[じゅ〜いちっ]姉と兄と妹で……あと末っ子に弟くん
僕に向かって、美咲が呆れたような哀れみの視線をよこす。
「あちゃぁ。もしかして、未だに私達の事情を話せてなかったの?」
「……だって僕、めっちゃ避けられてたし……さっきまでメッセージメールすら読んでもらえそうもなかったし……」
「しゃーないなぁ、もうっ。さっさと話しちゃいなよ、お兄。それじゃぁ
「?? ……もちろんよ」
「ほらお兄……
「うん、……わかったよ」
小声で付け足された妹の、鈍くさすぎ〜って言葉がグサリと刺さる。
すっかり定着している形容詞に反感の意を込めて、妹をジロリと見やる。
何か文句でも? っていう視線が返された。
ううっ、反論の余地もございません。
小首をかしげる夕原さん。
切り揃えられた前髪がサラリと揺れる仕草が可愛いです。
「それで、何の話??」
つぶらな瞳を細めて
すんません……久しぶりに間近で会えたものだから思考が脱線したんだよ。
べつに
「僕と美咲と、結城先生は血の繋がった
それが僕たち家族の現状だ。
美咲も
「そうそう。私たち三人とも、未亡人だったお母さんが再婚するにあたって春田の
「えぇっと……ってことは……美術部の結城先生は、春田くんの……お姉さん!?」
「はい、正解。私たち、間違いなく
「え……でも、名字が……」
「ああ。お
「えっ、でも……ハグとか頭ナデナデとか、姉弟でもやり過ぎっていうか……ちょっと不自然じゃないかしら……」
それに対しウンウン激しく同意と、首を縦に振る我が妹よ。
「ホントそう思いますよねぇ。私もゲンナリしてますもん。姉はめちゃくちゃブラコンなので……お兄限定でひっつき虫になるんです。アレでも校内だからって控えめにしてたらしいんですけれどねぇ……」
言葉通りのゲンナリな表情で説明がなされる。
おいおい、当事者の僕を差し置いてゲンナリされても困るんだ。
是非とも
夕原さんの表情がちょっと引きつっているのは、気のせいだろうか。
気のせいだと思いたい。
「それに貴方たちって、今までそんな素振りをしたことがなかったよね……誰にも言っていなかったの?」
夕原さんが重ねた疑問に美咲が答える。
「お姉が勝手すぎるのよ。私たちが理事長の親戚だっていう話が広まるのも、新入り教師のお姉が私たちと血の繋がりがあるってバレるのも、やり
「うん、そんな感じ。僕たちも理事長と親戚だって気を使われたりするのは嫌だったから、お互いの利害関係が一致していたんだよ。家族会議において満場一致でそのほうが良いんじゃないかってなったんだ。でも、夕原さんには早めに説明をしておくべきだったね……ごめん?」
そういう設定ならば
我慢に我慢をしていたが、人目がないとタガが外れるらしかった。
それであんなことに……あの美術室で誤解を招いた大惨事。
僕も、姉のブラコンさ加減を甘くみていたんだよ。
幼少期からずっとあんな感じでなれてしまっていたのも、その自覚がなかったのも
末っ子の弟も可愛がっているが、なぜか僕に対してだけオカシクなるのはイタダケない。
因みに姉夫妻は恋愛結婚だし、新婚熱々なのである。
僕などにかまわず、旦那さまとイチャイチャしておけば良いのに……
うん、全くもって理解不能な思考回路なのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます