第48話 お見通し! お姉様は侵入者
帰宅後、
というのも、当初の計画にはなかったはずの動きをされたせいで、
「
だから、あの行動もきっと2人が付き合っていると信じ込んだ上で、背中を押そうとしてくれた結果ではあると思っている。
ただ、玲奈は計画をきちんと練るタイプの人間であると同時に、計画外のことに対処することが苦手でもあった。
だから、全てを知られた時にパニックになって言ってしまったのだ。『全部演技だから』と。
もちろん、ペロペロだのチューだのは完全な嘘だ。それでも、普段のキャラに似合わないことを口走った記憶がある以上、いつそれを言われるか気が気でなかったわけで――――――――――――。
「どうせ思い切るなら正直になりなさいよ、私」
もっと瑞斗のことを知りたい。彼にも自分と同じ気持ちになって欲しい。
それらもひっくるめて『演技』という枠に突っ込んでしまったことが、何度思い出しても悔しかった。
このモヤモヤした感情はどうすれば消せるだろう、ポエムでも書き殴ってみようか。
そう考えながら起き上がった彼女は、机の前に座ろうと椅子を引いた瞬間、書き殴る前に机の下からこちらを見ていた人物を椅子の角でぶん殴っていた。
「痛い痛い! レイちゃん、私だから!」
「……あれ、お姉ちゃん?」
「そうそう、お姉ちゃんだからもう殴らないで」
「どうしてお姉ちゃんが私の部屋にいるのよ」
「それはもちろん、愛しの妹の独り言を盗み聞きしようかと――――――――――――」
「まだ殴られ足りないみたいね」
「じょ、冗談冗談! 冗談だからもう殴らないで、さっきので意識飛びかけたんだから……」
そう言いながら頭を守るように丸くなったのは、玲奈の姉の
性格は世話好きで優しいものの、妹を可愛がりすぎるあまりお節介だったり、今回のようにこっそり部屋に忍び込んだりすることも日常茶飯事だ。
玲奈も大好きで尊敬する姉ではあるが、そこらの男なら軽く捻れる玲奈相手にドッキリまがいなことを仕掛けるところだけはどう足掻いても嫌いなままである。
「……ふぅ、落ち着いたわ。ごめんね、お姉ちゃん。不審者かと思って殴っちゃった」
「身を守るためにお姉ちゃんが教えたことを守ってるのは偉いけど、私じゃなかったら死んでたからもう少し手加減してね」
「お姉ちゃん、石頭だものね」
「空手の師範の一番弟子の空手チョップを事故で頭に受けて、逆に全治3ヶ月の怪我をさせたお姉ちゃんだからねっ!」
「ドヤらないで。あの後に私が師範と試合した時、どれだけ気を遣ったことか」
「まあまあ、過去の話は水に流そう妹よ」
「流すか流さないかは被害者が決めることよね?」
いつも通り、自由奔放に通常運転な姉に呆れつつ、確かに昔のことを掘り返しても意味は無いかと心の中で流しておく玲奈。
彼女は椅子に座ってノートを開くと、「勉強するから」と言って遠回しに出ていって欲しいと伝えた。
しかし、それが伝わらなかったのか居座ろうとする日奈に今度はハッキリ言おうと振り返った瞬間、満面の笑みでこちらを見ていた彼女から予想外の質問を投げられて固まってしまうのであった。
「ところで、レイちゃんは何に正直になりたいの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます