拝啓、地獄の底より

モルモット@実験中

第零章 拝啓、地獄の世界から

第零話 開戦(1)

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登場人物:

九番:主人公。クソガキッズ

一番:自虐青年

二番:ギャル

三番:天然ロリ

四番:関西弁のおっさん

五番:眼鏡が無いと落ち着かない人

六番:ひ弱な女性。ひよよさん

七番:狂犬姉貴

八番:感じのいい男性(笑)

自称神様:自分を神だと思い込んでいる一般男性


一応登場人物を記載しました。

邪魔だと思ったら消すんでコメントしてください。(コメ稼ぎ)

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 気がついたときには真っ白な部屋にいた。


 どこまでも白く何も無い。床、壁、天井全てが白に染まっており、果たしてどれほどの広さなのか、大きさなのか掴めない。ただ床は確かに存在する。その証拠に自分の足で地面を押す感覚がある。


 平衡感覚を掻き乱すこの空間に似合わない異物が。自分の存在がその内の1つだ。

 自分は木製の椅子に座っている。随分と古びており、所どころ腐り落ちており、穴さえ開いている。何故壊れずに座れているのか不思議なくらいだ。

 それと全くもって似つかわしくない目の前には真っ黒な丸い机がある。円卓と呼ばれるものだと理解する。触れても何の材質か検討がつかない。すべすべしている。机には白文字で九と書かれていた。

 

インテリアのチョイスに壊れかけの椅子と黒色の大理石(?)の机は不揃いのように思えた。


 ついでに服装も変だ。服もまた全身白ずくめ。足は素足。これに着替えた覚えが無い。いや、服だけじゃ無い。自分が何故こんな奇妙な場所にいるのか全くもって心当たりが無い。


 というかそもそも──記憶が無い。


 ここ直近だけじゃない。自分が何者なのか、名前は、年齢は……。何も思い出せない。自分の存在が希薄になってしまったような感覚に陥る。


 辺りを見渡すと自分の他に男女9人。全員の顔を確認するが、誰1人として知り合いだとかの心当たりは無かった。

 その内、8人は自分と同じように椅子に座っており、周囲の状況の確認をしているようだった。その誰もが困惑した表情を浮かべていた。服装は自分と同じように白一色だった。それぞれの机には自分と同様に数字が同様に刻まれているようで、左隣は八、右隣は一。八の奥は七、一の奥は二。というように円順列に数字が刻まれているようだった。


 残りの1人は椅子に座っておらず、円卓の上にあぐらを掻いている。膝の上に肘を乗せ、手に顎を乗せて目を瞑っている。寝ているのだろうか。


「おい、ここどこだよ!!」


 突如として粗雑な叫び声が響き、思わず体を縮めた。円卓の席に着いていた1人が叫ぶ。七の番号の刻まれた場所に座っている女性だった。その目鋭い目つきは、中心の男を貫かんと睨みつけていた。確かにこの中で唯一椅子に座っておらず、服装も違い、パーティ会場のドレスコードのような黒を基調とした服装をしている。事情を知っていそうな人物だと考えるのはそれほどおかしな話しではなく、寧ろ当然とさえ言える。


 中心の男は目を開き、「お」と声を上げ、立ち上がる。服装はスーツのような黒服に身を包んでいる。自然と見上げる形になる。


「やあやあ、全員お目覚めのようで。……では改めまして、おはようございます」


 まるで本当の寝起きのように男は大きく伸びをすると軽快な口調でそう言って、丁寧な所作でお辞儀をする。


「だからどこだって聞いてんだよ!!」


 どこか呑気な雰囲気での対応と回答になっていない言葉が気に入らなかったのか、七番の女が怒声を上げる。


 他の人間の様子をチラリと見る。

 円卓の内、明らかに気の弱そうな女性は──六番の数字が刻まれた──「ヒッ」と短い悲鳴を上げて、ビクッと体を震わせていた。

 隣からは「野蛮人じゃん」と静かな呟きが聞こえる。その声は右隣である一番から聞こえた。そちらの方を見ると目が合い、あっち側がふいと視線を逸らす。


 大半は静かに傍観している。というよりも状況を理解するために脳のリソースを割いていると言った方が正しいかもしれない。見知った人間が誰1人としていない。そもそも記憶さえない心許ない現状では疑心暗鬼になって当然だ。

 

 すると男が声を上げる。四番の男だ。


「おうおう、まぁ姉ちゃん落ち着けや。てかどちら様?おたくら。知らん場所やし、記憶も無いし、わし立ち上がれんのやけど」


 そう言われて立ち上がろうとしても本当に立ち上がれない。机を持ちながら立ち上がろうと試みても徒労に終わる。椅子に貼り付けられているとかじゃない。足には力が確かに入っているのに。なんとも不思議な感覚だ。他の人間も試しているようで結果は誰もが同様らしかった。一種の拘束状態になっているらしい。


 自身の体が動かないことによって急に不安に駆られる。この現状が思っていたよりも危機的状況なのでは無いだろうか、と。


 だがこの空間で唯一であろう自由に動き回る存在が一人。円卓の上に立っている人物だ。目的が分からないが目の前の男がこの状況を作りだしたのだろうか。情報が少なすぎて断言はできない。

