もし明日死ぬとしても、君に決別の言葉はかけられない
数奇
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『お母さん!お母さん!』
夢を見ていた。
昔、俺が見た光景だ。
『もっと声をかけてあげてください!』
『頑張って!澪さん』
『やだよ!こんなの…おかあさん!!!』
5年前に見た、俺にとって一番思い出したくない、ずっと忘れようとしても忘れられない光景。
『残念ですが…澪さんは…』
その日から俺は…不死じゃなくなった。
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『お兄ちゃん…お兄ちゃん起きなよ!遅刻するよ』
眩しい…
目に入ってくる光は、俺が今まで見ていた暗い闇と対比的に、部屋中を照らしている。
目の前にいるのはいつも見慣れた顔…妹だ。
『おはよう…ミナ…今何時?』
『もう7時半だって…急がないと遅刻しちゃうよ!?』
近くにある目覚まし時計に目をやると、確かに時刻は七時半を指していた。
『嘘だろ!?やばい!遅刻でしかねえ!』
身体を起こした俺は、近くにある制服に手をかけた。家から学校までは1時間、始業のチャイムは8:30に鳴る。とにかく急いで着替えていち早く外に出なければならない。
『全く…お兄ちゃんは早く寝るくせに本当に朝は弱いんだから…』
『てゆか、ミナはいいのか?部活の朝練だろ?』
着替えながら、呆れた表情でこちらを見てくるミナに問いかける。
『今日は朝練無いんだよ〜。だから8時に出ればオッケー!』
ミナはそう言いながらにやついた表情でピースをする。ミナは中学でバスケ部に入っていて朝練がある日は7時には家を出る。
『余裕そうでいいな…というかマジでやばい…』
『口動かしてないで早く行きなよ!パンは冷蔵庫入れとくからさ!帰ってきておやつにでも食べてねー』
テーブルに置かれたパンとジャム。ミナが毎朝用意してくれてる物だ。母がいないうちの家庭は一番早く起きるミナが親父と俺の分の朝食を用意してくれる。とは言ってもミナに押しつけている訳ではない。うちの家庭では家事は助け合いで朝食はミナが分担しているだけだ。
『置いといてくれたのに悪いな…とりあえず行ってくるわ…』
『いってらっしゃい。ギリギリまだ間に合うかもね。』
ミナが笑顔で見送ってくれるのを目にしてから、思い切り玄関のドアを開けて外に出た。
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