『円卓遊戯』
石燕の筆(影絵草子)
第1話
商社に勤める綿貫はギャンブルに目がない。
競馬や競輪はもちろんのこと暇があれば会社を休んででもパチンコに行く嵌まりようだ。
しかしギャンブルで借金をこさえた綿貫は金もないし、どうしようかと思ってると怪しい男に道端で声をかけられた。
誘われるまま雑居ビルの階段をおりていき扉を開けると数人の古めかしい民族衣装を着た男たちが机に向かって何かをしている。
机に座るよう指示され言われたとおりに座ると何をするのか説明もなく案内してくれた男は奥に引っ込んでしまう。
何をすればいいのかと男たちに聞くが、男たちは何もこたえない。
ただ、ひたすらに数字を言い合っている。
男は三人いて、まずひげ面の男が98というと太った男が97という。そして老人が96という。
しかし暇潰しにはちょうどいいかと最後の老人に続いて自分も数字を言うことにした。
途中参加は認められるのかと思ったが男たちは自分が参加したことをとがめもせずに自分を含めた形でゲームは続く。
50を過ぎたあたりでなんだか体が妙にだるくなっていく気がした。
気のせいかと思ったものの数字が減っていくたびに体から熱がうばわれていく。
とうとう30を切るとめまいと吐き気に襲われた。
このままじゃマズイとある瞬間に
「100」と叫び三人の男が円卓を手のひらで叩きながら、一斉にこちらを向いてチッと小さく舌打ちするとかき消すようにいなくなってしまう。
そのとたんに強烈なめまいがしてふと気づくとベッドの上に寝かされていた。
隣には看護婦がいて、
「気づかれましたか。一時期危ない状態だったんですよ。生死の境をさまよって。でもバイタルが正常値にいきなり戻って、吃驚しました」
看護婦に聞けばいきなり路上で倒れて病院に運び込まれたらしい。念のため検査入院を勧められた。
『円卓遊戯』 石燕の筆(影絵草子) @masingan
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