう。」

ご機嫌な村長さんだ。

すごい勢いで食べ始めるガイとケイジに、ミリアはそんな2人を横目に。

「美味しいからって食べ過ぎないでよ?」

もっふもっふ食べてる彼らは返事ができない代わりに顔や表情とかで、返事してた。

わかってるのかなと思いつつ、全部食べ尽くさないで欲しいなぁ、とも思いつつミリアは口の中の香ばしく甘いミートパイを味わってた。


「そうそう、酒はどうですかな?ドームの方から買って貯めてありましてな」

「おお、ありがたいんですが、」

と、ガイが嬉しそうな声を出す、が、その後に反射的にミリアを見る。

目が合ったミリアは、大きなコップに口を付けて水を飲んでいる所で。

「ああ、仕事中でしたか。それではお勧めすることはできませんな・・?」

ミリアは・・・、そのまま少しだけ微かに頷いてみせた。

「まあ、一杯だけなら」

そして、嬉々として村長に振り返るガイ。

「もらいましょう、そのお酒。楽しい時間にはお酒が無いとですよね!」

「はっはっは、楽しい席には良い酒ですな。ああ、ならば。おーい、一番いい酒を持ってきてくれ!」

給仕のお姉さんもにこっと笑ってくれて、ガイもにこっと微笑み返してたが。

「ところで、警備隊の方々は優秀な方しか採用されないと聞いてますぞ。あなた方もとても腕の立つ方たちなんでしょうなぁ 」

「えぇ、いやぁー」

「こんな場所にまでくるような方々、ご謙遜しないでくさいよ―――――」

ケイジはパンを齧りながらバクバクぱくつきながら横目で、ミリアがぱくついているのを見ている。

「?」

それに気付いたミリアが不思議そうな目でケイジを見た。

「ふぁひ?」

勿論、口いっぱいに頬張ってるのでしゃべれるレベルじゃない。

「よく食うな」

「ほいひぃふぁふぁぱひふぁふぁふぁふぁふぁ・・」

「途中でお前も自分が何言ってるのかもわからなくなっただろ」

「ふぉん」

「あん?」

「フォン」

「・・ノン?」

ケイジのアンサーに、正解だと言わんばかりにミリアは大仰に頷いてみせる。

「どうでもいいわ」

ケイジが見るリースは、丁寧な手つきで食器を扱って、小さく切った深緑色の葉野菜を口に運ぶ所で、ケイジ達を見て、そして口に入れた。

確かにとても慎ましい上品な食べ方で、ナイフとフォークも器用に扱っている。

ミリアは、もぐもぐと顎を動かし続けて、小さな喉が大きく動いて飲み込んだ。

「リースもしっかり食べないとダメだよ?こんな御馳走、足りないって言い切らなきゃ」

「そうだな」

「え・・?」

急に意見が合うミリアとケイジに、ちょっと不服そうなリースの声が漏れた。


給仕のお姉さんが、奥から持ってきたお酒のビンを両手で差し出して。

受け取った村長は上機嫌な笑顔で、それをぽんと開けて、ガイのグラスに深紅色の液体を注いでやる。

「お、どうもどうも」

「ちょっとグラス大きくない?」

ミリアが指摘してたけど。

「これしかなかったんだ、ですよね?」

「それの4分の1にしてください」

「そんなそんな、はっはっはっは、」

「村長。マダック・・」

「あ、はい・・そうですな、いけないですな・・・」

ぎん、と目が光ったようなミリアに、マダック村長が委縮してたけど。

「残念だったな、ガイ」

にっとケイジが肉を頬張りながら言ってた。

「ジョッキでこれなら十分だ」

「他の皆さんはどうですか?」

「あ、いいです。飲める年じゃないので、彼以外は」

「ほほう、そうですか、そうですか。」

ほう、ほうと小気味良く頷きながら村長はグラスを取った。

「酒より料理の方が気に入ってるもんな?なぁ?」

「ん、うめぇ」

「それでは、皆さんがブルーレイクへ来た事を祝って」

笑顔のガイと村長が赤色になったグラスを、ちん、と軽く当てて、涼しげな響きの音を出す。

酒が揺れるグラスの中身をガイは、くいっと口に含んで舌を湿らせるように飲む。

「うまい酒だ、」

「良い出会いに美味い酒は付き物です」

「おお、それかっこいいっすね」

「ほっほ、そうですか?」

