サブマリンと神主打法
はこはま
プロローグ
汗がにじむ左手。強く握るボール。
美唄ファイヤーズの大エース、田中恒成は少年野球北海道大会、決勝のマウンドに立っていた。
7回ツーアウト。8球粘られた末にフォアボールでのランナーを出してしまったが、ここまでノーヒットで抑えている。
1-0。どうにか食らいついてヒットを繋ぎとった1点であったが、大切に守り抜き最終回である7回まで投げ抜いた。まもなく完封勝利で全国大会への切符を手にしようとしている。
カウントはツースリー。ファウルで粘られ、11球目。恒成は相手、中標津フレッシャーズの主砲、高木駿太と対峙しもうすぐ5分が経過しようとしていた。汗が滲む手をユニフォームで拭き、グラブにボールを押し込んだ。
この一球で決めてやる。
その一心で、ミットが構えられた高めにストレートを投げ込む。
白球が糸を引き、キャッチャーミットに収まろうとした瞬間、金属バットの快音が球場内に鳴り響いた。
北の大地の真ん中で、どんなときもマウンドで仁王立ちしたエースが、崩れ落ちた瞬間だった。
「っしゃぁ!!」
高木は右拳を握りながら天まで高く上げる。
ダイヤモンドを拳を握ったまま駆け回る。チームメイトがホームベースを囲い、彼を出迎える。少年野球北海道大会決勝が、終わりを迎えるその瞬間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます