平安鎌倉よもやま話

KAJUN

第1話 名前1

◆ 人の名前


 平安~鎌倉時代の基礎知識、第一回は、人の名前です。



 拙作『ふところ島のご隠居』の主人公、ふところ島景義のフルネームは、


大庭おおばの・ 懐島ふところじまの・ たいらの・ 平太へいた・ 景義かげよし


です。


 長い!(笑)



1、「大庭」「ふところ島」は、『名字』で、居住地や領地の名前です。


 鎌倉一族の本拠地は、鎌倉権五郎が開拓した「大庭御厨みくりや」で、その大庭御厨の西の端に、「ふところ島」が位置します。


(大庭は、現在の神奈川県藤沢市周辺。

 ふところ島は、現在の神奈川県茅ヶ崎市)



2、「平」は、『本姓』と呼ばれるもので、天皇家につながる血脈を示すものです。


 この頃の豪族たちは、婚姻関係によって、皇室の血脈を取り込んで、「平」や「源」の姓を手にいれています。いわゆる「源平藤橘げんぺいとうきつ」というものです。

 この本姓を持っていることによって、ハクがつくのです。(特に田舎では、、、)




3、「平太」は、兄弟順を表す通り名です。


 長男は「太郎」や「○太」、次男は「次郎」や「○次」、と名づけられます。


 平安~鎌倉時代は江戸時代と違って、長男は太郎、次男は次郎、三男は三郎と、ちゃんと生まれ順に名づけられています。


(時代を下るに従って、このルールは崩れていきます。長男なのに、八郎とか)


 北条時政の息子たちは、三郎宗時、小四郎義時のふたりですが、太郎や次郎もいたはずです。治承の頃には、すでに亡くなっていたのでしょう。


 父の時政が「四郎」なので、子の義時は「小四郎」というふうに「小」をつけて、一族の間で区別しているのです。



 父・三郎 ⇒ 子・小三郎 ⇒ 孫・叉三郎またさぶろう


、、、みたいな感じで、通り名が重なった場合は、区別して呼ぶのです。





4、「景義」は、「いみな」です。その人の、本名です。


他人から諱で呼ばれることはあまりなく、たいていは「平太」のほうで呼ばれます。

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