34 魔道士の対決
「あ……うぅ……」
サナ王女がうめき声を上げる。サナが駆け寄り、状態を見た。
「う……、ひ、酷い……。骨が折れてる……」
サナは両手をかざし、魔法を唱え始めた。淡い黄緑の光がサナ王女を包む。
「ぅう……ああ……!?」
「大丈夫です、王女! すぐ済みます!」
落ち着けるようにサナが言った。
「俺だけじゃなく、サナも二人!? 一体……!」
オーデルグが叫んだ。
「俺もサナも、破壊神トコヨニに創られた。そう言えば分かるか?」
「な、何だと……!? 何のために!?」
「あんたこそ、何で世界の破壊なんか?」
「……」
オーデルグは一瞬沈黙した後、言葉を続けた。
「動機を聞く必要はないだろう。邪魔をするな」
「いいや、するよ。世界の破壊なんて、許すはず無いだろう?」
「なに、なぜだ!? お前は破壊神トコヨニに創られたのだろう!?」
「人間だからだよ」
「どういうことだ……?」
ルーツは、懐から杖を取り出した。ダンジョンの魔物から貰ったものだ。魔力を通すと、魔力が剣の形になった。
「そして、何よりも、俺たちの恩人を返してもらうぞ!」
「……本当に邪魔をする気か?」
オーデルグも構えた。ルーツは風魔法で高速移動し、オーデルグに斬りかかる。
「うっ!?」
オーデルグは何とか反応し、サイドステップでそれを避けた。ルーツは火魔法で追撃する。オーデルグはそれを魔力で撃ち落とした。しかし、ルーツは手を休めず、再び斬りかかった。
「魔法と剣技か!?」
オーデルグが叫ぶ。オーデルグは両手に魔力を展開し、ルーツを迎え撃った。
一方、サナは魔法を使いながら、倒れている者たちに語りかけた。
「そこの皆さん! サナ王女の仲間ですよね? 動けますか?」
「あ、ああ……」
「今なら、何とか……」
オーデルグが戦闘に集中しているためか、街に張られた魔力結界の威力が弱まっているようだった。倒れていた3人は何とか立ち上がり、サナの元にやって来た。
「きっと分かると思いますけど、私はサナ。皆さん、お名前は?」
「あ、ああ。バスティアンだ」
「俺はジャック」
「リリィよ」
リリィは、オーデルグが暗黒竜ラグナロクの封印を手に入れようとしている状況をサナに説明した。
「そうですか、ここにラグナロクの封印が! まずいですね……」
サナは戦っているルーツの方を見た。ルーツもサナの方を一瞬見た。サナは首を横に振る。魔法が終わっていないということだ。村長たちが言っていたことだが、オーデルグは才能ある魔道士。しかし、コピーであってもルーツはその才能を受け継げなかった。だから、一対一の魔法対決では分が悪い。
「な、なあ。君はサナ……サナ王女なのか?」
バスティアンがサナに尋ねた。
「私はサナ王女のコピー人間です」
「そ、そんなことが……!」
「さっき、破壊神トコヨニに創られたって言ってたわね?」
「はい。今戦っているルーツもそうです」
ルーツはオーデルグと複数属性の魔法を撃ち合っている。魔法そのものではオーデルグが有利なので、剣技を挟む。物理攻撃も混ぜることで、ルーツはオーデルグと戦えていた。
「皆さん、王女のこと、お願いします。できれば皆でここから離れて」
「し、しかし。サナ王女は大怪我だ」
「大丈夫、怪我は治しました。もう、骨も繋がっています」
「え、ええ!? 一体、どうやって」
「私、回復魔法を使えますから」
「か、回復魔法!? そんなものが存在するの!?」
それは、サナがダンジョンの魔物から授かった魔法だった。何の魔法か魔物は教えてくれなかったが、その後、村で長老らを交えて訓練したら、それが回復魔法であることが分かった。長老でさえ驚愕するような出来事だったのだ。バスティアンたちも唖然としていた。
「私はルーツに加勢します!」
「え!?」
「君が!?」
サナは風魔法で高速移動し、杖を使ってオーデルグに複数属性の魔法攻撃を連打した。
「な、なに!?」
オーデルグは構えて攻撃を何とか捌く。
ルーツはサナと共に息の合った攻撃を繰り出す。共に様々な経験をし、冒険者としても活動して来た成果だった。
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