サブマリンと神主打法

はこはま

プロローグ

汗がにじむ左手。強く握るボール。

美唄ファイヤーズの大エース、田中恒成は少年野球北海道大会、決勝のマウンドに立っていた。

7回ツーアウト。8球粘られた末にフォアボールでのランナーを出してしまったが、ここまでノーヒットで抑えている。

1-0。どうにか食らいついてヒットを繋ぎとった1点であったが、大切に守り抜き最終回である7回まで投げ抜いた。まもなく完封勝利で全国大会への切符を手にしようとしている。

カウントはツースリー。ファウルで粘られ、11球目。恒成は相手、中標津フレッシャーズの主砲、高木駿太と対峙しもうすぐ5分が経過しようとしていた。汗が滲む手をユニフォームで拭き、グラブにボールを押し込んだ。


この一球で決めてやる。


その一心で、ミットが構えられた高めにストレートを投げ込む。

白球が糸を引き、キャッチャーミットに収まろうとした瞬間、金属バットの快音が球場内に鳴り響いた。

北の大地の真ん中で、どんなときもマウンドで仁王立ちしたエースが、崩れ落ちた瞬間だった。


「っしゃぁ!!」


高木は右拳を握りながら天まで高く上げる。

ダイヤモンドを拳を握ったまま駆け回る。チームメイトがホームベースを囲い、彼を出迎える。少年野球北海道大会決勝が、終わりを迎えるその瞬間であった。

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