第2話 跡継ぎを安易に変えないこと

 劉備は荊州の劉表の下で、彼の手となり足となることで信頼を得ていった。

 数年で彼の地位は瞬く間に上がっていき、荊州内での彼はもはや『劉表の右腕』とも言ってよい立場になっていた。


 が、それをよく思わない輩がいた。


蔡瑁さいぼう』と言う名の男だ。


 彼は劉表の奥方である『さい』の弟である。そして、そのことが劉備を憎む理由にもなっていた。


 ―――現在、荊州には一つ大きな問題が発生している。


『跡継ぎ問題』である。


 劉表には二人の腹違いの息子がいる。


 長男:『劉琦りゅうき』(先妻との子)

 次男:『劉琮りゅうそう』(蔡瑁さいぼうの姉であるさいとの子)


 通常、跡を継ぐのは長男であり、それは一種の決まりというモノ。

 そのため、此度の場合は長男である『劉琦りゅうき』が跡を継ぐのが筋なのであるが、それを反対する者が多い。

 理由は、劉琦りゅうきが『病弱』であったからだ。


「頭も良いし、品もある、しかし病弱なのはよろしくない。」


「健康でなければ、今の乱世は乗り越えられない」


「劉琦様では劉琮りゅうそう様に跡を継がせるべきだ」


 この意見に劉表は「一理ある」と思い悩んでいた。

 そこで彼は信頼している劉備に、この『跡継ぎ問題』を相談してみた。

 すると劉備は


「都合によって変えることは国を乱す原因になるから、長男である劉琦様が継ぐべき」


 と的確なアドバイスをした。

 このアドバイスに劉表は納得して褒め称えたが、それを聞いた蔡瑁さいぼうと姉であるさいは悪魔の囁きだと思った。


((このままでは劉琮りゅうそうが跡継ぎになれない!!!))


((なぜ劉琮りゅうそうが跡継ぎになれないのか?))


((それは全部、劉備が悪い!!!))


 そう結論付けた二人は劉備暗殺に乗り出しすことにしたのであった。

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