第434話 春はパンパン!

 パンパン! パパン! スパパンパーン!


 厳しい冬が終わり、多くの魔物が暮らす魔の森にも春が訪れた。

 ゴブリン一郎が保護したゴブリンたちも冬眠から目覚めて、無事に春を迎えたことを歓喜していた。

 特に今年は、秋に用意した保存食と薪が十分確保できたので、誰一人として死なずにいた。

 これは、魔の森で暮らしている最弱者のゴブリンにとって、奇跡に近かった。


 パンパン! パパン! スパパンパーン!


 そして、春はゴブリンにとって繁殖の季節。

 万年発情期の人間とは異なり、普段は性の喜びに無関心のゴブリンたちも、春の季節は別。

 発情したゴブリンは他人の目も憚らず、至ところで子作りに励んでいた。


 パンパン! パパン! スパパンパーン!


 それはゴブリン一郎も同じ。

 特に彼は無力なゴブリンに投げ槍の技術と、食料保存の技術を伝えた、言わば英雄。

 彼が歩けばメスのゴブリンが「キャー! 一郎さん、抱いてーー!」と、フェロモン全開で近寄ってくるので、ハッスル! ハッスル! 所謂、ハーレムである。


 パンパン! パパン! スパパンパーン!


 よくR18指定のゴブリンのネタに、性別はオスだけで人間の女性に種付けして繁殖するというネタがある。

 しかも、プレイ内容が何故か乱交パーティーで、人間またはエルフの女性が「くっ! 殺せ」と涙を流している。


 だけど、生物学的に考えて欲しい。一番人間のDNAに近い猿でも異種族間で妊娠しないのに、ゴブリンと人間が交尾して子供が出来ると思いますか? しかも、相手は別銀河から来た生物ですよ。


 ルディが確かめるべく、このネタをゴブリン一郎に話した時、「そのネタを最初に思い付いた変態は誰だ? 風評被害だ!」と彼は憤っていた。


 パンパン! パパン! スパパンパーン!


 先程から聞こえる擬音は、ゴブリンが交尾している時の音。

 乳繰り合わずにブスッと挿入、射精するまで僅か5秒。

 だけど、早漏と言って笑ってはいけない。何故なら、交尾時間は生物によって異なるからだ。

 ガラガラヘビの平均は23時間、ゴリラの平均は1分36秒。ゴリラ、意外に早いな!

 なお、トラも交尾の時間が短いけれど、あの巨大猫は一日で100発以上射精する。


 ゴブリンの交尾時間の平均が約5.06秒なので、世界一早漏と言われるコモンマーモセットの約5.52秒を超える、宇宙一の早さである。


 春は恋の季節、パンパン! パパン! スパパンパーン!




 ゴブリン一郎と彼の三人の舎弟は、食料を求めて森の中を探索していた。


「それにしても、テメェはモテモテだなぁ」


 一郎に話し掛けて来た一回り大きいゴブリンの名は、タケーシ。

 

「んだんだ。村の全員とパンパンしやがってコノヤロウ」


 次に話し掛けて来たのは、出っ歯が特徴のスネーオ。


「ほんと、羨ましいぜ」


 最後に羨ましそうに言ったのは、ひょろっとしたノービタ。

 彼らの名前は、ゴブリン一郎に名前があるのを羨ましがったゴブリンたちが、各々自分の名前を付けていた。

 なお、喋り方が悪いのは、何時もの事である。


「けっ! お前はシズちゃんと毎日ヤってるじゃねえか」

「えへへ」


 タケーシがからかうと、ノービタが照れていた。

 そのシズちゃんは、ゴブリン一郎ともヤっている。


「ごちゃごちゃ喋ってないで、食い物を探せ」


 前で話を聞いていたゴブリン一郎が三人を叱ると、彼らは申し訳ねえと、頭を下げて食べ物を探し始めた。


「タラの芽、見つけたぜ」

「肉、落ちてねえのかよ」

「一郎、魚釣ろうぜ」


 まだ残雪の残る時期なので、森に生えている食料はそれほどない。

 ノービタの言う通り、湖に行って魚でも釣ろうかと一郎が悩んでいると、タケーシが新芽を食べている鹿の家族を発見した。




「一郎、アレを見やがれ」


 小声で話すタケーシに、ゴブリン一郎も鹿に気付いて身を伏せた。


「丁度良い、アレを殺る。だが、俺たちゃ風上に居る。鹿は臭いに敏感だから、スネーオ、テメエはここで待て。残りは俺と一緒に付いて来い」

「おいおい、何で俺だけが残るんだ? ぶっ殺すぞ!」


 スネーオが抗議すると、ゴブリン一郎が「ああん?」と睨んだ。


「ガタガタ抜かすんじゃねえ! 俺たちが風下に移動したら、テメエは大声を出せ。そうしたら鹿が逃げるから、そこを槍でぶっ刺すんだ、分かったか?」

「「「おおーー!」」」


 作戦を聞いて、三人がスゲエと驚く。


「馬鹿野郎、声がデケエ。獲物が逃げちまうだろうが、静かにしやがれ」


 ゴブリン一郎が叱ると、三人が慌てて手で口を押さえて、静かになった。


「それじゃ行くぞ。準備ができたら槍を振る。それが合図だ」


 スネーオがコクコクと無言で頷き、ゴブリン一郎とタケーシ、ノビータが移動した。




 無事に鹿の親子を仕留めた四人が村に帰ると、村のゴブリンたちが大はしゃぎで彼らを迎えた。

 村の人数はゴブリン一郎を含めて20人。その半数がメスと子供のゴブリン。

 他にもオスのゴブリンは居るけど、彼らは村の防衛に回しているので、主に狩をするのはゴブリン一郎と三人のゴブリンだった。


「捕ったぞーー!」

「きゃー抱いてーー!」


 タケーシが倒した鹿を掲げると、発情期のメスたちがゴブリン一郎たちを取り囲んだ。


「待て待て! 後でしてやるから先に獲物を捌かせろ、犯すぞ‼」

「きゃー犯してーー!」


 春は狂った季節。

 ゴブリン一郎たちは鹿を捌いた後、繁殖するために頑張った。


 パンパン! パパン! スパパンパーン!




※ 下ネタ、ゴメン。

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