第8話 負の遺産
「そうよ!遺産よ、遺産!私はお父様から遺産を相続することが出来るただ一人の人間なのだから。どうせ役所が間違えて、この屋敷の名義を私とこいつの二人にしたのでしょ?でもおあいにく様、遺産を相続できるのは夫婦か血縁関係のあるものだけ。
この子は養子だから関係ないのよ!まったく、役所の怠慢にも困ったものね。あとで抗議をいれておかないと。さっ、これで私がこの屋敷の所有者ということが分かったでしょ?さっさとこいつらを連れて行きなさい!」
タニラは手で彼らを払う動作をして追い出そうとするが、報告を行っている兵士の話には続きがあるのだ。
「いえ、そうではありません。確かに、タニラ様は先代の伯爵から遺産を相続していますがこれはすべて借金です。しかも、とんでもない金額の借金です。この屋敷の名義はシーラだけとなっていました。」
そんな彼の報告によってシーラ達を捕らえようとしていた兵士たちの動きは再び止まる。
「はぁ?あなた何を言っているのかしら?お父様の遺産が借金だけ?そんなわけあるはずがないでしょう?ここにある豪華な調度品の数々を見てみなさい!こんな屋敷に住んでいた人間に借金なんてあるはずがないでしょ!」
「し、しかしですね、これは役所で手に入れてきた正式な書類ですので間違いないかと。」
タニラがものすごい形相で報告を行っている兵士をにらみつけ、彼はブルっとしてしまう。しかし、彼は自分の言っていることに間違いはないとリーダーに役所で発行した正式な書類を渡す。
「た、確かに。この屋敷の名義はシーラと書かれている。それにタニラ様の資産には借金としか書かれていない。この書類もどうやら本当のようだし、侵入者は彼女ではなく、あなた達のようですね。」
そんなことを信じられるはずもなく、タニラはリーダーが握っていた書類を奪い取り、確認を行う。
「そんな馬鹿なことがあるはずないじゃない!見せなさい!」
「僕にも見せてくれ!」
タニラだけでなくアルフレイも今回のことには関係があるためタニラが奪い取った書類を一緒に確認する。
「そ、そんな!ありえないわ、どうしてこの屋敷の名義が私になってないのよ!どうして養子であるはずのシーラの名前が書かれているのよ!」
タニラは信じられないと、ただ、ただ、ヒステリックに叫び続ける。その様子はここにいる全員が一瞬だけ、恐ろしく感じてしまうほどだった。しかし、そんな反応を予想できたのか、シーラだけはそんな彼女を冷めた目で見ているのだった。
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