閑話 神メディスの困惑
《神界オリンポス》
白い大きな背もたれの椅子に腰掛けるのは白い肌に金のウェーブ掛かった長髪と金色の瞳が美しい絶世の美女だ。
神メディスは焦りと困惑を配下の天使に悟られぬように終始微笑んで報告を聞いていた。
「メディス様、半刻程前下界において未確認の種の存在を観測。しかし、観測できたのが一瞬のため居場所までは特定出来ませんでした」
笑顔を絶やさず、心の中でメディスは悪態を付く。
(チッ!使えないわね。この
天使たちはメディスから生み出された手となり足となる人形である。
「報告ありがとう。もう下がっていいわよ」
「はっ!失礼致します!」
天使が退出したのを確認したメディスは心の中ではなく、実際に深いため息を吐く。
「はぁ〜、ここ七百年程の間は大人しくしてると思ってたのにあの忌々しい邪神め!前の魔族の一斉侵攻はこちらの召喚した異世界の勇者にて痛い目をみたと思っていたのに!」
七百年前に発生した魔物・魔族の一斉侵攻、通称"
流石にここまでの一斉侵攻はこの世界の人族達では太刀打ちできないと思い、聖女のスキルを得ている人族に異世界の勇者召喚を信託として授け、返り討ちにすることが出来た。
しかし、今回の邪神の手札は正体不明である。どの程度の力なのかも把握していない現状で勇者召喚という自らにも負荷のかかる手段を選ぶわけにもいかない。
故にメディスは困惑していた。
「何故、邪神はこのタイミングで手札を切ってきたの?もしも攻撃を仕掛けてくるならあと三百年先だと思っていたのに」
メディスは千年周期にその力が減退する。七百年前もその隙をつかれて侵攻された。
力が弱まっている上、勇者召喚という大きな消耗をする行為をしたことで一時はもうダメかと思っていたが、なんとか勇者がその危機を払ってくれた。
「はぁ〜......」
メディスは再び深々とため息をし、思考を巡らす。
「とりあえずは相手の力量が分からない今はまだ情報を集めるのが先決だわ。もしこの世界の人族で太刀打ちできないようなら勇者召喚も視野に入れておきましょう」
そう結論付けると再度微笑みを浮かべた顔になる。
しかし、神メディスは後々知ることになる。邪神の手札はメディスの想像を遥かに超えた力の持ち主であるということに。
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