第5話 少女
私が、気付いた時、体は、全く、動かな、かった。
酷く、眠い
また、目が覚めた、知らない、天井
体は動かない
また、目が覚めた知らない天井。知らない臭い、知らない、こんな状況知らない。
酷く苦しい。どうしたらいいの?
私はどうなっているの、わたしは、わたしは、わたしは、どうしたの?
なんで、なんで、なんで、
あれ、今、私はどこ?
気配がした。
知らない中年男性が、気持ちの悪い男が、私を見下ろしている。酷く酷薄な印象を受けた、この人は怖い人だ。誰か助けて、誰か、誰か、怖いよ、助けて、助けて、お母さん。
「起きた?」
「え?」
「よく目覚めたね、良かったよ、飲ませすぎかもって心配してたんだ」
「どういう事」
「あなた、誰」
「ここは、何処」
「ここは、私の家だ」
「誰か、誰か、誰か助けて、助けて、助けて」
男はただ、私が泣き叫ぶのを見ているだけ、何もしないし、表情がピクリとも動かない。何か虫でも観察しているような、異常な感じがとても怖い。
「気は済んだ?」
私は、興奮しすぎて息が苦しくなる。
「大丈夫?」
男は、笑った、微笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、怖いことなどない」
「今、薬を飲ませるから、また、休みなさい」
「いやっ」
男は、無理やり、口を開かせ、何かを口に入れると、それから、無理やり、水を飲ませた。鼻をつままれ、息が出来ず、口を開けざる得ない。
男は、私の鼻を摘まんだまま、口に棒を、上の歯と、下の歯の間に、棒を挟みこんだ。
そして、それから、何も言わずに出て行った。
私は、眠ったようだ。
ぼーーっとする。
どうしたんだろう?
あれ、口に何か、あれ、体が動かない・・・
ああ、そうか、あの男がやったんだ。
完全に私をベッドか何かに固定したんだ。だから、頭も、口も、腕も、足も動かすことが、出来ない、可動範囲が酷く狭い。
ああ、そうか、私は、あいつに誘拐されて、拘束されているんだ。
なぜか、昨日?の興奮は、冷めていて、客観的に物事を観察できた。昨日の恐慌は、無くなり、怖さも減っている。
気配がした。
男が上から見てくる。
「気分はどう?」
「大丈夫?」
私は、なんの反応もするかと、しかし、元々、顔の表情か、手ぐらいしか動かせないのだ。
どうすればいい、こんな時。
学校や親は教えてくれないという、よく聞く話、それが、目の前にある。
「大丈夫なようだね」
「今日は自分で飲める」
「強制的に飲まされるのは苦しいよ」
「飲んで」
男は、薬らしきものを見せ、たぶん、睡眠薬か何かだ。それを口元に持ってくる。
昨日のように、強制的に飲まされる屈辱より、自分で飲んだ方がましだ。
私は、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
口に入れられた、男の手を全力で噛んだ。噛みついた。これで、一矢報いた。ざまーみろ。死ね。この変態が。早く、逃げろ、私は殺してやる、殺してやる殺してやるころしてやる、絶対に、ぜったいに・・・
男は反応を見せない。
悔しい事に、なんの反応も見せない。何なのだ。こいつは、異常だ。こいつは本物の異常者だ、痛い筈だ、髪切れないにしろ、肉は・・・・
「気は済んだ?」
「気が済むまで噛みな」
血の味がした。
私の顎の筋肉は、疲れて、力を失っていく、そして、私の心の絶叫もまた、疲れていく、力を失っていく。あれ、眠い、ねむい・・・・・。
まだ、拘束は続いている、今日は起きてから、何日目なのだろうか?
男が部屋に入ってきた。
また、薬の時間か。
慣れてきた。
もう、怖いとも思わなくなってきた。こいつは異常者、そして、私は抵抗できない。
そう、もう、何をしても無理なのだ。無理だ。そう、
「起きたね、どう?調子は?」
「今、口の拘束を解くよ、舌を噛んで、死ぬことも可能だ。好きにするといい」
「あくまで、君の判断を尊重するよ」
男は、口の棒を、取る。口が酷く、くたびれている。しかし、開放感はすごい、ああ、気持ちいい、こんなに気持ちいいことがあるのか、私は、恍惚とした、幸福感に包まれた。
私は、口が自由に動かせる。これで、意志表示できる、助けも呼べる、、、、舌も噛めるのか?・・・・。
男は、出て行った。
「あ、あーーー」
「あいうえお」
「私は、〇〇です」
「助けて下さい、誰か、ここに監禁されてます。相手は異常者です。」
「助けて下さい、誰か、ここに監禁されてます。相手は異常者です!」
「助けて下さい、誰か、ここに監禁されてます。相手は異常者です!!!」
「助けて下さい、誰か、ここに監禁されてます。相手は異常者です!!!!!!」
私は、絶叫し続けた。
だが、何の音も、しない。
誰の声も、音もない。
何もない。
あれ?
どうして?
どうなっているの?
あれ?
長い長い、拘束が、体を全て覆う拘束が、酷く疲れさせる。酷くつらい。苦しい。助けて欲しい。誰か、助けて。あの男は、この拘束を解いてくれる、つもりないのか!
死ね、死んでしまえ、
いや、待て、
拘束を解かなければ、私が危険だ。
どうすればいい?
どうすれば・・・・・・
時間が長い
何も聞こえない、何も何も、あ、臭いだ
ウンチの臭いがする。
あ、股が気持ち悪い、お尻が・・・・
あれ、これって・・・・
私の・・・・・
頭が動かせない、天井しか見えない。
苦しい、気持ち悪い
あれ、
あれ、あれ?
どうなってるの?
これ、いつになったら外して貰えるの。
ああ、そうか、あの男を誘惑してでも、嫌でも、何をしてでも、拘束を、拘束をなんとかしなきゃ。
男が入ってくる気配がした。
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