第6話 孤独の氷を溶かした人物

俺とトーマの出会いは本当に偶然なものだった。

何というか成り行きの出会い。

その事は別に気にも留めない感じで居たのだが。

何だか話してみると意気投合した。

その為に今に至っている。


「よし.....宿題が終わった」


そんな感じで呟きながら。

俺は宿題を終える。

それからゆったりとしながら伸びをしてラノベを読む。

すると.....美鈴からメッセージが来た。

そのメッセージはこう書かれている。


(暇かな)


(暇にはなったな。どうしたんだ)


(その。貴方に後押しされた感じで勉強したけど分からない)


(勉強なんてしなくても良いと言いたい所だが偉いな。お前)


(そうだね。勉強した方が良いかなって思った。将来の為に)


(将来か。偉いなますます)


うん。こうやって遊ぶのは良いけど私は私自身で生きていかないといけない日も来ると思うからね、とメッセージ。

俺は見開きながら、考えているんだな。将来を、と思ってしまった。

しっかり考えているんだな、と。

考えながら俺は、地道にやっていけば良いと思う。勉強だけが学校じゃないだろうしな、と答えた。


(そうかな)


(ああ。勉強しなくても死ぬ訳じゃない。人間、生きている日々が勉強だから)


(春樹は凄いね。私には真似出来ない)


(何が凄いか分からないな。当たり前の事を言っているだけだぞ。例えばまあ空間図形とか普通は俺達は使わないだろ。建築家とかなら使うかもだけど。だから多少勉強を抜いても死ぬ訳じゃないから)


(うん。分かった。じゃあ無理はしない感じで勉強する)


そうしてみてくれ、と返事をする。

すると、春樹。貴方は何でそんなに優しいの?、と聞いてくる。

俺は顎に手を添えて考える。


そんなに優しいかな俺。

昔の.....あの人に出会ってから。

優しくしろ、って言われたせいかな。


(俺は優しいんじゃないよ。まともな御宅を並べているだけだからね)


(いや。それは優しさだよ。春樹。貴方は本当に優しい)


(お前が言うならそうかもな。有難うな。美鈴)


(うん。だって私は優しいどころか人に接する事すらキツいから)


(それは個性で良いんじゃないか。大丈夫。お前は十分凄いから)


(春樹。お医者さんになったら?優しいから)


そこまでの頭脳は無いな。

俺は苦笑しながらメッセージを見る。

それから、そんなに頭良くないからな、とメッセージを送る。

すると美鈴が返事を送ってきた。

頭が良くないのは私も同じかもね、と。


(私は頭が悪いどころか何も出来ないから)


(何も出来ない訳じゃないよ。お前は人を笑顔に出来る)


(え?)


(ムードメーカーだよお前は。俺はお前に会って笑顔ばかりだったから。だから自分に自信を持った方が良い。絶対にな)


(春樹。有難うね。涙が出てきた)


泣いている姿が想像出来る。

が俺は当たり前の事を言っているだけだ。

美鈴は本当に愛らしい子だと思う。

将来の婿さんが現れたりしたら安泰だろうな。

考えながら俺は笑みを浮かべる。


(春樹。ゲームにはログインしないの)


(今はちょっと忙しくてな。それからまた忙しくなる)


(そうなんだね。それは仕方が無いかな)


(また後でな。必ずログインするから)


そんな会話をしながら、うん、と返事をしたのを合図に。

俺は取り敢えず挨拶してからスマホを置く。

それから顔を顰める。

中学時代を考えた。


「幸せ.....か」


よく考えたら中学時代は安泰だったよな。

離れた学校に行ったから。

あの人にも出会えて。


俺は高校が決まったのだ。

養護教諭の転勤してしまった黒崎みのり(くろさきみのり)さん。

あの人は元気だろうか。


「俺は今.....幸せなのだろうか。それとも何なのだろうか。.....まあ考えてもしゃーないけど」


すると、お兄ちゃん。お茶が入ったよ、と声がしてきた。

俺は、はいよ、と返事をしながらスマホを持ってから部屋を出る。

それから巫女を見る。

巫女は、元気?、と聞いてきた。

相変わらずの口癖だな。


「死んでないから大丈夫だぞ」


「そうだね。確かにね」


「誰でも元気って聞くよな。お前さん」


「うん。だって元気っていうのはあいさつになるしね」


ニコニコしながら俺を見てくる巫女。

俺はその姿に、そうか、と言いながらリビングにやって来る。

そこに編み物をする感じで道具が置かれていた。


つまりコスプレ衣装を作っている。

俺は、ふむ、と思いながら巫女を見る。

お茶を淹れて目を擦っていた。


「無理はしなさんなよ。巫女」


「うん。楽しいからやっちゃうよね。気を付ける」


「ついついやってしまうよな。楽しから」


「うん。.....あ。そういえばお母さんと良堂さん.....もう直ぐ帰って来るって」


「そうか」


言い忘れていたかも知れないが。

俺達の親は何時も遅い。

夜の残業もある為に、だ。

その為.....大体は20時まで俺達は2人きりだ。

いや変な意味ではないが。


「お兄ちゃん。トーマさんはコスプレの趣味はあるかな」


「.....いや。それは流石に.....無いんじゃないか?どうしたんだいきなり」


「いや。コスプレの衣装を着てほしいなって思ったんだけど.....残念だね」


「あのな。トーマは男だぞ。お前のは女性ものばっかりだろ」


「でも可愛いかも知れないじゃない。男でも」


確かに女子で凄く可愛いけど。

話せないしな。

本格的に何だか複雑だな。

困ったもんだ、と思いながら苦笑していると。


巫女が、それにしても不思議だね。絶対に友人とか作らないって言ったのに。お兄ちゃんを変わらせた人だよね。どんな人なんだろうその人、とクスクスと笑う。

そうだな。

俺の孤独の氷を溶かした人だからなぁ。


「仲良くしたいな」


「.....いつか紹介出来たらするよ。トーマ」


「そうだね。その時を是非待ってるよ」


そして俺達は笑い合いながら椅子に座った。

それから完成に近付いているコスプレ衣装を見る。

今回は某有名アニメのコスみたいだな。

俺はその服を見ながら少しだけ息を吐いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

RPGのパソコンゲームで知り合った男の友人が実は美少女だったんだが(転載中) アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