モナ・リザは夢を見る

粟野蒼天

第1話 再開

「好き」


ぼろぼろと涙を流しながらそいつは俺のことを正面から見つめていた。


好きには色々な意味がある。


家族としての好き、友達としての好きそして

恋愛対象としての好き。


きっとこの好きは先に挙げた二つ意味ではないのだろう。


その日、桟四葉かけはしよつばは幼馴染の白海イルカ(♂)に告白された。


*


高校1年の秋、俺はかつて住んでいた町に戻って来ていた。 


高校1年の秋という微妙なタイミングでの引越し、変な噂とかが立たないといいのだが。


ここは田舎だ。田舎とは噂が流れればすぐに

広まる。田舎とは嫌なところだ。


憂鬱だ。そんなことを思いながら俺は転校先の高校へ向かった。


「今日からこのクラスに転校生が来ます」


そう担任の先生が言うと扉の向こうが騒がしくなった。 


扉の向こうからは転校生が男か女かと話している声が聞こえてくる。

 

「さあ、入っておいで」


そう呼ばれ俺は教室の扉を開き教室に入った。


入るとさっきまで騒がしかった教室が途端に静かになった。


黒板に自分の名前を書き俺は自己紹介を始めた。


「桟四葉といいます。小6までこの町に住んでて、それか東京で暮らしていました。よろしくお願いします」


言い終わるとまた教室が騒がしくなった。


「なんだ男かよ」


「女の子が良かった」


「東京いいなー羨ましい」


各々反応は様々で特に男子からは残念そうな声が聞こえてきた。悪かったな男で。


「よ、、、四葉!?」


すると俺の名前を呼ぶ声がした。


その声はやけに耳に残った。透き通ったハスキーボイス。


声の方を見るとそこには、金髪で日本人とはかけ離れた容姿の美少年が立っていた。


そして俺にはその姿に見覚えがあった。


「もしかして、イルカか?」


そう呼ぶとまるで飼い主を見つけた犬のように嬉しそうな顔をした。そいつは俺の幼馴染の白海イルカだった。


イルカとは幼稚園からの付き合いで小さい頃はよく互いの家で遊んだり泊まったりした間柄だ。

 

「戻って来てたんだね!」


「昨日戻ってきたんだよ。まさかお前がこの学校に居るとはな、驚いたよ」


「家から一番近い高校だったからね」


「そっか」


声変わりをした声は聞き慣れないが、よく知る幼馴染が同じクラスにいるのはとても安心した。


するとひとりの女子が話しかけて来た。


「ねぇ桟君とイルカ君ってどんな関係なの?」


「幼馴染なんだ、幼稚園からの」


イルカがそう答えた。


「ヘぇ〜そうなんだ」


コイツ自分から聞いといてなんだその反応。


拍子抜けと言わんばかりな態度だ。


「はいはいみんな静かにして、イルカも嬉しいのは分かったからとにかく席に着いて!桟はイルカの隣の席に座ってくれるか?」


担任の先生がそう言うとクラスはまた静かになった。


俺は言われた通りイルカの隣の席に座った。


「よろしくね四葉」


イルカはそう微笑みかけて来た。


「あぁよろしくな」


憂鬱だった高校生活も少し楽なものになりそうだと四葉はそう思ったのだった。































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