『ダイヤルを回せ』

石燕の筆(影絵草子)

第1話

空き巣や金庫破りをして生活している

金庫破りの男。

ある日、依頼をされ依頼主の素性の一切を聞かないこと、

必ず開けることを条件に金庫の解錠に挑む。

千通り試したダイヤル番号でも開かない。

最後の運試しとばかりに、ある番号を入れた。

四桁、

『0.2.1.2』

がちゃりと、開く。

中には一枚の離婚届。

場面が変わり、どこかの家のドアが開く。

扉の横にあるプレートには、

『矢崎香』の名前。

別れた妻が今まさに目の前にいる。

『やっと開いた!』

安堵した表情で、膝をつく。

扉の向こうに見えた妻が少しあきれた顔をして、

優しく微笑む。

『三時間もねばった甲斐があったというものだ』

心の鍵が開いた瞬間だった。

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『ダイヤルを回せ』 石燕の筆(影絵草子) @masingan

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