第16話 花より団子
-side アラン-
「そろそろ、俺たちも参戦した方がいいかもな。ジュルリ…。」
「ええ。そうですわね。ジュルリ…。」
先生が手伝っているのにも関わらず、仲間たちの「はあ」「やあ」「とお」の3種の掛け声?が小さくなってきたのを見計らって、アランとエミリーも参戦することにした。
「ポータは控えててね。」
「キャンキャン(もちろんだワン。あんな雑魚地球ごと破壊してしまえば、一発だワン)」
可愛い鳴き声をしながら物騒なことをいうポータ。
ある意味で、この世界で魔王よりも確実に魔王の役割を果たしそうである。
「しっかし、この階層のドロップ品はなかなかだな。」
「ええ。私もたくさん魔物を倒して、持って帰りたいですわ。」
そう、この階層はストロングカウという強そうな牛の魔物が相手であった。
ドロップ品はA5ランク松坂牛顔負けのサシが入ったお肉である。
さっきから、ドロップしていたのだが、基本ドロップ品は倒した人の持ち主になるため、アランとエミリーは手に入れることができていなかったのだ。
「あくまで、ウィリアム殿下たちを助けるのが目的ですわ。べ、べ、別に、決してお肉が目当てというわけではないですわよ。」
どうやらこの令嬢、ヒロインがいないから攻略キャラに媚びる必要がなくなったと判断したらしく、完全に脳内が花より団子モードになっているらしい。
なかなか、合理的な令嬢である。隠せてないが、隠す気があるのはせめてもの救いだろうか。
「まあ、お肉が目当てでもいいけどな。結果的にウィリアム達が助かるんだからそれでいいだろ。」
「それもそうですわね!ふふっ。お肉お肉〜。“悪役ブリザード”」
ゴオオオオオオオオオオ…。
ギャアアアアアアアアア…。
アランから隠す必要はないと、お墨付きを得たおかげで、救いようがなくなってしまった悪役令嬢は吹雪の技で相手を凍らせた。
「うおっ。寒っ。」
「我慢してくださいまし。この技を放つと鮮度がいい状態で倒せますの。きっと美味しいですわよ。」
敵を完全に食糧としかみていない悪役令嬢は鮮度のことまで考えて技を放ったらしい。頼もしすぎる。
「…っと。今の攻撃でこのフロアの魔物全員死んでしまったようだな。俺のドロップ品が、なくなってしまったか。」
「あら、失礼しましましたわ。アラン様には多めに分けて差し上げますわ。」
「助かる。」
そんなふうに、和やかに2人が話をしている前で、4人はガクガクと震えていた。
「「「「(一瞬で魔物消えたあの魔法を放てる悪役令嬢怖すぎる。ってかさぶっ)。」」」」
恐怖と寒さに両方で。
何はともあれあっという間に5階層を突破した一行であった。
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