第22話 言い訳

注)BL要素

-side アラン-




「やあ、アラン。いらっしゃい。」


 王族しか入れない施設に着くと、見慣れてないと、倒れるくらい眩しい笑顔と共にウィリアムが出迎えてくれる。



「本来ヒロインに見せるべき笑顔のいく当てが無くなって、俺たちに見せてるワン。」


 だろうな。見せる相手間違ってますよっていうと泣いちゃいそうだからやめとくけど。


「泣いたら泣いたでその時だワン。」


 冷徹だな。このワンコ。



 それにしても、さすが王族専用の施設だ。

 なかなかに、豪華である。

 食事施設には、多くのお菓子やドリンクを飲み食いできる。

 リラックス施設では、最新式マッサージチェアがいくつもある。また、マッサージ師からマッサージを受けることもできる。

 宿泊施設には、キングサイズのベッドにジャグジー、プール付きでどこの石油王ですか?という仕様になっている。




 ところで…。




「なあ、あのさ。」


「うん?なんだい?」


「なんで、俺の部屋までついてきてるんだ。ウィリアム?」


「やだなあ。僕と君との仲じゃないか。」


「………。」 


 ポクポクポクチーン。



「あ、何か焼きあがったワン。」


 違います。思い出しただけです。

 そういえば、この王子過去に35回俺を誘って断られたくせに、36回目誘ってきた異色の経歴を持っていたってことを。


「異色の経歴というより、黒歴史だワン。

 こいつストーカー気質だワン。」


 自己紹介のセリフが、

「俺の欲しいものは、どんな手を使ってでも全て手に入れる。」

 って、決め台詞だったしな。


 それの対象がヒロインだけだったら良かったんだけどな。

 友人にまで及んだら、ただの迷惑野郎と化するみたいだ。



 ともかく、この王子どうしようかな。

 キングサイズが馬鹿でかいとはいえ、

 ここで2人で寝出すとか言い出したら、洒落にならん。


「俺も今日はここで寝ることにするよ。

 ベッドも広いしね。

 たまには、いいだろ?こういうのも。」


「フラグ回収の最速タイムだワン。流石だワン。もう既に、洒落になってなくて草だワン。」


 面白がってないで、助けて欲しいんだけど。


「俺の手にも負えないワン」


 見捨てられた。やはり冷徹である。



「あの…束の間のことをお聞きするが、オネエの素質とか、ないよな?」


「え、僕が。やだなあ。

 父上ではあるまいし。君の体目的じゃないから、安心して。」


「これは…グレーゾーンだワン。

 安心して(笑)という男大体、信用できないワン。薬もって、騙す男は沢山いるワン。

 気をつけるワン。」


 それヒロインに会って最初の方に言うセリフだったよな?

 普段から、そこそこ鍛えてるから。ウィリアムより強いし、

 薬は回復魔法で治せてるから大丈夫だし、俺にいうセルフではないような?


「はっ。そうだったワン。つい過保護気味になってたワン。」


「えっと、だからといって、俺の部屋にずっと一緒にいられると困るんだけど。

 ほら、他に部屋もあるだろ?」


「でも、君ずっと僕の誘い断ってたよね。

 この調子だと、多分学園を、離れたらほとんど会えなくなるだろう。

 僕も王の名代として、忙しくなるしね。

 今のうちに交友を深めておかなくては。」


「こいつ、メンタル強い割りに、地味に根に持つタイプだワン。

 しかも、言い訳が言い訳に聞こえないから、タチ悪いワン。」



 本当に、言っていることは的を得ているな。おそらく、学園が終わったらお互いに忙しくて会えない。



 俺は公爵家とダンジョン探索で忙しいし、ウィリアムは、王の執務で忙しい。

 だから、いくら仲が良くても、ほとんど会えないだろう。残念である。


「いい話風に言ってるけど、本気で仲がいいなら、ダンジョン探索を少し休んで会いに行けばいいだけだワン。」


 だめだ。ダンジョンが俺を離さない。


「圧倒的言い訳だワン。しっかり言い訳に聞こえたワン。」



「この施設にいるときだけでも、俺と一緒に過ごさないか?」


「まあ、いいか。」


 ウィリアムがこれだけ真剣な表情で真っ直ぐに、訴えてきたんだ。仕方がない。



「情に流されるタイプのチョロイン的な判断ヤメレだワン。」


 そのツッコミ、情に流される前にして欲しかった。

 こうして、施設内での、俺に対するウィリアムのストーキング行為が正当化されてしまったのだった。





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