お師匠様はライバルキャラ❤️〜魔導戦記ゲームの主人公娘をボコボコにしたら、懐かれた。

パタパタ

お師匠様爆誕

第0話主人公たちをボコボコにしてしまった

 俺が駆る漆黒の魔導機が主人公の1人、クララの魔導機にサーベルを突き刺す。


 魔導機コックピットのすぐ横、動力パイプを切断。


 機体が命を失うようにアイモニターの光を消失し、ガチャンと魔導機の手足が力を失くし崩れる。


 傍目にはコックピットを貫き、中の人も死んだようにしか見えないだろう。


「なんで!?

 なんで!!!」

「もう嫌!

 こんなの嫌!!」

 残った主人公の2人、アリスとセラが泣き叫ぶ。


 セラは魔導機を反転させて逃げようとしたから、首根っこを掴み引き倒した。

 魔導機がまるで殺されまいともがくように暴れるが、それを意に介せず魔導機の首にある動力パイプを踏み抜く。


 人とは違いそれで死にはしないがメインモニターも損傷し挙動に大きな制限がかかる。


「仲間置いて逃げるたぁ、感心しねぇな」

 俺が吐き捨てるように言い放つ。


 セラは逃げようとしたことに自責の念でもあるのか、それとも諦めてしまったのか。

 魔導機はそれで動きを止めてしまう。


 代わりにではないが、生きている魔導機の通信装置からセラのすすり泣きが聞こえてくる。


 性能的にいえば、彼女らの乗るガンマ型魔導機は1世代前の量産機ではあるが、軍規格のものなので民間よりも性能は圧倒的に高いが俺には関係ない。


 残る1人アリスの魔導機が逃げようか、踏み止まるか悩む素振りを見せるのを挑発するようにちょいちょいと手招き。


「おら、来いよ。

 今なら倒れた仲間2人とも生きてるかもしれねぇぜ?」


 断言するが生きている。


 これはそう、ゲームの悪役のセリフを真似ているだけだ。


 そら、どうだ?

 主人公覚醒イベントだぞ?


「う、うわぁぁああああ!!

 こんな、こんなところでぇぇええええ。

 死んでたまるもんですかぁぁあああ!!」


 声をあげて、不恰好にサーベルを振り上げてアリスの魔導機が突っ込んでくる。

 逃げることより仲間を救うことを選択したようだ。


 よし、それでこそ主人公だ。


 俺は突っ込んできた魔導機を丁寧に蹴り上げ、宙に浮いたところで真横にサーベルを振り抜く。


 機体の足を両断。

 あとは自重で主人公機は大地に沈んだ。


 こうしてあっさりと3機は沈黙、土煙が舞う。


 その土煙がゆっくりと消えたあたりで。

「うっ……ううっ……」

 すすり泣きだけが聞こえてくる。

 やり過ぎたかな、と思うと同時にこうも思う。


 おいおい、大丈夫かよ主人公ども。


 主人公たちを擁護するならば、本来はここまでボコボコにはされない。

 むしろ立場は逆になっていたはずだ。


 3対1、この数の差は非常に大きい。

 人と同じように機体も背後からの攻撃には圧倒的に弱い。

 3機で囲めば容易に対抗できたはずだ。


 もちろん技量の差はある。


 俺の手術前の記憶はすでに曖昧になりよく覚えていないが、魔導機体乗りとしてそれなりの場数はこなしていた。


 愛機がぶっ壊れ、金が無くなり進退極まったがゆえに手術を受けることになったが、根本の技量は損なわれなかった。


 しかしそれ以上に主人公の3人の技量がお粗末だった。


「嫌だ、こんなに……、何も出来ずに終わるなんて……」

「グスグス……」

「もうやだぁ……」


 そんな俺の凶行は彼女たちに深い傷を負わせることになったのだ!


 ヤベェ!!! やっちまった!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る