第4話 友人として世界を見たい

ユーマこと美鈴はとても良い娘だ。

中身が男じゃ無いのは相当に驚いたが。

今までずっと男の様な口調だったので.....本当に驚きだ。


因みに今まで何故その様な感じだったのかといえばそれは男を寄せ付けない為だったという。

今日も相当な根性を出して来たそうだ。

何だか申し訳無い気持ちだな。

俺は考えながら大濠公園を出てビクビクと背後を付いてくる美鈴を見る。

美鈴。今日はこれぐらいにして帰ろうか、と言うと。


「そうだね。.....ちょ、ちょっと疲れちゃった」


「そうか。じゃあ帰ろうか」


「う、うん。.....ねえ。春樹」


「何?」


「明日も遊んでくれる.....かな」


何かを求める様に上目遣いをする美鈴。

俺はビックリしながら顎に.....手を添える。

そして日曜日には予定が、と思ったが.....でも。

そんな事よりも重要か、と思い。

笑みを浮かべて返事をした。


「大丈夫だ。明日も遊ぼうな」


「あ、有難う!.....す、凄く嬉しい」


「.....」


「どうしたの?春樹」


「.....いや。何でもない。俺も嬉しい」


「そ、そうなんだ。え、えへへ」


本当に可愛いなこの娘。

俺は考えながら.....握手を求める様に手を差し出す。

すると美鈴はその手を握ってきた。

おずおずだが握ってくれて.....幸せだ。

本当に細い手だが.....暖かみがある。


「俺さ」


「何?春樹」


「お前に出会えて良かった」


「.....わ、私も出会えて良かったけど.....そんな事を言われるなんて思わなかった。私の姿に衝撃を受けたらどうしようって思ったから」


「お前の姿に何か言う様なヤツが現れたら殴り飛ばすよ。いや。本気で」


「.....有難う。春樹。そう言ってくれて私は幸せ。とても幸せ」


そういえばお前の家って何処にあるんだ、と聞く。

すると、う。うん。少しだけ家は.....遠い、と答えた。

俺はその言葉に、そうか、と返事をする。

それから、家まで送ってあげるよ、と言う。

見開く美鈴。

そして、で。でも遠い、とオドオドしながら言ってくる。


「.....大丈夫。友人がちゃんと帰れるのか.....少しだけ不安だしな」


「そ、それって私が子供.....」


「え!?違うよ?ゴメン。そう言う意味に捉えたか。俺な。お前さんの体調も考慮したんだ」


「.....そこまで心配してくれるの」


「当たり前だ。君は俺の大親友なんだから。な?トーマ」


そんな美鈴は。

俺の言葉にウルウルと涙を浮かべて。

そして大粒の真珠の様な涙を流し始めた。


何て幸せなんだろう私、と言いながら。

俺は慌てながらハンカチを渡す。

そのハンカチをまた少しだけ控えめに受け取りながら拭う。


「そんな簡単に泣かないでくれ。俺もちょっとビックリするし」


「でも嬉しいから。.....友人が.....こんな.....嬉しい」


「そ、そうか」


「私はこんなに幸せになるつもりで此処に来たわけじゃない。だけど今日は本気で楽しい」


「.....ああ。俺も楽しいよ」


すると涙を完全に拭いてから。

此処から3キロあるけど.....大丈夫、と聞いてくる。

俺は見開きつつ目を丸くする。

でも全く苦痛じゃないな。


「全然大丈夫。送ろう」


「うん。じゃ、じゃあ歩きながら攻略の話を.....」


「そうだな。それを話題にして帰ろうな」


「う、うん!」


満面の笑顔を浮かべながら。

フードを被り直す美鈴。

俺はその姿を確認しながら笑みを浮かべつつ。

そして手を差し出した。

その事に?を浮かべる美鈴。


「手でも繋ぐか?」


「ふえ?.....あ。い、いや!?そ、それは.....いい.....かも」


ボッと赤面しながら目を回す美鈴。

そこで気付いた。

流石にやり過ぎか、と。


俺は手を見つつ。

その手を直ぐに引っ込めた。

恥ずかしいな俺。

馬鹿野郎か、と思いながら。


「ご、ゴメン」


「い、や.....でも嬉しい!凄く!で、でも今は無理ぃ.....」


「ゴメン。本当に調子に乗り過ぎた。謝るよ」


「う、うん」


すると美鈴は俺の袖を摘んできた。

それから、これでも良い?、とチョコンと顔を上げる感じで見てくる。

俺は余りの可愛さにボッと赤面した。

落ち着け.....友人だぞ。

仮にも友人なんだ。


「そ、それで良いよ。じゃあ行こうか.....」


「う、うん.....有難う」


それから俺達は歩き出す。

取り敢えず電車とかタクシーとかバスとか。

そんなの使わないルートで歩きながら帰宅して行く。

その途中で美鈴が、春樹、と顔を上げてきた。

俺は、何だ?、と聞くと。


「有難う。今日は本当に有難う。何時だって君は私を助けるね。だから.....親友として大好き」


「.....俺も君が親友として何時までも仲良くしたいって思ってる。.....だから仲良くしてくれ。こんな俺で良かったらな」


「こんな俺だなんて。.....ハークらしくない」


「何時だって俺はこんな感じさ。でも君とは友達で居たいから。だから仲良くしてくれ」


「大丈夫。それはこんな私って言えるから。.....うん。仲良くして」


笑みを浮かべながら俺の袖を握ってくる。

俺はその姿を見ながら考える。

先ずは一歩一歩だな。


そう思いながら。

俺達は今。

この混沌とした世界を歩き出したばかりだから。

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