 彼は、僕らが困惑している様子を嬉しそうにうんうんと頷きながら嬉しそうに笑みを浮かべている。


「何がおかしいんだよテメェ!!」


 その様子を見て声を荒げるのはまたもや七番の女性。ヒートアップする彼女をよそに彼は至って冷静に、淡々と告げる。



「これは失敬。では僭越ながら私が自己紹介を。──私は神です。貴方方には生き返りを賭けて殺し合いをして貰います」



「………………」


 全員が言葉を失っていた。スーツの男改め──自称神様が言った事が突拍子もない発現に脳が混乱をきたしていた。すごいドヤ顔で、しかも声も決めてきたのだが。


 重苦しい沈黙に耐えきれずにその姿勢は数秒と経たずに消える。


「…………え、ここってなにか反応する場所ですよね?えぇ!?とか何言ってんだテメェ!?とか、どういうことか説明しろよ!みたいな」


 僕らの反応が予想外だったらしく、自称神様は焦り始めた。


「ほら、いいですよ恥ずかしがらないで!……リアクションください……何でもいいので…………ウェルカムですよウェルカム……」


 ついには反応を催促しはじめ、やがて心が折れたのか顔を覆ってしゃがみ込んだ。自分から催促してどうするんだよ、てか泣くなよと内心思った。が、彼の言っている事は正しかった。事実目の前の人間──もと自称神様が何故僕らに殺し合いをさせようとしているのか理解できない。


 自称神は「あれぇ?おっかしいなぁ。こういう反応になるなんて書いてないんだけどなぁ」とか言いながら円卓の机を人差し指でなぞっていじけている。

 なんだコイツ。本当に神かよ。説明を求めようと僕が口を開くよりも早く、


「くだらねぇこと言ってねぇでとっとと解放しやがれ!!」

 七番の女が声を荒げている。おちょくっている様に見えたのか今までの怒号のなかでブチ切れている。


「やっば、頭湧いてんじゃん」

 隣の一番の男は鼻で笑っている。


「ハハッ、もしほんとに神様だとしたら随分と馴れ親しいね」

 自分の左隣の八番の男は興味深そうに笑顔を浮かべる。ただその笑顔は裏があるようにも見えた。端的に言って胡散臭いと感じた。


「てか今生き返りゆうた!?」

 先ほどの四番の男は甲高い声を上げる。


「殺し合いですか……ヤですね……」

 六番の弱気そうな女性は消え入りそうな声で呟く。なんとなくまと外れな感想なきがする。確かにヤですね殺し合い……。


「やばやばじゃん!ウチよりアホな奴見たの久しぶりかも!」

 二番の女は何故か興奮している様でゆびを刺して笑っていた。


「んーあ、んーあ、んーあ」 

 三番は女の子は円卓の上に顎をのせて口を開いたり閉じたりしている。…………・暇の極みなのか?つい和んでしまった。


「…………あれ?」

 五番目の男は何か考え事をしているようで鼻頭を押さえる動作をする。五番にとってそれは肩すかしを食らったかのような感覚のようで訝しんだ顔をしている。何かを押さえたかったのだろうか。


 自称神様は、それぞれの反応が自分の思い描いた通りでは無かったのか、しかし多少立ち直りったようで立ち上がる。がその表情はしょぼくれたており自称神様は話し出す。


「んーなんか違うんですけどねぇ。七番の方みたいなのを想定してたんですけど。最近の子ってこんな感じなの?無関心主義って奴です?……まぁ反応は上々なので良しとしました。私が。神ですし」


 あーだこーだと文句をぶつくさ文句をひとしきり垂れた後、自称神様は咳払いを1つして仕切り直す。


「……さて順を追って説明いたしましょう。突然のことで困惑いたしましたでしょうし、更に困惑するでしょう──」


自称神様はまるで演者の様に仰々しく両手を広げる。


「──ここは死後の世界です。貴方達は既に死にました。私が死んだ人間の中からランダムにピックアップした人をここにお呼びだていたしました。それが貴方達です」


 ……今なんて言った?


 自分が死んでいる人間だと言ったのか?訳が分からない。事実今生きているし、僕は死んでなんか


「……………………あ」


 だが真っ白だったはずの記憶に、液体を垂らしじわじわと浸食していき鮮明になっていく。



 西日が差し込む夕暮れ時。自身の血だまりの中に溺れている。腹部に鋭い痛みが断続的に訴えかけてくる。止めどなく溢れ出す血とは裏腹に、自分の体の自由がきかなくなってくる。自分の血液がカーペットに座れていく。染み渡り床に付いた頬に液体の冷たさを感じる。もがく腕は目の前の存在に向かって伸びていく。だがそれは直前になって力尽き、やがて動けなくなる。光が徐々に認識できなくなり、誰かの怒号は遠い世界のように感じる。自分の生命が失われていく。その瞬間を。



 白い部屋に先ほどと同じ態勢で座っていた。息を呑み嫌な汗が滲み出る。脳裏にフラッシュバックした生々しいまでの実体験。

 そうだ。今のは紛れもなく自分の記憶。そう断言できる。死の瞬間の記憶のみが脈絡も無く浮かび上がる。

そして理解する。



ああ、僕は既に死人だったのだと。


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