「はっはっはっは」

すこぶる機嫌の良いガイと村長が一緒になって笑い合ってる。

もう酔ってるのかもしれないが、そんな彼らを気にしないミリアもケイジも、ぱくぱくずっと口に詰め込んでいる。

周りがそんな笑顔で見守られてたりするのは、わかっているけど。

「ゆっくり食べなよ、あんたたち」

「いつもはドームの方にいるのかい?」

「ドームの方は最近どうなんだい?」

「ニュースでドームの様子とか見れるんだけど、あたし、一回しか行った事なくてね」

「あんたの息子はドームで働いているじゃない」

「それが全然連絡をよこさなくてねぇ。たまに寄越したら素っ気ないもんだよ」

気さくに声をかけてくる彼らのお喋りを聞きながら、ミリアたちは会話を目で追いながらまた口に美味しい物を詰めるのだった。

リースはというと、我関せずに、次は野菜と肉がたっぷりのクリーム色のキッシュを丁寧にナイフで切り分けて、その口にもくもくと、マイペースに食べ続けていた。




 みんなのお腹が満足して、料理を食べる手よりも口を動かす方が多くなってきた頃。

マダック村長が満足げな酒の息を大きく吐いて、思い出したように言ってきた。

「そうそう、後でCross Handerの方に行ってもらえませんか。何か用があるとかで」

ミリアはすでにお腹いっぱいで、ちょっと苦しさもあるけれども。

「Cross Handerですか・・?わかりました」

たしか、さっきあいさつに来た場にいた浅黒く大きな体格の2人、ダーナトゥさんとアシャカさんが名乗っていた名前だ。

彼らの集団がこのブルーレイクの警護をしているらしい。

食べたばかりでのんびりしたい所だけど、まあ、これも仕事だ、仕方ない。

ちょっと動けば、お腹が思ったよりもいっぱいだけど。

「おそらく警護の話でしょう。行く時にお供の者をつけます。よろしくお願いします。」

「はい」

見渡せば、和やかな雰囲気のおしゃべり会になっている中、お腹いっぱいでだらけているケイジがそこにいる。

「じゃあ、行きましょうか。」

ミリアはとりあえず見なかったことにして席を立ち上がってた。

「こふっ・・」

ケイジの口から何か聞こえた気がした。


「美味しかったです。ありがとうございました。」

「こちらこそ持て成せて良かったですよ。久しぶりのお客さんとの食事でしたから、」

「スパイスのソースのステーキは最高でしたよ、はっはっは、」

ガイが機嫌よく笑ってるのはお酒の影響もあると思うけど。

みんなでお礼を言って席を立つ頃に、村長宅まで案内してくれた若い女性が再び先を歩いてくれている。

夜が真っ暗な村では家屋の軒先にランプが弱々しく灯されている所もあり、その灯りのお陰で暗闇でも向かうべき所はわかるけれど、近くの建物しか見えないので頭の中に村の地図が入ってなければすぐ迷ってしまうだろう。

ミリアたちには初めての場所でも、先を歩く彼女の背中は見失う事が無かった。

ガイたちが運んで来ていたライフルを肩に提げて、ミリアはできるだけ周りに夜目を凝らして歩いていたけど。

そして、彼女の案内で辿り着いたのは、巨大なテントの前だった。

見上げるミリアの身長の7、8倍はあるように見えるくらい大きい。

村の敷地内と外の砂漠の境界付近にあった巨大なテントの、複数あった内の1つだろう。

こんな目立つ外見のものはわかりやすい。

昼間見た姿よりも怪しげな雰囲気がするのは、近くで見るとツギハギの外見になにか記号とか紋章のようなものが描かれているからか。

信仰的な意味があると思うが、村の家屋の壁などには見たことがない。

恐らくテントの周囲にあるだけみたいだ。

夜深い現在は明かりにぼんやりと浮かび上がる姿に、たくさんの人の声や気配がしている。

目の前の大型テントをよく観察すれば、目隠しなどの灯りが遠くまで漏れないような工夫もしているようだ。

また、テントと言っても軍部が使うような既製品ではなく、ありあわせの大きな布などで作られた巨大なツギハギのもので、すぐに畳めるものではなく長く居住しているもののようだ。

