第252話 この頼れるお兄様に護衛任務を!!(4)
「──そんなこんなで」
青空の広がるアクセルの街中に集合した、いつものメンバー。
「王都へ出発進行、レッツゴーは現在進行形ー!」
大きな皮のバッグに愛刀ちゅんちゅん丸を留め具から真横に差し入れた俺は、気合満々で空高く拳を上げる。
まさに引き際を知らないウルトラソウルのポーズ、具材たっぷりちゃんぽん、いや具材シンプルじゃんけんグーだ。
ダクネスは困ったように頭を抱え、めぐみんは悟りすらも開けない修行僧のように目を瞑り、俺の横に並んでいた。
「カズマ正気か? あのアイリス様の護衛任務を請けるなんて」
「何だよ、アクセル版山手線ゲームに負けたからっていつまでもウジウジして。それにお前だっていつもの完全装備してるじゃんか」
「だから、その山手線の意味自体がよく分からないのだが……」
「ほんと笑えるぜ、一国の貴族のクセしてな」
ダクネスが引き止めようと追いかけてくるが、俺の横隣には正義面した逆襲の紅魔族(勝手に命名)めぐみんもいるからな。
ダクネスも石像みたく頑丈だし、最悪、爆裂魔法でちゅどーんも悪くないだろう。
「なあ、めぐみんも昨日はあんなにも嫌がっていたではないか……どういう気分の変わりようだ」
「いえ、ちょっと精神的に不安定だっただけですよ」
やたらと落ち着かないダクネスがめぐみんにも問いかけるが、塩対応なめぐみんは、封すらも開けてない福笑いグッズのように眉一つ動かさない。
「なあ、お前がどんなに丁寧に会釈をしても私たちのレベルでは護衛に失敗するのが目に見えて分かるのだ。だからな、考え直して……」
「なに寝言言ってんだよ。俺たちは強豪な魔王軍の幹部をバッサバッサとなぎ倒してきたんだぜ。文句があるヤツは消しゴム(消し炭では?)にしてやるまでだ」
何が不満か、肉まんか、意地になったダクネスが俺を引き止めようとするが、俺とめぐみんは一歩も下がらないし、別に腹は減っていない。
「しかしゼル帝とちょむすけを預けに行ったきりアクアは帰ってきませんね。どうかしたのでしょうか?」
めぐみんが珍しく集合時間に来ないアクアの心配をする。
まあ、ヒヨコと猫相手だし、とりあえずここで待ってみるかって……、
「いや、水の妖魔とんちんかんなら来たぞ」
マヌケな缶詰はともかく、あの派手で奇怪な服装を着こなせる芸達者なヤツは俺の知る限りじゃ、世界に一人しかいない。
「みんなお待たせー。あの子たちを無事に預けてきたわよー!」
大きく手を上げて、にこやかにカムカムどころか、カムバックしてくるアクア。
「やけに遅かったな。バニルと一緒にバトルごっこでもしてたのかよ?」
「そんなことしたら私の圧勝よ。でもね……」
俺が腕組みしてアクアに絡むと、鼻息を大きく吹き、まんざらでもない様子で腰に手を当てる自慢げなアクア。
「あの性格悪いタキシード仮面がちょむすけを見てから……」
──頭の中に店内にてフリフリなエプロンを付けたバニルが顎に指を添えて、整頓したテーブルに乗せた猫を虫眼鏡で見てる絵面が浮かぶ。
店主のウィズは何も知らずに横目で、その温かいふれあいを眺めているのだろう。
『フムフム、なるほど。ちょっと店先で商売をしていた間に面白い珍事件が起こっているではないか! 世も捨てたものではないな。フフフハハハハハハー!』
バニルが頂点に達した思いを草という感情に変換する様子も薄々と分かる。
お前、悪魔でも調子に乗ってると顎外れるぞ──。
「……と、おかしな高笑いしながら、ちょむすけの頭を指でグリグリしてたんだけど」
「別にナイフとフォークで食べるわけじゃないし、特に問題点はないでしょう」
面白い事件って金田二世の事件簿か?
実写化したら面白いのか?
やっぱり大きく成長したら、あの美人なお姉さんになってくれて、温泉でお背中流してくれるのだろうか?
そう化けてくれたら喜ばしいんだけど。
──ああ、恋い焦がれた空に、汗ばんだ肌に白いタオルを巻いて照れている、あのお姉さんの姿が映る。
おおう、ファンサービスか。
筆者も中々分かってるじゃんか!
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