短編 ナノナイヒト

@tamaki_kouichi

『青色』

 大学生の僕は毎晩友人達と夜通し遊び、最後に博多系とんこつラーメンを食べて締めるのが鉄板のルーティンとなっていた。

 同じ食べ物、今指しているものはとんこつラーメンだが食べる時間帯や環境によっては同じものでも美味しくも不味くもなる。誰しもがこういう経験は持っていると思う。

 例えばただのサンドイッチでも家で食べるのと外にピクニックで食べるのとではやはり味が、旨味が、深みや体への染み方までもが変わってくるだろう。反対に会社の食堂、学校の食堂などはどこか窮屈に感じ、喉に滑り止めでもあるかのように簡単には喉を通ってはくれない。

 博多とんこつラーメンはやはり夜中を遊び尽くした朝に限る。

「始発まであとどれくらいだぁ?」

「んなもんで自分で調べろや。」

「こちとらパズドラのゲリラダンジョン周回してて充電ないんですわぁ。」

「はいはい。2人がゴタゴタしているうちに調べときましたよー。んん〜あと30分はあるな。なにする?」

 僕達はいつもお決まりの3人で遊んでいるのだが、たっつんはいつも遊んでいる時も色んな携帯アプリを常に歩き回っていて朝方には充電切れ、今年の誕生日プレゼントはモバイルバッテリーにしてあげよう。はっしーはそんなたっつんに対してイライラしている、いやどちらかというと眠たいと機嫌が悪い。

「30分…微妙な時間だね、マックとかいく?」

「お前今ラーメン食ったよな?胃袋の中に四次元ポケットでも入ってんの?」

「四次元ポケットなんてもん持ってたらどこでもドアで家に帰ってるよぉ。」

「うわー、めちゃめちゃ綺麗な論破だねそれ。」

「とりあえず止まってても寒いし、ちょっと歩く?」

 くだらない話をしながら15分くらい歩くと気づくと河川敷の堤防沿いを歩いていた。

「おいたつや。お前寒いから歩こうとか言ったくせにバカ寒いじゃねーか!」

「あははっ!でもここからの景色好きなんだよねぇ。」

「お前のそのセリフが寒いわ!ただの川じゃねぇか。」

 確かに寒い。そうやって寝ぼけた体を冬の痛い風が僕の皮膚をつつき、無理矢理眠気から引き剥がそうとしてくる。

 そうしていると街灯しかない真っ暗な景色にぼんやりと明かりが舞い込み、黒、紺、青とグラデーションを描き始めた。

「たっつん…俺わかるよ。この景色の良さ。」

 太陽がまだ姿は見えないほどの高さ、直接入ってこない光は空に反射し、街に反射し、川に反射し青色の光が今この瞬間を照らしている。

 僕は二人の目を見て話しかけると彼らの目は青く輝いて見えた。きっと僕の目も青色に光っている。

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