「ちょっと待ってくださいね」

そう案内してくれた女性がミリア達に言い残し、開きっぱなしの布の出入り口からテントの中へ入っていった。


 誰でも入れるような開きっぱなしの入り口からテントの中を覗けば、なんだか期待していた通りのエスニック民族特有な様相が広がっている。

巨大なテントの広い空間、その中央には火が焚かれていて、それを囲むようにローブを纏った人たちがそれぞれの時間を過ごしている。

話をしていたり食事をしていたり、子供がおもちゃを持って遊んでいたり、離れた場所で寝転がっている人がいたり。

それは、のんびりとしたくつろぎの空間という感じで。

エスニック民族特有な珍しい形の何かや、金属製のよく分からない物などもその辺に置かれているが、恐らく生活用品か日常のものなのだろう。

夜の外気が少し寒くなってきたのを感じて、ミリアは中に入って数歩進んでみれば冷気はさほど感じなくなった。

その辺に転がっている道具も、使い道のわからない、得体の知れないオブジェではないんだろう。

・・砂漠を駆ける遊牧民族、というイメージが頭に滑り込んでくる。

この光景は、先ほど見ていた村長の家や木造りの家たちとは全く異なる文化の物だ。

少なくともそれらが混ざり合っているテント様式のようだ。

彼らが持つ意匠も細かな文様がそれを物語っている。

糸と布を使った伝統的な手作りのオブジェか、木を削ったお守りか、エスニックとはかけ離れた適度に壊れかけた機械の残骸とがごっちゃになった光景は何とも不思議で奇妙な感じがする。

人のローブの下に見える服装は、村で見かける人たちと似たようなものだが、身に着けている装飾品はおもむきが違うようだ。

浅黒く焼けた肌の人も多い。

ローブの人らが座る傍らに、小さな子供が焚き火が揺れる灯りの中で身体を揺らしてて、その内の1人が煌く丸い瞳をこちらに向けていた。

――――少し、ミリアもその子を見つめていた。

その時、大きな体躯の人物がその子供の横を通った。

灯りの影になるほど大きな身体の男性だ、こちらに近づいてきていた。

ミリアが彼の姿を捉えた時に、その後ろに先ほど案内してくれたお姉さんも見つけた。

「よぉ、来てもらったな」

アシャカさんだ、灯りの加減で顔つきが違った印象だが、先ほど会ったし自分たちを呼び出した本人だ。

Cross Handerのボス、ということは、アシャカさんはこの辺りの人たちのボスなのだろうか。

「こいつらが、助勢に来てくれた人間たちだ!顔を覚えておけよ!」

って、後ろへ急にテントの中に大声でミリア達を紹介していた。

ちょっと吃驚したミリアたちはぴくっと背筋を正して、瞬いてたけど。

「ここにいる奴らが全員ではないんだがな、言っておいたからすぐ馴染むだろう」

テント内の彼らは、こちらをじっと見ている。

こちらを、じっと・・品定めしているような。

アシャカさんは私たちへの顔見せのつもりか、こんなに大々的に紹介しなくてもいい気がするんだけれど。

このままだとなんだか、アシャカさんの強引なペースに引きずられそうだ。

「御用があると聞きましたが?」

「うむ?ああ。無線機を渡しておこうと思ってな。おい、使ってない無線機あるか?」

そこにいた青年が、立ち上がってちょっと走ってどこかへ行く。

「用がある時はそれで呼び出す。そちらが用があるならそれを使ってくれ」

「はい。」

ミリアはアシャカさんに返事をし。

「警戒のためですか?」

「ああ、そうだ。」

――――これだ。

また、感じる。

彼らは、何かが起こることを確信しているような行動をしている。

それが違和感を感じるのだ、私にとって―――――

次の質問を口にする前に、ミリアは周囲の彼らを見る、女性や子供たちもいる光景を。

信じたわけじゃないけれど、ここで口にして不安にさせて良いものかを迷う・・・。

と、先ほどの青年がその手に無線機を持って歩いてきてくれたようだ。

仏頂面のようだけど、彼らはただ表情があまり動かない人たちなのかもしれない。

私たちがライフルを担いでいるので、それを警戒しているのかもしれないし。

ミリアは差し出された手の平サイズの黒い機器を受け取る。

彼の背中をふと見れば、彼が戻って行く場所には自動小銃が置かれていたのに気が付いた。

「それを使う。常に持っていてくれ。」

アシャカさんに言われて、意識を無線機にまた戻す。

最新鋭のものではないのは当然として、重さがあるし古い骨とう品に見えるが、軍用として使えそうなタイプみたいで耐久性は高そうだ。

まあ、古くても使えないなんてことはないだろう。

「チャンネルはそのままでいい。」

暗くてよく見えないが、一応、無線機のスイッチをくるくる回して動くかは確認しておく。

これがONのボタンか。

「どこに繋がってるんですか?」

ミリアがマイク越しに声を出せば、アシュカさんが耳元に手を当てて。

『俺に繋がっている』

手元のスピーカーからも返事が返ってきた。

『マダックの奴に歓迎されたそうだな。そいつは腹がいっぱいで倒れそうって顔だ。だはっはっは』

って、ケイジを見て強面の顔が屈託なく笑ってるのも、スピーカーみたいに拡声されてうるさいから、ミリアはつまみを回して音量を調節した。

「こちらからも1つ。」

ミリアは無線機を切った。

「先ほど、村長宅で話した内容で本部へ報告しました。我々は現在、待機状態です。次の命令が下るのはいつになるかわかりませんが。あ、マダックさんにも伝えるべきなんでしょうが、先ほど伝え忘れてしまいました。」

「わかった。こちらから伝えておく。」

「はい。」

彼らに伝えることはこれくらいだろう。

あとはこの村で待機していて、本部から命令がくるか、もしくは彼らが言うように『何か』が起きるのを待つか・・・。

・・・『何か』、とはなんだろう・・。

「すんなりと話を通してくれて、ありがとうな。」

そう、アシャカさんの声音が屈託ない。

「はい・・。・・・?」

ミリアの表情を見ていて、・・アシャカはまた口を開いた。

「あんたたちは『枯れた商人』じゃあないようだ。」

枯れた・・?・・商人・・お金とか物とかの話なら、たぶん賄賂とかそういう類の話だろう。

彼ら独特の言い回しなのかもしれないし、けなしているわけではないようだ。

「規定に従っているまでです。」

「それがありがたい。はっっはっは」

彼は、屈託なく笑っていた。

「・・・」

―――感謝されるようなことは・・・うん、まあ、してるのかな・・・。

確かに、客観的に見れば甘い対応をしているかもしれない。

あのまま帰ってもよかったのに、結局ここで待つことにしたんだし。

ケイジ風に言うなら、『めんどくせぇ』ってことをやっているのだ、私たちは。


「今日は暗いな、月が霞んでいるんだな。ジョッサ、ちゃんと送り届けてやってくれよ」

「わかってますよ」

アシャカさんが外を覗くようにテントの外へ出て行く。

案内をしてくれたお姉さんはジョッサと言うらしかった。

踵を返すミリアは・・彼らから目を切るその前に、思い出したことがあった。

彼らの姿はそういえば、あの青年の姿に重なる。

昼間ここに来たばかりの時に、入り口付近で出会ったあの若者たちだ。

「あ、」

ミリアは向き直って彼を、アシャカさんを見上げていた。

「『コァン、テァルナァ』ってなんですか?」

あのときの青年が言ってた言葉だ。

彼はケイジを見て、驚いた顔でそう言った。

「こぁん?それをどこで?」

「昼間に・・少年から聞いて。聞き間違いかもしれないんですが、」

「少年か・・。・・『コァン・テャルノ』は、まじないみたいなものだよ。この村に、いや、俺らに伝わるまじないのことだ」

まじない・・祈りの言葉、伝承などの類だろうか。

そういった文化を受け継いでいそうではある、彼らの暮らしぶりや様子を見ていると、なんとなく納得できる。

「どういう意味なんですか?」

「・・・訳すなら・・『精霊を、宿す』、ということだ。」

精霊・・?・・ふむ。

「なるほど。」

ミリアは頷いて歩き出す。

精霊・・・。

・・精霊ねぇ・・・――――――


―――――コァン・・・」

アシャカが彼らの後ろ姿を、ミリア達を見送っている・・・。

その目は暗がりに、微かに細められたが・・それもなにかを想うものなのか・・・。

彼は踵を反し、大テントの奥へ潜っていった。




 仄かなランプの灯りが影も作らず寂しく彩る村を通っているとき、前を歩くジョッサさんが教えてくれた。

「『驚いた』、というような意味ですよ。『コァン・テャルノ精霊を宿す』は。」

「へぇ?」

アシャカさんが言った『精霊を、宿す』は直訳だろうか、意訳するとそういう意味なのかもしれない。

驚いたり感極まったら神様を呼んだりする言語もあるし、そんな感じなのかも。

「ジョッサさん、も詳しいんですか?」

「ええ、たまに使ってるので。」

「ん?」

「子供たちが遊ぶんですよ。みんな一緒に」

「ああ、」

「私も子供の頃はみんなと遊んでいましたし、」

ジョッサさんは目を細めて微笑んでいるようだった。

この村の子供の頃なんてみんな、共通語でも、独自言語でも、片言でもいいからみんな話したりしてるのかも、身振り手振りも交えて、きっと。

「みんな仲が良いんですね」

「ええ。」

ジョッサさんはにこっと微笑んでた。

「なんだかおもしろいとこですね、ここ」

って、ガイが言ってた。

「そうですか?私は、ここしか知らないので」

「興味深いって意味ですよ。いろいろ知りたくなる。」

「ふふ、そうですか」

ジョッサさんが笑ってた。

そんなジョッサさんとガイが笑顔を交わすのを、ミリアはちょっと交互に見ながら、みんなで今日泊まる簡素な下宿へと帰ってきた。

ガイがいつの間にか受け取ったらしい、金属製の鍵をドアの鍵穴に差し込んで開ける。

「ありがとうございました。」

「いえいえ、」

ミリアがお礼を言う間にも開く小屋に入って、ケイジやリースたちがベッドへ思い思いに向かうのを、ミリアも追って今日の寝床へ歩いてく。

案内をしてくれたジョッサさんは入口の近くで、荷物を適当に下ろす彼らに声をかけた。

「それでは、皆さん。えぇと、あ、お体をお拭きするための手ぬぐいと水を奥に用意していると思いますが、女性の方は村長さんのお家に来てくれれば御用意できますよ。どうしましょう?」

