HOT♡THE☆Dracula・Cafeのドタバタ日記 下

DITinoue(上楽竜文)

10,伯爵兼マスター・ルイクル倒れる

 はぁぁ。マスターは無事についたのだろうか。そして、何か大変なことが起こら

ないだろうか。俺はそのことばかり警戒している。

「家へ来い。教えてやるから」

というのは、明らかに誘っているように見える。自分のところに連れて来てどうする

つもりなのかだ。首持ちじじい、奴は一体何を企んでいるのだろう。

そこに、マスターまで行くということは明らかに乗せられている。何かにつられて

いるのだ。そして、何かを根に持つようなしかめっ顔を見せた。それはうちに対抗心

を燃やしているのではないだろうか。

何か臭う。

どうか、おかしな事件は起きませんように・・・・・。


「あの~、すみません。ちょっといいですか??」

声をかけてきたのは紳士的な白髪を持った客だ。

「どうしましたか??」

「あの~、あれ頼んでいいですか??」

「どれでしょうか??」

「人血スープ」


一番シンプルな名前の料理が人血スープだ。特にアレンジはしていない簡単なスープ

だ。入っているのはパセリと白菜だけだ。当店開業以来、一番古いメニューで、

一番手軽、そして一番人気だ。

「了解しました。少々お待ちください」

出汁が入った湯に常備してある人血を入れる。それをかき混ぜるときに、白菜を

入れる。客に出す最後の最後にパセリを追加して運ぶのだ。コショウを混ぜると

よく合うので、コショウをトレーに入れて持ってゆく。


「ありがとうございます――うまい、わしの頃よりもうまい」

キラン。リュークの目が光り、口と耳がとがった。

「わしの頃よりもって??」

「いや、自分の話です」

そこは妙に気になった。その客のポイントの1つが背中の盛り上がりであるから

だ。それを強引に隠すかのように服を着ている・・・・・。


 ここには、しっかりと酒は常備してあった。マスターはいつも通りだ。赤ワインを

入れたサラサラの血を飲んでいる。シャーロットはビール、私、クリスティーヌは

酒に弱いので飲んでいない。

「うめぇぇ~!!酒ってすごい久しぶり。あちぃ~。来る~」

シャーロットの身体には早々に酒が回ってきたようだ。

「うい~。もっと飲みてぇ。追加くれ」

「ねえ、シャーロット怖いよ。お酒飲んだらこんなに変わるものなの?」

シャーロットは酒に弱い酒豪なんだな。分かれば、今まで見てきたシャーロットの

面影が少しずれて見えるようになった。


とんでもないことが起こった。シャーロットとマスターが倒れたのだ。

「ねえ、大丈夫??ねえ、ねえ!!!!」

「ぅぃ‥…酒‥…もっと飲ませろぉ・・・・・」

シャーロットは酔っ払って倒れているので心配いらない。だが、問題はマスターだ!

「・・・・・・・」

「起きて!!マスター!!マスター!!」

「・・・・・・・」

返事はない。シャーロットが起きれば・・・・・。

「ぅぃぅぃぅーさけさけ・・・・・のまなきゃそんそん・・・・・」

うわごとを呟やいているようにみえるが、酔っ払っているだけだ。心配ないからね?


冷静に・・・・・何でこうなったんだろう。確かなことは、ラーメンを食べきって

から倒れたことだ。ラーメンに何があるのだろう。それをどうやって解毒するか。

その成分さえ分ければいいが・・・・・

「そうだ」

シャーロットはラーメンの汁の残りかすを手に取った。それをポリ袋に入れた。

もちろん、店員にバレないように。店は多分私たちを敵視しているからだ。

「よし!!行くよ!!」

シャーロットはあとで迎えに行こう。まずは私のカフェの大切なマスターを

助けよう。私は体のすべての筋肉を総動員してマスターを引きずった。

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