第4話 彼らにとっては今が一番幸せなのかもしれない
「なぜ、私の財産をあなたがまるで自分のように扱うことが出来るのですか?あなたが言う鉄貨一つも私の財産なのであなたの好きにすることはできませんよ。」
すると、彼は笑い出してしまう。もちろん、タニラもそんな彼につられて笑いながら私を卑下している。
「くくっ、あははっ。」
「ふふっ、あなた知らないのね。この国の法律では遺産を相続できるのは夫婦か血のつながりがある人間だけなのよ。頭の足りないあなたに分かりやすく教えてあげると養子であるあなたは遺産を相続する権利はないの。」
そんなことは分かっている、この女は本当にばかだ。未だにこの屋敷を含む財産がお父様の遺産だと信じているのだ。普通はこれだけ莫大な遺産を相続すれば本当に自分の名義になっているのかを調べるだろう。
しかし、彼女たちはそんなことさえ怠ったのだ。だからこそ、彼女たちは知らない。自分たちが引き継いだものが莫大な財産ではなく借金のみだということを。
「そんなことは知っているわ。あなた達こそ、知っているの?遺産放棄は3か月が過ぎてしまえば行うことが出来なくなってしまうことを。3か月が過ぎればどんな理由があったとしても遺産を相続しなければならないのよ。」
私が彼女たちにそんなアドバイスをしてあげると彼女たちは意味が分からないような顔をしていた。彼女たちからすればこの屋敷も何もかも手に入れることが出来たのだ。そんなものを放棄するはずがないと思っているのだろう。
「あなた本当に救えないくらいおバカなのね。こんな立派な屋敷や毎月入ってくる莫大な収入、そんなものを誰が好き好んで手放すというのよ。ねぇ、アルフレイ様。」
「あぁ、その通りだ。余程の頭のおかしい奴しかそんなことは言わないだろう。僕たちは既に夫婦となった身、確かに収入は彼女を当てにしてしまっているが僕は夫として彼女を守ると誓ったんだ!これ以上、君のようなおかしな人間に耳を貸して彼女までおかしくなってしまったら可哀想だ。今すぐに出て行ってくれ!」
「やぁ~、もう~アルフレイ様たら!さっ、あなたはお呼びでないと分かったでしょ。さっさと私たちの屋敷から出ていきなさい。」
全く、こいつらの頭の中は砂糖とお花しかないのだろうか?未だに自分たちの置かれた状況が理解できていないのだ。
「いいえ、出ていくのはあなた達の方です。今すぐに私の屋敷から出ていきなさい。もちろん、この屋敷にあるものはすべて私の財産です。何も持ち去ることは許しません。」
私が本当のことを告げても彼らは一向に引こうとしない。それどころか、逆上する始末だ。
「いい加減にしなさい!この屋敷は私たちのものなのよ!それに、私は伯爵家の当主なのよ、平民のあなたがそんな口をきいて生きていけると思っているのかしら。
今までは一応、元身内だということで我慢してあげていたけど、そんな必要もないわね。あなた達、ここに今すぐ兵士を呼びなさい!この女を連行させるわ!」
タニラのヒステリックな声だけが部屋に響くのであった。
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