陰キャがお互いに身体と心を貪る

@tokyonishiakitani

第1話 陰キャの彼氏彼女

 これは俺が大学生の頃の話。

 俺には付き合っている彼女がいた。だけど、俺たちはいわゆる陽キャと言われる人種ではない。地味で目立たない者同士だった。そんな2人が付き合っていても、誰も気にしないだろうと思う。だけどもしかしたら、地味2人が付き合ってるよという噂になることもあるかもしれない。陰口で。

 大学で堂々として良いのは陽キャのみ。それは暗黙のルールで、だからみんな陽キャなやつと、陽キャなフリしたやつで大学は溢れかえっていた。だけど、俺と彼女はそんな風潮には乗り切れず、地味なまま過ごした。

 地味な俺たちは、自然と惹かれあい、気が付くと手をつなぐようになっていた。多分、寂しさを埋め合うための関係だったように思う。本当は陽キャに憧れていたのに、自分にはなれないと諦め、静かでいようと人生すらも諦めていた2人だったから。

 そんな俺たちは、大学内ではなるべく一緒にいないようにした。すれ違った時には軽く会釈をするだけ、友だちグループで一緒にいる時も、隣には立たないようにした。だけど、何かの拍子に肩が触れ合ったり、手が触れ合ったりということはしていた。それはもう、彼女に触れあいたいのを我慢できなくなった時に。彼女には言ってはいなかったけど、彼女から触れてきたりすることもあったので、おそらく同じ気持ちだったのだと思う。俺たちは大学で良い子にしようとしていたけれど、小中高時代も同じだ。親の言うことを聞いて、自分の考えは、なるべく外に出さないように生きてきた。

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