第2話
「これからおれたちはジーナの家に行くが、もう一度念のために言っておくぞ。余計なことを周りに話すなよ?」
ロバートは、私に鋭い視線を向けながら言った。
「……はい」
私は震える声で、何とか返事をした。
「あ、そうそう……、あなたのことは、私のお友達に見張らせておくから、私たちがいない隙に余計なことをしても、すぐにばれるわよ」
ジーナが歪んだ笑みを浮かべ、私にそう言った。
そして、二人は仲良く家から出て行った。
なんなのよ……、これは……。
私はどうして、こんな目に遭っているの?
両親の反対を押し切って、私はロバートと婚約した。
平民であるロバートとの婚約に、両親は最後まで反対していた。
でも、最後には折れてくれた。
というよりも、呆れて、あとは好きにしろ、という感じだった。
その時両親とは喧嘩をして、それ以降口をきいていない。
私は現在、屋敷から遠く離れたところにある、別荘で一人で暮らしている。
頼れる人は、誰もいない。
最後の手段として、両親に頼るというのもあるかもしれないけれど、気が進まない。
それに、ロバートのことが怖かったので、私は彼の言うことを聞くつもりだ。
ジーナの友人たちの監視もあるし、下手な行動はできない。
バレた時のことを考えると、怖くて何もできなかった……。
ロバートが言っていた、世間体を気にしているというのは、おそらく本当のことだろう。
でも彼は、もう一つ私と婚約破棄しない理由がある。
それは、お金の問題だ。
私は現在別荘で一人で暮らしているけれど、お金の援助は受けている。
だから私との関係を続けていれば、彼はお金に困ることはないというわけだ。
この別荘とお金の援助が、両親がかけてくれた情けである。
情けというより、これも世間体を気にしてのことだけれど……。
でもこればかりは、文句は言えないし、正直私も助かっている。
あの時両親の言うことを聞いていれば、と思わなくもない。
でも、それでうまくいったという保証もない。
私はもう少しで、とんでもない相手と政略結婚しそうになっていた。
その相手は、あまりいい噂を聞かない人物で、女性の扱いがひどいことで有名だった。
その時は、その人が違う相手を見つけたので私は彼と婚約せずに済んだけれど、もし婚約していたらと思うとぞっとする。
だから私は、あの家で政略結婚の道具になることを恐れ、婚約を急いでいた。
そんな時に、ロバートと出会い、彼と婚約した。
今思えば、私は焦っていたのかもしれない。
焦っていたから、ロバートの本質を見誤っていたのだと思う。
令嬢として未熟な考えだということはわかっている。
しかしこれでも、政略結婚の道具となることも、私は一応覚悟している。
ただ、相手がまともでない場合は話が別である。
だから、早くあの家を出たくて、私は焦っていた。
そしてそれが、こんな事態を招いてしまった。
結局は、私が愚かだったせいだ……。
それに、ジーナとロバートと私の関係が、ずっとこのままだとは思えない。
実は、ロバートが愛しているというジーナには、ある噂があるのだった。
それも、いい噂ではなく、悪い噂が……。
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