第9話 僕のパパは偉いんだぞ!(笑)
理解できない現実に直面し、ヒステリックに叫び喚くタニラの隣でアルフレイは思いついたというようにシーラをにらみつける。
「分かったぞ!お前、この屋敷が欲しくて伯爵が死んでから役所のものに金を握らせたな!そうして書類の名義を書き換えたんだろう!分かっているのか、それは犯罪だぞ!調べればそんなこと、すぐに分かる。お前も、お前に協力した役所の人間もただで済むと思うなよ。」
しかし、そんなことは不可能なのだ。なぜなら、書類を偽装するのであれば少なくともその時点での日付のものでないといけない。これは、書類が偽装されないように写しが厳重に管理されているからだ。そのため、過去の書類を書き換えるなどの不正は不可能である。
「いったい、いつまで現実を見ないのですか?よく見てくださいよ、その書類の日付を。私がこの屋敷を手に入れたのはお父様が亡くなる2年も前ですよ、不正なんて不可能です。さて、兵士の皆さん。これでどちらがこの屋敷の正当な持ち主か、はっきりしましたよね。
私の屋敷に居座っているこの人たちをさっさと連れ帰ってくれませんか?これ以上、このような頭のおかしな人たちを置いておきたくないんです。」
「そうだな、これ以上の証拠などありはしないだろう。お前たち、この二人を連れていけ!」
リーダーの掛け声を皮切りに兵士たちはシーラではなく、タニラとアルフレイを捕らえるべく動き出す。
そんな二人は未だに事実に目を向けず、暴れまわっていたため兵士たちに取り押さえられてしまうのだった。
「おい、お前たち離せ!僕を誰と心得ているんだ!私の父は侯爵だぞ!」
「そうよ、アルフレイ様の実家を敵に回して、ただで済むと思っているの!」
そんな二人にシーラは近寄り、今までに溜まっていた文句を言い放つ。
「さて、これで立派な犯罪者となられたお二人ですが、今の気持ちはいかがですか?そんなに睨まないでくださいよ、あなた方の自業自得なんですから。
それに、タニラは今まで一度も帰ってこなかったくせにお父様が死んだ途端に帰ってくるなど恥ずかしくないのですか、遺産目当てだというのが丸わかりです。」
「はっ!養子風情が何を偉そうにしているのよ!お父様の遺産なんだから私が受け取って何が悪いの!これは国が決めたことなのよ、国が!」
タニラは今まで家に帰ってくることもなかったのに、法律で決まっていることだと、完全に開ききっている。
「そうですか、そうであれば私からは何も言うことはありません。それで、どこぞの侯爵様を当てにしている彼女の夫のあなたはどうなんですか?正直、話していてまともな人間に見えないのですが?」
「おい、これをほどけ!僕は侯爵の息子なんだぞ、こんなことをして父が黙っていると思うな!」
シーラは彼との対話を試みるがこちらもタニラと同様に話が通じず、延々と父親の話をしている。二人とも、シーラの話など眼中にないのだった。
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