って、言われたミリアはジョッサさんと目が合う。

「・・あ、わたし?」

ミリアが何故か数秒送れて反応する。

「お前しかいないと思うが」

ガイが苦笑いしてる。

「大丈夫ですよ、こっちで」

ミリアはジョッサさんにそう伝えて。

「そうですか?一応、そこにも仕切りはあるので、使ってもらえれば」

「うん、それだけで充分ですよ」

「はい、わかりました。寝間着なども用意させてもらいました。洗濯もさせてもらいますよ。今受け取ります?」

着替えは、車両の方にこれと同じ支給された戦闘服が何着か常備してあるから、大丈夫だろう。

「あ、いいえ。ありがとうございます。必要になったときに言います。」

「わかりました。それでは、皆さんゆっくりとお休みくださいね」

「はーい」

にこやかに微笑んだジョッサに、にこやかに軽く手を振るガイ。

ジョッサが外へ出ていくのを見届けて、ケイジはベッドの上で寝転んだ。

既にリースは仰向けに寝て静かに目を閉じているが。

静かになって、ふーっと一息を吐く4人は、とりあえず少しまったりするようだ。

ミリアは、今日はなんだかんだ色々とあったな、とボロの青や赤色のツギハギ天井や壁を眺めながら思う。

そこのケイジはシーツの上で転がっているし、リースも同様、ガイも天井を仰いでいる。

ミリアだけがベッドの横に腰掛けて、天井を見ていた。

簡素な骨組みの見える天井、・・じっと見てると、染みのような物というか、変な色の汚れを見つけたりする。

「・・・さてと、身体を拭こうかな」

と、ミリアが口に出して言った――――――


―――――それまでの沈黙とはまた違う、妙な緊張が訪れたのは、ケイジ達の間だけだろうか。

別に、普段は何も考えていないし、意識もしていないのだが、妙な響きがある気がして、ケイジの心も何故かざわついたのである。


ミリアは、誰も返事をしないのを、ちょっと感じて、部屋の中を見たけれど。

何故か、4人の間に再び沈黙が落ちる。

「ん、あぁ、どうぞ」

ガイが今気が付いたようだったが、携帯をいじっていたのか、鞄からコードを引っ張り出していた。

それから、窓がカタカタと揺れるのが耳に障る。

・・・・・・。

「・・・・・・ていうことで、」

静寂の中に、ミリアの妙に透き通った声が染み渡っていった。

「・・あんた達、出てけっ!!」

「出んのかよ!結局!」

ケイジの声が上ずったのはこの際、誰も気にしない。

「いいから出るっ!!」

ミリアに凄まれたからには、ケイジとガイとリースの3人共、重く感じる身体を引きずって外へ出て行く。


砂が少々混じる、寒風通る家の外で彼らは震えながら、雲の隙間に僅かに覗く星たちを見上げる時間を過ごしていた。

星空が綺麗だ。

「・・さみ、ジャケット脱いぢまった。」

ケイジが寒そうだ。

「取ってくるか・・・」

「今は止めとけ」

ガイが制止してた。

「なんか、色々とむかつく・・」

ケイジが呟いてた。

「・・やっぱ女の子なんだな。」

ガイが遠い目で微笑んでいるようだ。

「つうか、村長の所で入れるって言ってたろ、」

「まあいいじゃんか、」

納得いっていないようなケイジに、ガイが宥めるようだが。

「・・・ふぁ・・」

リースがあくびをして、そこからは誰も口を開かなくなっていた。



数分後、もしくは長くても十数分後だとは思うが、冷えた心には一時間は経つんじゃないかと感じ始めた頃、家の中から顔を覗かせたミリアが。

「もういいよ」

と、小屋に入るお許しが出た。

「やっとかよ、」

主にケイジが不満を言いながら、3人が中へ入って行くわけで。

身体を拭いてさっぱりしたらしいミリアが少し機嫌よさそうで、ミリアが寝る準備をしている間も、追い出されていた3人は濡らしたタオルで身体を拭いている。

綺麗な水は貴重でお風呂に入れない環境なのはよくわかっているし、みんなが身体を十分に拭かせてもらえるだけでも村からの贅沢な持て成しだろう。

「仕切り使えば良かったんじゃねぇのか?」

ケイジが、衣服の隙間から入る砂がついた裸の上半身を拭きながら、ミリアへそう言えば。

「え、うん。まあ、そうなんだけど。」

「なんだよ」

「なんだか、・・ああした方がいい感じがした。」

「なんだそれ」

あのとき何かを感じたミリアらしいが、ケイジも普通につっこんでた。

「こっちは寒かったんだぞ」

「ふーん、そっか、」

「ふーん、じゃっねぇ・・っ」

「それより、車に忘れ物ないね?」

「ん、ああ、」

ガイが普通に答えてた。

「おい、」

「ここで寝るのは決定なんだよな?」

「まあ、不安だったら車でもいいけど」

「・・・こっちのが、のびのびできていいや」

ガイが、そう。

「・・まあ、大丈夫だとは、思うけどね」

ミリアも、そうガイに伝えてた。

「お前らも文句言えよ、」

ケイジが寂しくなったのか知らないけど、ガイたちに言ってた。

「言いたいことは大体お前が言った、」

って、ガイが口端を持ち上げて言ってた。

リースは端っこで背中を向けて身体を拭いていて、どこまでもマイペースだった。


そうして、みんながさっぱりした後、ミリアが指示する寝る前の歯磨きも済ませた4人はベッドに寝転んで、明かりを落とした中で、けっこう快適なベッドの居心地に目を閉じたくなるのを待つのみだ。

「いつもより寝るにはまだ早い」

とケイジはさっきまで寝れなさそうな事を言っていたが。

携帯をいじっていて、睡魔が襲ってくるのを待って・・・いや、もうケイジは『くかー』と寝息を出して夢の世界のようだ。

別に誰かが話をしているわけじゃなく、ガイもそんなケイジに気が付いてベッドの上から見上げたが。

自分の両手で腕枕していて、仰向けに天井を見ていたガイが口を開いた。

「なぁ、隊長」

ガイに呼ばれて、携帯の小説をうつ伏せに読んでいたミリアが顔を上げる。

「ん、なぁに?」

「俺たちとしては、明日から動くって事でいいんですかね」

「そうそう、そのつもり。村の人たちの様子見てると、今晩に何かがあるようには見えないし。この村でも警備があるみたいだから、異常があれば報せてくれるはず。私たちはすぐ駆けつければいいし。異常が無ければ、それでいいし。とりあえず明日は、この村の状態を把握しとこうかな。」

「今日の夜にかけては異常は起きないと?」

「そんな事、確信はできないですけどね。・・って言いたいけどね。ま、異常があればアシャカさんから連絡があるでしょう。ライフルは持って来てるし。」

「わかった、了解、じゃぁゆっくり休ませてもらうわ」

「はい、ごゆっくり」

静かになった部屋の中で、ミリアは、携帯の小説の続きをまた少し読み進めて・・・。

「そういえば、車を小屋の横に駐車しといた方がいいか?」

「・・そういえばそうね。明日よろしく、」

「りょうかい」

言われたミリアは、ガイへ伝えておいた。


また少し、暗がりの静かな時間を過ごしていて。


・・・寝息が聞こえてきている、誰かの低いイビキも。

だから、きりの良い所で・・ミリアは、携帯の小説に赤いサボテンのついたしおりを挟む。


他の3人はもう既に眠りに入っているみたいで。

ミリアは手を伸ばして、最後のランタンの明かりを消した。



*******――――闇を感じる―――******



 ―――――・・一瞬、それは、・・一瞬・・・。

・・堕ちた・・ここは、どこ・・?・・・。

自分がどこにいるのかわからない。

暗闇の、中・・・?

・・けれど、静寂、微かに聞こえてくるのは・・それがなにかわかり始めたのは・・・数人の息遣いで、・・次第に私の瞳は、やっと、ようやく、開き始める・・・。

――――『コァン・テャルノ精霊を宿す』・・だ・・・――――わたしの・・・『コァン精霊』―――――

――――――・・おぼろげで・・息苦しい・・視界・・・、誰かが何人かそこにいる。

―――――何かを話し合っている人たちのぼやける声。

―――とても、とても不穏な空気で、――――いつも、こんな感じの雰囲気はとても、つらい事が起こるんだったのを、―――とても心細い気持ちを呼び寄せながら、そう思う私は、その呻くよう響く低い話し声へ、・・耳を澄ませる・・・。


『―――グレアが―――――』


――――形にならない声を、丁寧に聞き取る―――――――

『―――グレア、が、まだ嫌がっている―――――』

―――――1つ言、1つ言葉を・・形作る・・・私はそうしなければいけない。


――――息のつづくかぎり・・・・――――いつも、そうしてきた―――――――



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