関係は変わるもの
シヨゥ
第1話
「今の人間関係なんて今にしかないんだから悩むだけムダムダ」
人間関係に悩んで相談をすると彼は真剣に取り合ってくれなかった。
「今にしかないってそんなことないよ」
「いやいやそういうもんなんだって。今の関係が続くわけないんだから」
やはり真剣に取り合ってくれない。そんな態度にムッと来た。だからといって言葉にしたくなくてその目をじっと見つめることにした。
「分かった分かった。説明するって。だからそんな目で見ないでくれ」
やっと取り合ってもらえる。その喜びに勝利を確信した。
「君が抱える問題を手っ取り早く解決するなら距離をおくこと。出来るならその関係が生まれる場所から離れることだな」
「どうして?」
「少しでも離れてしまえば縁が遠のくんだから人間関係も変化するってもんだ。学生時代を思い出してみろ。仲良しグループの中で卒業後もずっと関係性が変わらなかった奴がどれだけ居るよ?」
その問いかけに何人もの顔が浮かんでは消えていく。
「どんなに仲良くても、離れてしまえばそれまで通りなんてことにはいかないんだ。それが嫌いな奴ならなおさらさ」
「そっか」
「だから今の人間関係なんて今だけのものと思えばいいんだ。そうしたら少しは心が軽くなる。それでもダメなら」
「離れてしまえばいいんだね」
「そういうこと。ある程度耐えてそれでも改善しないなら離れちまえ」
なんだかすっと心が軽くなった。そんな気がする。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「あとひとつ質問いいかな?」
「いいぞ」
「私達の関係も今だけのもの、なのかな?」
そう問いかけると少し考える素振りした彼は、
「そらそうだろう」
とぶっきらぼうに答えた。そして、
「もっと深い仲に変わっていくんだからな」
そう言って顔をそらす彼。耳は真っ赤でなんだかかわいい。
「笑うなよ」
「ごめんごめん。でもそれなら安心だね」
どうか末永くそばに居てほしい。その横顔を見つつそう思うのだった。
関係は変わるもの シヨゥ @Shiyoxu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます