しょの30「とーとーバージョン6(おやつ編1)」について

以前にエッセイで書きましたが。

うちの母ちゃんが作るおやつは、ちょっと、特殊です。


美味しいには、美味しいのですが。

ちょっと、違うのです。


プリンはドカベン(バカでかいブリキ製)弁当箱に。

ホットケーキはフライパンいっぱいのお好み焼きサイズ。


幼心に「母ちゃん、これ、ちょっと、違う」と思っているのですが。

アニキ達2人が気にせず、ガツガツ食うので。


特にそのままでスクスク育った進少年でしたが。

小学校五年生頃から。


やっぱり、ちょっと、違うんじゃね?

と、思うようになりました。


プリンなんか、テレビのコマーシャルでは。

綺麗なクリスタルの容器に「プリンッ」と滑るように盛り付けられて。


可愛い男の子が、美味しそうにスプーンですくって食べてます。

決して、弁当箱ではありません。


進少年は考えました。

昼下がりの厨房で。


言い忘れましたが。

私の実家は飲食店を営んでおりました。


田舎の町の片隅で。

つましいものでしたが。


なので。

普通のご家庭の台所よりは、さすがに広い。


ガス台は3台。

冷蔵庫も大きめなのが2台。


食器も売るほどありました。

どんぶりや皿でオシャレなものではありませんが。


話を戻して。

厨房です。


食器が並べてある棚を進少年は眺めながら。

ハタと、手をたたきました。


かき氷の皿というか、器(一応、ガラス製)。

何か、良いんじゃね?


テレビのプリンの皿に似てなくもない。


というか。

弁当箱よりは、はるかにマシです。


次は型取りです。

プリンのパッケージにある円スイ形。


これが、重要。

プリンと震えるシルエット。


弁当箱でなくても。

カップからほじくるのは。


テレビとチョット違う。

進少年には、こだわりがあったのです。


ようやく、本題です。(やはり長い)

しかも、前半。


進少年は一つの解決策を見つけました。


それは。

(ためます)


そ、それは~。

(更にためます)


そ、そ、それは~。

(もう、ええっちゅうの)


アイスクリームのカップゥー・・・。(≧▽≦)


ダイソー等、100円ショップも無い時代。

オシャレな食器等、田舎で持ってるのはお金持ちの家くらい。


普通の家はうちの母ちゃんと、それほどは変わりません。

プリンの型等、どこにも売ってなく。


まして、小学生が手に入るものではありません。


そこで、アイスクリームのカップ。

円すい形まではいかないけど、円筒形にはなります。


まずは食べて空にしようと。

スプーンを突き刺そうとして。


ハタと、手を打ちました。

(何回目や?)


いずれプリンを型から抜く時。

カップからうまく外せるのか?


進少年は少年ながら、予想したのです。

テレビみたいに簡単に外せる筈がないと。


きっと、くっついて。

グズグズになるに違い無い。


そこで、予行演習として。

アイスクリームをくり抜こうと思ったのです。


どうやって?

スプーンやナイフだと削りすぎてしまう。


何か、ないか?

円筒の形をくずさず、削りすぎないもの。


ハタと、手を打ちました。

(3回目です)


「つまようじ」が良いんじゃね?

それなら、綺麗にくりぬけるでしょう。


ウチのつまようじは、少し太くて。

ちょっと、普通のとは違いました。


早速、アイスクリームをくりぬいてみると。

なんと、みごとに。


円筒形にくり抜けたのです。

ドンドン、パフパフ~!


かき氷の皿に置いてみると。


「オオッ・・・。」

進、感激~!


まるで、レストラン(デパート屋上しか知りません)のよう。

少なくとも、弁当箱よりは遥かにオシャレ。


ウキウキして。

さあ、食おうと・・・。


ハタと、手を打ちました。

(4回目です)


フルーツ蜜豆の缶詰!

買い置きに確か、あったような・・・。


ありました~!(^◇^)


アイスクリームが溶けないうちに。

半分ほど盛り付け、大好きなトロリとしたお汁をかけて。


遂に、完成!

フルーツ・クリーム・ポンチ~!(^o^)


味も、見た目も最高!

とーとーバージョン(この頃は概念ないけど)新メニュー。


これが、前半。

さて、後半は。


定番になった進少年のおやつは。

とても充実したものになりました。


たまに、お小遣いをはたいて。

アイスとフルーツ蜜豆を買って。


一人、悦に入って食べてました。


ある日、食べようとスプーンまで用意したところで。

母ちゃんが、僕に言いました。


「悪いけど、兄ちゃんの友達がきてるので、それ、もらえない?」

母なりに見ていて、結構イケてると思ったみたいでした。


食べる楽しみよりも、自分の作品がうけて嬉しいみたいな。

僕は素直に母に渡し、急いで2個目も作ったのでした。


詳しくは覚えていませんが、アニキも友達も喜んでいたみたいです。


それからは。

厨房でゴソゴソしてる進少年のオヤツは、色々バリエーションを増やしていったのでした。


めでたし、めでたし。


・・・・えっ?


プリンはどうしたのって・・・?


しょ、しょれはぁ・・・。


グチャグチャでした~!(^o^)


キレイにカップから取り出せず。

これなら、弁当箱よりひどい。


進少年の夢のプリンは・・・。


「プッチンプリン」の出現まで封印されたのでした。


チャンチャン・・・。(^o^)

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