DRESSER://:RAVE

九羽原らむだ

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序章

プロローグ


 西暦1995年。東京・午前3時15分。

 文京区陥落、千代田区陥落。

『我々がこの星を掌握する。我々の繁栄は止まらぬ」

 真宿区陥落、渋谷区陥落、港区陥落----

 配備された自衛隊地上部隊八割壊滅。空中部隊全滅。


 すべては東京ココから始まろうとしていた。


『この星は、貴様たちのような浅薄な生物には勿体なかろう』

 巨大な斧を持つ一つ目の巨人。

 人の片腕を咥えて走る狼。

 翼を生やし、金切り声をあげながら空を舞う翼竜。

 あたり一面の植物を枯らして回る悪臭を放つ多眼の子豚。

『お前達も、この星も、全てが我々の一部となる』

 この世のものとは思えない化物たちが大地を塗りつぶしていく。

 人々の悲鳴。文明の崩れ去る音がその星の生態系を塗り替えようとしていく。

 やつらは突然、空から降ってきた。

 東京陥落。これが全ての始まりとなる。


『だというのに、何故だ』

 中央区。本丸へ怪物の一軍は集結する。

 逃げ惑う民、手も足も出ない状況に困惑し発狂する日本政府。

 あまりにも突然の事だった。この数時間切羽詰まるような思い。使える手は全て使うと人類や躍起になった。しかし結果は抵抗虚しく惨敗の一途を辿っている。

『……何故』

 東京は滅びる。

 日本陥落もそう遠くはない。




 ----はずだった。


『何故……貴様たちのような種族に』

 日本政府最終防衛部隊の集う拠点。【ドレス・ウエストビル】前。

 大群のリーダーと思わしき怪物は唸っていた。勝利は目の前だった、と。何をどこまで間違え、窮地に至ったのかと。

「我々が滅ぼされる……!?」

「簡単だよ。君達が私達を侮りすぎたんだ」

 あまりに滑稽。あまりに呆気ない。怪物達の恐怖におびえる姿は浅はかに笑われていた。怪物の視線の先にいる“翼を生やした光り輝く天使”に。

『バカなッ……馬鹿なァアアッ……!!』

 人類滅亡。地球征服。その始まりは容易い事。生命力の違いを怪物達は人類に見せつけてやるはずだった。

『何故、我々が……敗けるッ!?』

「初対面の人物に向かって敬語を使わないどころか、浅はかだとか馬鹿にする。そんな底の知れた生命体に負けてたまるかという“意地”さ」

 だが、人はそれを叶わせなかった。

 人類のピンチに駆けつけ、空から舞い降りた天使。純白のドレスを思わせる機械装束を身に纏う金髪の女戦士が、高笑い気味に怪物達を嗤い返す。

『本当のことを言ったまでだ……我々が手を下せば土のように粉々になってしまう種族なんぞに……!』

「申し訳ないけど時間がないんだ。すぐに終わらせる」

 天使は手から光を放つ。

 数発の矢は一匹一匹、進軍する怪物達を貫き焼き払っていく。

「よーく見ておくがいいよ来訪者達。そして、ようこそ」

 両手を掲げ、放つ光を一点に集中させる。


「人の星へ」


 ドレス・ウエストビル前方。怪物の一群達が極光に包まれる。

 怪物に滅ぼされた文明と共に、あたり一面は“人の住んだ形跡一つ残らない大地”と化した。


           ・

           ・

           ・


 ----30年後。

 西暦2025年。7月15日。午後2時15分。


「いい加減吐いちまえよ、えぇ? 怪物野郎が……」


 真宿区警察署、取調室。


「うっせぇんだよッ!! ミソッカスッ!!」


 新たなる神話が再び、

 この地で始まろうとしている----

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