城の冷戦

柚木

嫌悪感

「痛い。恐い。嫌だ。」と嘆く君の声。


「助けて…お願い…」何度も聞いた君の声。


「辞めて、なんで…」君は何度も叫ぶ。


僕は君に冷たい言葉ともに謝る。


「_________...ごめん。」


そう言って僕は絶望の目を向けている君を


じっと静かに見ていた。



雨音が街中に響く。


冷たい雨が体に触れて震える。


そんな日に僕は…




この世は思ってる以上に思う様にいかない。


想像や理想を現実にするのはとても難しい。


「ごめん。嫌い。」


君に昨日言われた。


僕はなにも答えず、逃げて帰った。


足が考えるより前に動いていた。


心には傷が付いた。とても深い傷が…




翌日、僕は当たり前の様に学校に行った。


流石に私情で休む程の不良ではない。


僕は教室に入り、君を探した。


君は来なかった。




担任が君の話をした。


君に伝えられたまま君の口調・喋り方で、


君の転校について話していた。


僕の頭には何も入って来なかった。


その時は意識がほぼ飛んでいたと思う。


その中でも1つ感じたことがある。


当たり障りのない「視線」。


転校について話した瞬間にクラス全員の


視線と殺意が僕の方に向いた。


とても冷たく闇に包まれた視線と殺意が。


君の役割が僕に回ってくる様な目をして。


僕は君が居なくなってから一生君の役割だ。


僕はそう感じた。


君に恰も言われた様に。


僕は君、以上に酷い扱い方をされた。


扱いにも種類がある。


隠すのが大変なのもあり、面倒な事が多い。


君には暴力のみの扱いだったと思う。


僕には、暴力・性・強要…沢山あった。


きっとヒートアップしたのだろう。


暴力は毎日のようにされた。


人からの暴力程、物理的に痛いものはない。


顔を平気で殴るから隠蔽に困った。


性は主犯の下っ端の同性の人にやられた。


穴に金属バットを入れられた。


それに精子を飲まされた。


全く、僕をなんだと思っているのだろうか。


強要では万引きの常習やパシリなど。


当たり前に犯罪者になってしまった。


僕は、365日…年がら年中常に下僕だった。


僕は君と違って逃げなかった。


逃げれなかった。


この言葉が正しいのかもしれない。


逃げたら卑怯者だから。


辞めた。


それに、逃げる場所なんてなかったから。


そうして僕の学校生活に終了を迎えた。


この頃からだろうか…


僕の頭は君に嫌悪感を抱きながらもう1つの


感情と入り混じりになった。


そして、頭が壊れた。






それから数年が経ったある日君を見つけた。


楽しそうに僕の知らない男と歩いてた。


胸が傷んだ。


その光景を見た僕は変わった。


これまでずっと溜めに溜め込んでいた感情が


爆発し、君への感情がハッキリした。


君を殺める。


この時、君への復讐劇に幕が上がった。




あの日以来、僕の頭の中は君への復讐で


埋まっていた。自分の人生を棒に振り回し、


全力で君への復讐へ心と身体を動かした。


初めに行うことは共犯造りだ。


共犯を集め最終的に僕は死んで共犯には、


僕の代わりとして罰を受けてもらう。


我ながら酷いなと思った時もあった。


でも今はそんな感情はどこか消え去った。


君への復讐で頭の中は沢山なのだ。




「最強で最高な僕の復讐劇だ。」




共犯は思った以上に簡単に見つかった。


ネットで仲良くなった。相手に悪いけど、


共犯として上手く利用させて貰う事にした。


そして翌週の日曜日に会う約束をした。



そして約束の日曜日がやってきた。


この日は大雨が降っていた。


あの頃の僕の気持ちを代弁したような雨が。


「あの…志之さんですか…?…」


「はい。そちらは青㮈さんですか?」


「そうです…今日はお願いします。」


これが彼女と初めて話した会話だ。


彼女は小柄で童顔の可愛い女だった。


彼女は自分の名を栖榮と名乗った。


彼女は僕の協力を受ける上で条件を出した。


「私と付き合って下さい。」


これが彼女が僕に提示した条件。


理由は、よくわからないが殺人に手を染めて


貰うならこれくらいは楽な方だ。


それから僕らはお互いの条件を飲み込み


目的に向かい進むことを決めたのだった。




復讐劇を決めてから数ヶ月が経った。


この数ヶ月の間に共犯を1人増やした。


それに復讐に向け道具などを必死に集めた。


僕は栖榮と荒野と復讐をする事を決めた。


荒野は僕が君を助けていた時から古い友人。


密かな味方だった友達以上の親友だ。


荒野は復讐を手伝う代わりに条件を出した。


「俺の復讐劇にも手を貸せ。」


僕は条件をすぐに飲み込んだ。


僕がこれ以上罪を重ねた所で悲しむ人間は


どこか遠くへ消えたのだから。


それなら積極的に罪を重ねて死ぬだけだ。




やがて僕は日を重ねていくに事に復讐の


気持ちが強くなっていった。それと同時に


僕の君に対する人間味のある感情も…


深く強く変化していた。


僕は複雑な感情を抱えながら復讐という


取り返しの付かないことに手を染めていた。

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