第036話、俺が【聖女】でほんとうにいいんですか? あの~俺は男なんですけど……
「俺が【聖女】でほんとうにいいんですか? あの~俺は男なんですけど…… もちろん人は助けますが毛も生やしますよ?」
俺の言葉を聞いて正面の女性は冷静な声で返してきた。
「それも報告で聞いています、かなり特殊な性癖…… いえ、特殊な魔法のようですね」
いま性癖って言った? 違うからね、そんな性癖もってないからね、誤解しないでねお願い。
「そこはうまく説明を頑張ってください」
えっ! それでも聖女やれって? それは有りなんですか?
「というわけで、よろしく頼みますよ 【聖女】サルナス君」
あーあ、まとめられたよ、なんか強引な形でまとめられたよ、少し威圧的な雰囲気が周りから向けられているし、ようするに街の発展のために名称は変えずに【聖女】のままでいこうというわけだ、大人の事情ってやつか。
「う~ん…… はい」
もう有無を言わさない感じだったので俺は返事をするしかなかった、話がまとまったところで今度は左側にいた女性がエステン師匠に話しかけてきた、顔を隠している布には『西』と書いてある。
「ところで、後ろの幼児体型の女はたしか~ エステンやな?」
「誰が幼児体型じゃ! どいつもこいつも~」
「あんたのことは知ってるで、以前にかなり凶悪な実験をしようとしてたのをうちが止めたんや、処罰命令を西の治癒院へ伝えたのもうちや」
「なるほどのぉ、西の治癒院からワシを追放したのはお主じゃったか」
「そやで、けど今回のサルナスの件であんたの理論についてうちの考えが間違っとったんわかった、この場を借りて謝罪する」
「わかれば良い、ワシは心が広いからな」
エステン師匠は胸をはってふんぞり返っている。
「心は広くても胸はちっこいやんけ、あと実験の中止については間違っていたとは思ってないで、犠牲者が出る前に止めてよかったわ」
「ムッカ~ おぬし! 性格が悪いと言われんか?」
「どうやろか? たしかにあんたは優秀やった 【聖女】に値するほどな、だから称号を与えようとうちが推薦したんや、やのにあんたには断られ、それに加えて危険な実験は止めようとせん、追放するしかなかったんや」
「う"っ」
エステン師匠は黙ってしまった、実験については反論ないのだろう。
今度は左側の男性がネネタンに話しかけてきた、布の文字は『東』だ。
「久しぶり~◆ 聞いたよ~、腕毛を生やしてたんだって~? ウケる~ 凄いイメチェンだよね◆」
ん? ネネタンと知り合いなのか? なんかえらくフレンドリーな人のようだ。
「誰だったかしら★ こんな変な男は知らないわ★ だっさい布なんか顔につけて」
『東』の男は布を外して怒鳴りだした、すかざずネネタンも言い返す。
「んだとぉコラァ!」
「なによっ!★」
こいつらケンカ始めやがった、あの布って外していいのか? 『東』の男はイケメンだった、メガネをつけており髪は少し長めで言動からは考えられないほど理知的な目つきをしている。 今日って俺の任命の儀式だよな、こんな雰囲気でいいのかな?
「おやめなさいっ!」
正面の女性が低い声で叫んだかなり怖い、空気がビリビリしている、場が静まりかえった。
「東の…… 懐かしい顔ぶれに会えて嬉しいのはわかりますが、騒ぎすぎですよ」
「いや、嬉しいわけでは……」
威圧感が『東』の男に向かう、余波がこちらまで来ている、俺が怒られているわけではないのに思わず背筋が伸びる。
「……失礼しました」
素直に謝る『東』の男、俺の横ではネネタンが「べぇー」としている、やめてくれ正面の女性すっごく怖いんだから、ほら『東』の男もなんかこっちをギリギリしながら睨んでるし、なんでこんなことになるんだよ、俺は悪くないのに。
お次は『北』の女性が話し出すのか? 今度は何を言われるんだろうか。
「……」
あれ? 動きがないね、ためて話すタイプかな?
「……」
『北』の女性は黙ったままでいると、正面の女性が宣言した。
「では、改めまして…… 治癒師協議会の名のもとに本日より治癒師サルナスを【聖女】として認め、その称号を授ける!」
「「異議なし!」」
いや、『北』の女性は何も言わんのかいっ! 異議なしのところだけ言ったっぽいけどよ。
こうして俺は【聖女】になった、男なのに。 理由もなんかショボいし、もう少し深い理由は無かったのかな、もっとこうドラマチックな理由とかさぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます