【完結】俺が【聖女】でほんとうにいいのか? 人は助けるが毛も生やすぞ?

さるナース

第001話、仕事やめようかな、、、前編


「お嬢様を治療する方法はずばり、心臓に毛を生やします」


 最初のひと言で領主様がキレた。


 ここは魔法の存在する世界、けれど主人公は魔法道具屋に勤めるただのサラリーマン、このたび転職を決意し冒険者ギルドでの適正テストをきっかけに新しい仕事に就き、前向きに成長していくお話です。



 夜中の3時


(はぁ~……… 疲れた……… 今日も遅くなったな………)


 男は布団の中で覇気のない表情をしながらつぶやいた。 仕事で疲れきっておりモゾモゾと布団に潜り込む、着替える元気もなく表情は暗い。


(きつい…… ぐ~)


 男はそのまま秒で眠りについた。



 男の名前は【サルナス】 魔法道具を作る会社に勤める新人サラリーマンだ。 会社はそれほど大きくはなく、そこそこの中小企業、部署の人数は5-6人ほどで変動あり、毎日遅くまで仕事をして寝不足の日々が続いている、趣味も特になく平坦な生活を送っている。



***



 翌日、職場にて朝イチで作成した新しい魔法道具の設計図を先輩『シューニンさん』に確認してもらうために、シューニンさんの机まで俺は来ていた、俺は直立不動の姿勢でシューニンさんはイスに座っている、設計図を差し出し意見を求める。


「サルナス、これなに?」


 シューニンさんが無表情で俺に言った。 だんだんと渋い顔になる、この先輩は普段からねちっこくて嫌みな感じがあり正直苦手だ、またなにか言われるのかと俺は身構えた。


「えと、新しい魔法道具の設計図です、書いたら一度シューニンさんに見せるようにと『カッチョンさん』から指示されて……」


『カッチョンさん』は上司であり現場監督のような存在だ、シューニンは冷ややかな目で俺を見ている。


「それはわかるよ、こんなんでまともに動くと思う?」


 シューニンさんは呆れた表情をしている、俺は冷や汗が出てきた、たぶん教えてくれないだろうが一応聞いてみる。


「……動くと ……思いますが、どこが悪いでしょうか?」


「はぁ~~~~~~…」


 でっかいため息をしてシューニンさんは俺の持ってきた設計図を床に投げ捨てる。 設計図は床だけでなくシューニンさんの机の下まで飛んで行った。


「あっ!?」


 俺は慌てて机の下まで潜り込み落ちた設計図を拾い集める、机の上からシューニンさんの声がする。


「人に聞く前に自分で調べろよ、こんなに紙を無駄にして」


 俺を見下すようなシューニンさんの視線をうけて俺は気持ちが沈み、声が小さくなる。


「…はい」


 俺は床に落ちた設計図を全部拾い集め自分の机に戻っていく、その間シューニンさんは無言で俺を見ていた、視線が痛い。



***



 1時間後、調べ直したがわからずもう一度シューニンさんの元へやってきた、気が重い。


「すみません、調べてみたのですが、、、 わかりませんでした」


「調べ方が悪いんだろ」


 シューニンさんは言葉を被せるように、俺に顔を向けることなく言ってきた。


「本や資料を読みましたが…… わからなくて」


「もっと調べろや、調べ方が足りないんだよ」


「……はい」


 自分の机に戻る、どんどん気持ちが落ち込む朝から仕事は進んでない、自分なりに調べてみるがわからない。



***



 更に1時間後、結局わからないまま時間が過ぎた、行きたくない気持ちを押さえつつシューニンさんの元へ行く。


「すみません頑張ってみたのですが、どうしてもわからなくて…… アドバイス頂けませんか」


 俺は頭を下げて助言をお願いした。


「チッ! もういいよ、俺がする」


 舌打ちが聞こえた、シューニンさんは俺から設計図を取り上げ、そして俺に背をむけてブツブツ言い出した。


「なんで俺がこんなのをしないといけないかね~ めんどくさ… ブツブツ」


「……すみません」


 俺はシューニンさんに詫びて自分の席に戻る。



***


 自分の席に戻り落ち込んでいると、違う先輩が話しかけてきた。


「大丈夫?」


「あ、ヨシムさん」


 先輩の『ヨシムさん』だ、ヨシムさんは優しくイケメンなお姉さんだ、背が高く見た目も良く笑顔がステキである、この部署の紅一点だ。


「うまく設計図が作れなくて……」


 俺は先程のシューニンさんとのやり取りをヨシムさんに話した。


「教育係の『シラハ』には相談した?」


『シラハさん』とは俺の教育係担当、目つきの悪いあぶらぎった小太りした感じの先輩だ、教育担当だがろくに教えてもらってはない、俺はほぼひとりで仕事している。


「相談はしてみたんですけど、『忙しい、自分で考えろ、手間かけんな』と言われて……」


「あ~ そっか~…… ん~手伝ってはやりたいけど、私もバタバタしてて ……ごめんね」


 ヨシムさんは少し申し訳なさそうな顔をしている。


「いえ、ありがとうございます、大丈夫ですなんとか頑張ります」


 俺はぎこちなく笑顔を返した、するとヨシムさんは甘いお菓子を取り出して俺に渡してきた。


「あまり無理はするなよ、これでも食いな」


 甘いお菓子をくれてヨシムさんは立ち去って行った。


「ありがとうございます」


 俺は立ち去っていくヨシムさんにお礼を言った。


(なにこのイケメン! 優しさがしみる! なぜヨシムさんが俺の担当ではないのだろう)



***



 俺が机で違う仕事をしていると、上司の『カッチョンさん』から会議室に呼び出された。


「頼んだ設計図、できなかったんだって?」


 カッチョンさんはスマートな感じのオッサンで、この魔法道具屋の現場監督みたいな存在だ、残業はしない主義らしい。


「…すみません」


「ん~ サルナス君、ここにきてもうすぐ一年だよね、そんなんでやっていけるの?」


「……」


 俺は返す言葉もなく、無言でうつむく。


「頑張ってはいる、とは思うよ、ただね~ 新人を評価するにあたっては仕事の出来に加えて、学校も影響する、同期の『クロキン』はエリート学校卒業だ、君はまぁ それなりの・・・だ、二人を比べた時にクロキンの方が学生時代に努力してきた、という評価になる、仕事で結果を出さないと差は伸びる一方だよ」


 カッチョンは厳しい表情で俺に評価を伝えてきた。


『クロキン』とは俺の同期で仕事のレベル的にはそんなに変わらないと思う、悪いやつではないが俺とは意見が合わないことが多くよく衝突する、先輩が目の前で説明しているのに居眠りをしたりと神経は太いと感心する、ちなみにクロキンの教育係はヨシムさんだ、羨ましい。


「まぁ頑張って、仕事に戻っていいよ」


「……はい」



***


 

仕事が終わり今日もまた夜中の3時に帰宅した、俺は疲れていた、朝は早くから仕事へ行き帰りはいつも夜中、家に着いたら風呂に入り寝るだけ、趣味もなく仕事だけを繰り返す、そんな毎日だった。


「はぁ~… もう無理だな…… 限界かな…… 魔法道具の世界に憧れて頑張ってみたけど、毎日毎日、無言で道具と向き合い、周囲との会話もろくになくたまに会話することと言えば叱られる時だけ」


「辞めようかな~…… でも次はどうする? ん~…… ぐ~」


 疲れ果て何も考えられず着替えもせずに布団に倒れ込むように横になり、そのまま眠りにつく。




◆主人公のプロフィール◆


 名前ーサルナス

 年齢ー20代前半

 外見ー黒髪、短髪、普通顔

 背丈ー173cm

 体重ー66kg

 趣味ー無し、今はとにかくゆっくり寝たい

 長所ー表では真面目とは言われるが、中身は怠け者

 短所ー笑顔がとても下手、笑顔を向けると相手に不快を与えるスキル持ち?


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