『トンネル』

石燕の筆(影絵草子)

第1話

恵美は散歩中にいきなり背後から羽交い締めにされた挙げ句目隠しをされトラックの荷台に放り込まれた。


どれくらい経ったのか目隠しをとられるとそこは施設のような場所で


「アナタにほんじん?」


そう聞かれたのではいとうなずくと外人の男は日本人と聞くと嬉しそうに笑顔になり、彼女を歓迎した。


出された豪勢なご馳走を食べてワインを飲む。

最初は毒でも入ってるのかと疑ったが、毒味のつもりなのか先に外人が食べているところを見ると毒は入ってないようだった。


施設には日本人は自分一人らしかった。


ここどこなのか聞こうとしたが、なんだか恐くて聞けなかった。


数日をそこで過ごして施設での暮らしにも慣れた頃、エマというフランス人の女の子と友達になった。


エマにここはなんなのかを聞くと生存者のための施設らしい。

生存者とはなんなのかと問うと、よくわからないという。


やがてさらに数日経つと、エマはトラックでどこかに運ばれていった。


その夜、恵美は施設を抜け出すことにした。

驚くほど警備は手薄で簡単に抜け出すことができた。

途中トンネルがあったのでそこを抜け出すと白い光に包まれた。


「おい、しっかりしろ」


そんな声に目を覚ますと懐中電灯を手にした数人が自分の周りを取り囲み安否を確認している様子であった。


見渡すとそこは路地裏のようなところだった。


「良かった、良かった」


そう言うと男たちは何があったのか説明した。


「我々はある国が開発した爆弾の軌道をそらしたが、かわしきれなかったこの町が爆撃された。生存者を探しているときに君を見つけた」


あちこちが痛い。見ると膝や顔に軽いやけどやすり傷がある。


「ここは危険だ。我々の施設に来なさい」


そう言って男たちは恵美をトラックに乗せて運んでいく。


途中にトンネルがある。

恵美は見覚えがあったがどこで見たのか。よく思い出せない。


軽い睡魔が目蓋を重くさせる。


『疲れたから、少し寝よう』と眠りに落ちる。



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『トンネル』 石燕の筆(影絵草子) @masingan

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