第5話 このスキルを手に入れて、モンスターに一撃必殺を‼
「それじゃあ、あたしのおすすめのスキル、
「能書きはいいからさっさと来い」
俺は中腰になり、クリスのスキルを待ち構える。
まるでサッカーのゴールキーパーになった感覚だ。
今ならどんな攻撃でも受け止められる気がしてならない。
「じゃあ、いくよ? スティール‼」
「のわっ!?」
クリスが目にも止まらぬ速さで俺の持ち物を奪い取る。
「おっ、これは美味しそうだね♪」
「あー、それは俺がおやつで楽しみにしていた
「このスキルは相手の物をランダムで奪い取るんだ。幸運のステータスで盗む品が変わるんだよ」
「ほら、キミの冒険者カードに記入されてるはずだよ。モグモグ」
確かにカードには
あれ、隣にある
あの駄女神の仕業か。
知らぬ間に宴会芸を覚えさせやがって。
「ねえ、
まあ、少々複雑だが、美少女の食いかけのパンも悪くはないな。
「おっしっ、何を盗られてもピーピー泣くんじゃないぞ!」
俺は指の関節を鳴らし、クリスの顔を睨みつける。
「いいよ。その代わり残念賞はそこら辺に生えているタンポポの茎だよ」
「花びらじゃないのかよ‼」
よくよく考えたら、こんな男勝りな女がメルヘンな感情とか持ち合わせてないか。
「まあ、いいか。いくぜ!」
『スティール!』
俺は突風の速さでクリスの持ち物を奪い取る。
その手には白い物が握られていた。
「何だ、これ?」
ほんのりと肌に伝わる大きな
世界中の男たちが求める願望のアイテムの一つでもあった。
「おっしゃー、大当たり貰ったぜー‼」
一等賞の
「だっ、駄目ー、あたしのブラジャー返してよー‼」
真っ赤な顔をしたクリスは胸元を必死に押さえながら、心底泣きながら俺を追いかけていた……。
****
「やっと帰ってきましたか」
「えらい遅かったわね。まあ、花鳥風月を色々とお客に披露できたから暇潰しにはなったけど」
おい、てんでニートのようなアクアよ。
宴会芸をする暇があったらちょっとは働けよ。
「まあ、キミたちのリーダーから下着を奪い取られて、その場で野郎どものお色気撮影会になりかけたけど」
「うむ。それに関しては間違っていないな」
ダクネスがウンウンと頷きながらクリスのフォローをする。
「「クズマね……」」
「いやいや、半分は誤解だぞ‼」
何だ、俺のもう半分は悪党扱いか?
「あははっ、さっきのお返しだよ。じゃあね、ダクネス」
クリスはイタズラな笑みを向けて、ダクネスにも別れの挨拶をして帰っていった。
「それでカズマはスキルを覚えましたか?」
「ああ、めぐみん。
『スティール!!』
俺の手にぶら下がるピンクの布切れ。
「あれ? このスキルの効果はランダムのはずなのに?」
「……あの、胸がスカスカして気持ちが悪いです。早く返して下さい」
「カズマ、めぐみん相手に何てことをするのよ。変質者に職業が変わったわね」
アクアが軽蔑のまなざしを俺に送る。
お前も似たようなもんだろ?
「やっぱりこのパーティーは最高だ。こんな幼い女の子の下着を人が見ているのにも関わらず問答無用で奪うだなんて。わっ、私もパーティーに加えてくれ!」
「いや、もう変質者のメンバーはいらん」
「ああ、ゾクゾクする。何て素敵で侮辱的なお言葉♪」
ダクネスが体をくねらせながら酔いしれている。
「でもカズマ、クルセイダーは前衛職でしょ。前線を守る存在として必要な人材よ?」
「そうですよ。断ったらかわいそうですよ」
あの二人はどうしてこのおかしなクルセイダーの暴動に気づかないんだ?
こうなったら腹をくくって話すか。
「いいか、ダクネス、めぐみん。俺とアクアは魔王を倒すために冒険者になったんだ。これからの今後の旅はさらに厳しい道のりになるだろう。特にダクネスなんて色っぽい女騎士だから、魔王に捕らえられたら、とんでもない仕打ちを受けるに違いない!」
「その通りだとも。魔王からやらしい目で見られるのは女騎士の職務でもある。だが、それでも行かなければならない。来るならドーンと来いだ‼」
「……ん? どうかしたか?」
俺に負けじとダクネスの熱論にとりわけ、周囲が凍りつく。
あの……。
みんな、ダクネスの変態ぶりに言葉が出ないんだけど……。
「ねえ、カズマ。もっと楽をして魔王を倒す旅をしない? 何か引いちゃうんですけど?」
「女神のお前が一番やる気を出さないと、どーするんだよ‼」
俺はアクアに
何で、俺の周りには、こんな変なメンバーしか集まらないんだよ?
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