第11話 大金請求されますよ?
おかしいとは思っていたんだよな。
ホワイトウルフが群れとはいえ、五十匹も街に出没するなんて。
ウルフ系のモンスターは狼に近い習性だから、一つの群れにいるウルフの数は八匹から十五匹くらいが普通なんじゃ……? って討伐している時もずっと引っかかっていたんだよ。
多くても四十匹は超えない。
せいぜい三十匹半ばがいいところだ。
それなのに、五十匹もの群れが街に出没するってことは、ウルフ系モンスター達が習性を覆すほどの絶対的ボスがいるとしか思えない。
モンスター使いの人間が操っているのか、はたまた最大規模のウルフ系モンスターが森の近くにまで降りてきてしまったのか。
と、俺なりに色々と考えてはいたが、まさか……クラウンホワイトの目撃情報があの洞窟であったとは……。
「クラウンホワイトって、五メートルを超える狼型モンスターのクラウンウルフの中でも、希少種な上に最強クラスのモンスターじゃないですか。……というか、目撃した奴はよく逃げられましたね」
「本当、そうね。……パーティーメンバーを全員、クラウンホワイトに食べられてしまったみたいだけど、よく逃げて街まで戻ってきて、我々に報告してくれたと思うわ」
「…………」
しまった。
全く無事じゃなかったよ。
軽々しく、よく逃げられましたね? なんて言うんじゃなかった。
グリーンさんに、全く無事じゃないけどな? って感じで、釘を刺されちゃったよ。
「うーん……クラウンホワイトか……クラウンホワイトって火属性魔法は弱点だけど、氷属性への耐性抜群だよね? ……天敵じゃん。僕は火属性魔法がからっきしダメだし。あ、でもプライスは火属性魔法得意だ」
「いやいやいや……得意って言っても、凡人よりはってだけだから。とてもじゃないけど、クラウンホワイト討伐出来るレベルじゃねえよ。コンフラグレイションまでしか使えないから」
しかも俺の場合、魔力量はそこら辺の凡人並にしか無いから火属性の中級魔法、コンフラグレイションなんて使ったら、五発ぐらいで魔力切れを起こすはず。
それでどうやってクラウンホワイトを倒せって言うんだ? アザレンカは?
「アザレンカ、俺達二人で討伐しようだなんて、絶対に考えるなよ? 大人しく一旦王都に戻って、火属性魔法のスペシャリスト達を連れてくるしかない」
「えー……でも、良いの? 火属性魔法のスペシャリストって言ったら、プライスのお父さんや嫌いな方のお姉さんにも頼まないとじゃない? ……僕も嫌なんだけど。あの人達に何かを頼むと色々と嫌味を言われるし」
「うっ……それは……」
嫌なこと言うなよ……。
思い出さないようにしていたのに。
「……プライスさん? ご気分でも悪いんですか? お顔が青ざめていますけど?」
「ははっ……いえ……」
「いやープライスのお父さんと上の方のお姉さんって、嫌味っぽいんですよ。あんまり頼みたくないというか、色々と恩を着せられそうで……」
「は、はあ……そうだったんですか……」
辞めろよ、アザレンカ。
一応俺の親父、あれでも王国騎士団のトップである騎士王だぞ。
嫌いな方の姉も、一応若手騎士じゃ有望株らしいし。
周囲には、立派な母父娘二人と落ちこぼれの俺で、ベッツ家は一生懸命通しているんだからさ。
……まあ、でも。
「俺の親父やあのクソ姉に頼むとなると、多分結構な金かかりますよ? とんでもない大金を請求されるかもしれません」
「実の家族が、ここまで言うんですよ? グリーンさん? 本当に大金請求されますよ?」
俺達二人は、グリーンさんに忠告した。
間違いなく、大金を請求されると。
金持ってんのに、金にうるさい守銭奴二人だからな。
ノブレス・オブリージュなんてものは、奴らには全く無いと言っていいだろう。
しかし、グリーンさんは。
「……領主として、ラウンドフォレストの平和には変えられません。我々もベッツ家には劣りますが、貴族です。お金ならお支払いします」
とはっきり答えた。
……仕方ない、ここまで本気なら。
「分かりました。明日、王都に戻ってクラウンホワイトの討伐を頼んでみます。条件や決行日も明日にはお伝え出来るように……」
「ちょっと待ってよ。ずっと黙って聞いてたけど、火の聖剣で何とかならないの? アザレンカ?」
突然、黙って話を聞いていたノバが、アザレンカに討伐を求めだした。
おっと……? これはマズイぞ?
「えっ? あっ……いやーそれは……」
「火属性魔法がダメでも、問題ないよね? 火の聖剣ならクラウンホワイトを討伐出来るんじゃない?」
「うーん……えーと……」
「勇者でしょ!? こんな時助けるのが勇者なんじゃないのアザレンカ!?」
「ち、違うんだ、ノバ! まず報告! 報告が先なんだ! 報告しないで勝手に色々やるとうるさいのも、俺の家族なんだよ! な、なあ? アザレンカ?」
「そ、そうだね! いやー本当にベッツ家なんなの!? って感じだよ! アハハ!」
「……ふーん」
俺もアザレンカも、あんまりアイツらを悪く言う資格無いな。
アイツらの性格の悪さを利用して、こういう場面を何回も切り抜けてきたんだからさ。
ハハ……バレたらどうしよう。
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