第19話 彼女になっちゃった
アヤに急かされる様にカフェを出た後、しばらくモールを見て回り18時頃に帰宅した。
靴を買い替えてすぐ帰って特撮Blu-rayを観るつもりだったが意外と遅くまで外にいたのだと自分でも驚いた。
途中、浅田さんとバッタリ会ったりしたが浅田さん含め最後までアヤが芹野綺夏だと誰にもバレてはいなかったようだ。一応、不安になって浅田さんに「今日の事は誰にも言わないでください」と連絡を送ったら「分かったよ~。リュウくんは恥ずかしがり屋さんだね~」と返された。何か勘違いしてないかな、あの人。まぁ浅田さんにもアヤの正体がバレてはいない様だし、あの人はノリは軽いが口は硬いから大丈夫だろう。
そして今、時刻は21時過ぎ。俺はようやく特撮Blu-ray鑑賞にありついている。だが、何故か隣にはアヤがいる。
俺が家に入る時にそのまま着いてきたのには流石に「家、隣だよ?」と言ったが「大丈夫、今日は連ちゃん家に寄るから遅くなるって連絡してあるから」と言われた。いつの間に…。
なので夕食は姉ちゃんの代わりにアヤを入れて父ちゃん、母ちゃん、俺の4人でとなった。
父ちゃんも母ちゃんも久々にアヤが家で食事をするのを喜んでいた様だった。
ちなみに夕食前に風呂に入ろうとしたらアヤもしれっと俺と一緒に入ろうとしたので追い出した。ウチの風呂は狭い。俺とアヤ、2人も入れない。じゃあ入れる位の広さなら一緒に入るのかと言われたら入らないだろう。姉ちゃんがいる時も風呂に入る時に一緒に入ろうとするので勘弁してほしい。俺は風呂では一人でのんびりしていたい派なのだ。一応、アヤは夕食後に風呂に入った。なので今は火照った顔をしている。そして顔を俺の肩に寄せ体を姉ちゃん程では無いにしろ高校生としては大きすぎる胸を俺の腕に密着させている。だが今の俺にはどうでもいい。
目の前で繰り広げられている歴代ライダー&歴代戦隊レッドと怪人軍団の一大決戦を観る方が大事だ。ライダーの力、スーパー戦隊の力を見せてくれ!
しばらくTVに俺の目が釘付けになっていたら玄関の方から何やら音がした。
恐らく姉ちゃんが帰ってきたのだろう。まぁ別に良いさ。それよりスーパー戦隊全メカ出撃はやはり何度見ても圧巻だ。すると何かが俺に体当たりしてきて、視界が真っ暗になった。
なぜだ!?俺の視界が真っ黒け!
な、何だ!?暗い!柔らかい!でもその柔らかいものを顔に押し付けられて痛い!というか滅茶苦茶擦り付けられてくる。柔らかいが痛い!痛さは強さ全開!
「連くん!連くん!!連く~ん!!!」
俺に体当たりし、柔らかい何かが俺の名を叫ぶ。あー何だ姉ちゃんか。やっぱり姉ちゃんが帰って来たんだ。
という事はこの柔らかいのは姉ちゃんの胸か。何でも良いけど早くどいてくれないかなぁ。このままだと窒息するしTVが観たい。
「何やってんの!水沙!!早く連から離れなさいよ!!」
「あん!姉弟の感動の再会に水を差さないでよ!穂希!!」
「再会ってあんたら同居してるでしょーか!!というかまた抱き着くな!!連も実の姉相手にデレデレすんな!!」
いやデレデレなんてしてないけど…。
穂希も一緒に来た様で俺を抱きしめる姉ちゃんを無理やり引き離し、喚きたてている。姉ちゃんはそんな穂希を無視してまた俺を強く抱きしめる。姉ちゃん、力強すぎ…。というかTV観えない。
「今日、洋子さんから綺夏だけオフになったと聞いて仕事中、気が気じゃなかったよ。連くん大丈夫?綺夏に何かされてない?お姉ちゃんにできる事があったら何でも言ってね?え?お姉ちゃんとの濃密な時間で上書きしたい?う~ん、しょうがないなぁ…♡連くんがそう言うなら…♡」
俺、そんな事言ってないんだけど…。でも姉ちゃんはお構いなしに俺に顔を近づけ目を閉じて唇を突き出す。
「とりあえず姉ちゃんどいて。TVが観えない」
「はうっ!」
何やらショックを受けた様子の姉ちゃんを尻目に俺はTVに視線を戻すと目の前の穂希が腕を組んで仁王立ちしていた。後ろに何やら炎の様なものが見える。オーラパワーでも鍛え上げたか?穂希の体は地上に降りた神秘の泉、神の住む星だったのか。
「で、今日綺夏と何があったか聞かせてもらおうじゃないの」
「何もない。だからどいて、TVが観えない」
TVからは「ライダーキィーック!!」の叫び声が聞こえる。ほら燃え所見逃しちゃったじゃん!
「何もない訳無いでしょ!!どうせ2人でイチャコラしてたんでしょう!!アタシ達が仕事なのを良い事に…!え!?どうなの!?どこまでヤったの!?」
「何も無いってば。ただ靴を買い替えに行く時にアヤとたまたま会って一緒に行っただけだよ」
「はぁっ!?何よそれ!!完っ全にデートじゃない!!ちょっと綺夏!!どういう事よ!!」
怒りがどうにも収まらない穂希はその矛先をアヤに向ける。
するとアヤは火照った顔を更に赤くさせていた。元々アヤは色が白い。だから顔が赤くなると分かりやすい。
というかあれデートだったのか?よく分からんが違うのは確かだろう。
「わたし、連ちゃんの彼女になっちゃった…」
「えぇっ!?」
「はぁっ!?」
顔を赤くしたアヤの発言に驚く姉ちゃんと穂希。
いや、それは浅田さんの勘違いだって。何、アヤもちょっと事実っぽく言ってるのさ。俺とアヤは一切合切そんな関係じゃないからね?ただの従姉弟で幼馴染なだけだからね?
あれ?姉ちゃんと穂希の様子が…?
「連く~ん?その話、お姉ちゃん詳しく聞きたいなぁ~?」
「連!綺夏が彼女って一体どういう事よ!!」
2人が一斉にこちらを向き、姉ちゃんは優しく、穂希は激怒しながら俺に聞いてきた。
これヤバい奴だわ。明らかに2人は何か誤解している。
「「連(く~ん)!!」」
あ、いつの間にか再生終わってる…。俺は荒れる2人を宥めつつ事の次第を説明していった。
横でアヤはフフッと勝ち誇った笑みを浮かべていた。
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